記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/11/6 記事改定日: 2018/4/11
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
乳幼児がかかることが多いロタウイルス感染症は、ウイルスの感染力の強さから日本でも例年流行し、世界中でほぼすべての子供が5歳までにかかるといわれています。白い下痢が出ることが特徴ですが、下痢が出る感染症は他にもあります。
ここでは、ロタウイルス感染症の症状と対処法について解説していくので、下痢になったときにどう対処していけばいいか参考にしてください。
ロタウイルス感染症は急性の感染性胃腸炎であり、その原因となるのがロタウイルスです。感染者の多くは、生後6ヶ月から2歳までをピークとする0~6歳頃の乳幼児で、5歳までにはほぼすべての子供が感染するといわれています。
ロタウイルス感染症は2日間の潜伏期間の後に発症し、最初に見られる症状が発熱と嘔吐です。乳幼児が感染した場合は、39℃以上の発熱が見られる場合もあります。白い水様便の下痢が特徴で、1日の間に頻繁に下痢をするため脱水症状に注意しなければなりません。
発症から1~2日後には腹痛や下痢が現れて1~2週間ほど続きますが、大半は自然に治癒します。
ロタウイルスは、水のような大量の下痢便が出るのが特徴です。発症時は通常の下痢であることが多いですが、次第に便が白っぽくなり、米のとぎ汁様便とも形容されます。
これは、ロタウイルスに感染すると、胆汁の分泌が減り、排出されるビリルビンの量が減少するため、便の着色が薄くなることが原因です。
ロタウイルスの症状の現れ方は人によって大きく異なります。39度以上の高熱を出して、下痢や嘔吐を頻回に繰り返す場合もあれば、症状は下痢のみで発熱がないこともあります。
特に発熱は感染症を疑う重要な指標をなりますが、ロタウイルスに感染して39度以上の発熱が見られる子供は1/3といわれています。
また、ロタウイルスは繰り返し感染し、感染の回数を重ねるごとに症状が軽くなります。このため、初めてロタウイルスに感染する乳幼児では発熱が多いのに対し、感染を重ねて年長児は発熱がなく、比較的軽度な症状のみの場合が多いです。
しかし、ロタウイルスはまれに重症化すると脳炎を起こすことがあります。ロタウイルスによる脳炎は治療が難しいけいれんが起きやすく、救命できても半数は後遺症を残すといわれています。発熱がなくても、白い下痢が長く続く場合には注意して経過観察を行う必要があります。
初めてロタウイルスに感染したときに強い症状が現れるため、大人になって感染すると症状が出ないか、軽度の症状で済むことがほとんどです。子供の症状と同じように嘔吐や白い下痢、腹痛や37℃前半の発熱がある場合もあるため、子供からの二次感染には十分注意しましょう。
下痢や嘔吐などの症状を引き起こす感染性胃腸炎の原因となるウイルスや細菌は様々なものがありますが、白い下痢を呈するものはロタウイルスだけでなく、アデノウイルス感染症も挙げられます。アデノウイルス感染症は年間を通して流行し、季節性がないのが特徴です。また、のどの痛みや目の充血を伴うことがあります。
症状は一般的に軽度なことが多く、主症状は下痢です。通常は水のような下痢ですが、まれにロタウイルスのような白い下痢が出ることもあります。
感染性胃腸炎の原因ウイルスとして、ロタウイルスと同じくらい有名なのはノロウイルスとです。ノロウイルスは冬から春にかけて流行し、流行時期がロタウイルスと同じため、しばしば間違われることもあります。
しかし、ノロウイルスは一般的に嘔吐症状が強く、下痢は軽度なことが多いです。また、下痢を繰り返しても白い下痢が出ることはありません。熱は出ることもありますが、38度前後にとどまり、通常は1~2日で解熱します。
ロタウイルスとノロウイルスは同時期に起こる感染性胃腸炎ですが、このように主体となる症状が異なるのです。
