スモン病とはどんな病気?治療で受けられる医療制度って?

2017/11/6 記事改定日: 2020/5/1
記事改定回数:2回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

スモン病とは、亜急性脊髄視神経症とも呼ばれる病気であり、しびれや麻痺、ひどくなると失明などの症状が現れることもあります。この病気の原因と治療、予防方法はわかっているのでしょうか?この記事ではスモン病の基礎知識について解説しています。

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スモン病の原因とは?

スモン病は、亜急性脊髄視神経症とも呼ばれ、キノホルム剤の過剰摂取が原因となって引き起こされる重度の神経変性障害です。

戦前は、キノホルム剤の用途が外用消毒とアメーバ赤痢治療に限られていたため生産量も少なかったといわれています。しかし、戦後の日本では「整腸剤」として使用されることになり、通常の下痢などの消化器症状まで適応が拡大されてきました。

それに伴い、1日においての投与量や投与期間についても制限がゆるめられ、キノホルム剤の国内生産量や輸入量は年々増加していき、それに伴ってスモン病の患者数も増えていくようになりました。
1970年代になって、スモン病の発症にキノホルム剤が関係していることが指摘されると販売中止になり、その結果、スモン病患者の数も激減して今日に至っています。

海外ではまだキノホルム剤が使用されている?

キノホルム剤がスモン病の発症に関与していることが指摘されたことから、日本では1970年に内服薬としての販売、使用が禁じられています。

しかし、海外では未だにキノホルム剤を整腸剤などとして使用している国もあります。海外旅行で突然お腹の調子が悪くなった時などは、安易に市販薬を購入せず、日本人でも受診できる病院を利用するようにしましょう。

また、近年では海外製の安い薬が通販で手軽に購入できるようになりました。個人での輸入は自己責任となりますが、整腸剤と謳われたキノホルム剤が含まれている可能性もありますので、安易な利用には注意してください。

スモン病になると、どんな症状が現われるの?

スモン病の初期段階では、腹痛や下痢などが現れます。さらに長期間キノホルム剤を服用を続けると、両足に自覚的なしびれを訴えるようになり、さらに進行すると下肢の脱力、起立時や歩行時の不安定などの症状が見られるようになります。

こうした異常なしびれや麻痺などについては、足裏から次第に上に向って広がっていくことが特徴であり、歩行障害だけでなく視力障害を引き起こして失明に至るケースもあります。

また、合併症として内臓障害や膀胱直腸障害、性機能障害などを引き起こします。体への影響は全身に及び、やがて日常生活に必要な機能が著しく低下していきます。

その他、意識障害やけいれん、舌が緑色になるなどの症状が現れることもあります。
加齢に伴って免疫力が低下するため、高齢者では骨粗鬆症や大腸がんなどの合併症のリスクが高まり、最悪のケースでは死に至ることもあります。低確率ではありますが、認知症の発症との関連も指摘されていて、研究対象にもなっています。

スモン病は治療できるの?

スモン病は現在根本的な治療法がありません。
対症療法として、ビタミンB12やB1の大量投与や副腎皮質ステロイドなどの投与が行われます。ただ、これらの治療法の有効性も疑問視されています。ほかには、リハビリテーション療法も行われることも多いですが、こちらも効果はきわめて不十分なものと考える専門家も多いようです。

この病気にかからないようにするには、怪しい医薬品に絶対に手を出さないことが大切です。製造中止になっていますので、通常の方法ではキノホルム剤を入手することは難しくなっていますが、個人輸入した薬剤に紛れる可能性はゼロではありません。薬の個人輸入はおすすめしませんが、もし輸入することになった場合は、細心の注意を払うようにしてください。

スモン病の治療ではどんな制度が利用できるの?

スモン病は、厚生労働省により「特定疾患(難病)」に指定されている病気です。さらに特定疾患治療研究事業の対象疾患となるため、治療費は全額公費から負担を受けることができます。さらに、月7回を上限としてマッサージやはり、きゅうなどの施術費やリハビリにかかる費用の補助も受けられます。

平成26年時点では全国で1400名あまりの方が公費負担を受けているとされています。公費負担を受けるには、医師の診断書など必要な書類をそろえてお住いの保健所に申請する必要があり、毎年更新しなければなりません。手続きは煩雑になりますので、かかりつけ医療機関のソーシャルワーカーや医師に相談して進めていくようにしましょう。

おわりに:キノホルム剤は日本で使われていないので、新たにスモン病になる心配はない。しかし、海外での薬の服用や個人輸入の際は注意が必要

スモン病は手や足のしびれなどが起こり、症状が進行すると歩行障害や失明などの恐れもある恐ろしい病気です。有効な治療法もないため完治は難しいですが、原因となる薬剤「キノホルム剤」は日本で使用されていないため新たに発症する心配はないでしょう。

ただし、海外で薬を服用するときや薬を個人輸入するときには、十分に注意するようにしましょう。

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