ロタウイルスの感染力は大変強いことで知られ、容易に拡大するため日本でも例年3~5月の時期にかけてロタウイルス感染症が流行します。先進国において症状が重症化した場合は、入院により適切な処置がとられるため死亡に至る例はごくわずかです。しかし、発展途上国では重症化による死亡例もあり、世界でロタウイルス感染症を原因にした5歳未満の死亡例も多く報告されています。
主な感染経路とされているのが、感染者の便に多く含まれるロタウイルスが他の人の口から体内に入る糞口感染や、ウイルスで汚染された水や食べ物を摂取したことによる経口感染です。また、ロタウイルスにより汚染された家具や手すりに触れた手から感染することも少なくありません。
ロタウイルスは感染者の便中に多く含まれているため、子供が感染した場合はオムツや便の処理の仕方に注意しなければなりません。オムツ交換はその都度、使い捨てのビニール手袋をつけて行ないましょう。嘔吐物を処理する際も、使い捨てのビニールエプロンをつけることで衣服が汚れるのを防ぐことができます。
便や嘔吐物が衣類について汚れた場合は、次亜塩素酸ナトリウムにつけおきして消毒し、他の衣類とは別に洗濯しましょう。家庭にある塩素系漂白剤でも消毒可能ですが、アルコール消毒はロタウイルスに効果がありません。家具やドアノブなどにウイルスが付着し、汚染されている可能性もあるので、便や嘔吐物の処理後はもちろん、食事や調理の前にも十分に手を洗いましょう。
ロタウイルスには予防接種があります。
現在、日本で行われているロタウイルス予防接種には、ロタリックス®とロタテック®という二種類のワクチンがあります。ロタウイルスには様々な型があり、最も頻度の高い一つの型のみのワクチンがロタリックス®で、5つの型のワクチンを配合したのがロタテック®です。
ロタリックス®は二回の接種が必要であり、一回目は生後6週から20週までに接種し、二回目は四週間後以降に行います。また、ロタテック®は三回接種の必要があり、生後6週から32週の間に4週間以上の間を開けて接種します。どちらのワクチンも接種には期限があり、一日でも過ぎると接種することはできなくなります。予防接種のスケジュールは厳密に管理しましょう。
また、ロタウイルスは生ワクチンのため、接種すると他のワクチンを4週間打つことができなくなります。生後2か月以降は肺炎球菌など多くのワクチン接種が始まりますので、同時接種の必要があるでしょう。
ロタウイルスワクチンは任意接種ですが、乳幼児の重症な胃腸炎で最も多いのはロタウイルスであり、約10%は重症化するといわれています。また、脳炎などの恐ろしい合併症を起こすこともあり、注意が必要な病気です。
費用はかかりますが、予防接種をすれば重症化を大幅に防ぐことができます。赤ちゃんをロタウイルスから守るために、積極的な接種をおすすめします。
※ロタウイルスワクチンは、2020年10月1日から定期接種となります。
▼ 厚生労働省 ロタウイルスワクチンQ&A(2020年8月出生の方についての注意事項)
ロタウイルス感染症に感染した場合、抗ウイルス薬はないため対症療法が主な治療法になります。下痢が頻繁に出ますが、下痢をすることでウイルスが排出されるため、下痢止め薬の服用はかえって回復が遅らせてしまうので避けてください。
下痢に対する対処法としては、脱水症状を予防するため、ぬるま湯やイオン水などで水分補給を行ないましょう。その際、嘔吐をしないように回数を分けて少量ずつ摂るようにしてください。嘔吐がひどくて水分を口から摂れない場合は、医療機関での点滴が必要です。脱水症状が進行すると合併症を引き起こす可能性もあるため、嘔吐と下痢がいずれもひどい場合は早めに受診しましょう。
ロタウイルス感染症は、最初の感染時に強い症状が出ます。下痢は通常1週間ほどで落ち着きますが、嘔吐と下痢の症状がある場合は脱水症状を予防するためにも早めに医師の診察を受け、適切な治療を行ないましょう。