脱肛とは、どんな状態になること?どうやったら防げる?

2017/11/20 記事改定日: 2020/1/21
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

脱肛とは、肛門の粘膜や内痔核が外側に出てくることです。軽いものは自然にもとにもどりますが、悪化すると戻らなくなり痛みや出血などが現れるようになります。この記事では、脱肛の症状や原因、予防法などの基礎知識を紹介しています。
お尻の悩みを抱えている人は参考にしてください。

脱肛ってどんな病気?

「脱肛」とは、本来は肛門の内側にあるはずの粘膜が外側に出てしまうことです。
粘膜だけでなく、肛門内部にある「内痔核」が悪化し、外に出てきてしまう場合も脱肛といいます。また、粘膜が外に出る状態を「肛門粘膜脱」、内痔核が外に出る状態を「痔核脱出」と呼び分けることもあります。

男性が発症することが多い病気ではあるものの、妊娠・出産を経験した女性が発症することも珍しくありません。

排便のときに粘膜や内痔核が脱出することが多いので頻繁に起こりますが、症状が軽いものであれば自然に戻ったり指で押し戻せます。
ただし、悪化すると自力では戻せなくなり、激痛を生じるようになるため、状態によっては手術が必要になります。

脱肛してしまう原因とは?

脱肛は次のような生活習慣の乱れなどが原因で引き起こされるケースが多いです。思い当たる生活習慣がある方は脱肛の発症・悪化予防のため生活改善を心がけましょう。

  • 便秘
  • 水分不足などによる便の硬さ
  • 長時間の中腰作業
  • 運動不足(肛門周りの筋力低下)
  • 肛門周囲の冷えなどによる血行不良

とくに脱肛は年齢を重ねるごとに発症しやすくなりますので、適度な運動習慣を身に付けるようにしましょう。

脱肛になると、どんな症状が出てくる?

脱肛しても、初めのうちは自分で押し戻すことができますが、進行するとすぐに脱出、常に脱出しているようになり、自分では戻すことができません。肛門内の粘膜や内痔核が脱出している状態が続くと、以下のような症状が現れます。

出血
粘膜や痔核が下着と擦れることで傷つき、炎症や出血が起こる
痛み
擦れなどによる炎症により痛みが出る
分泌液の増加
脱出した粘膜から粘液が分泌され、常に肛門の周りが湿っている状態になり、下着が汚れるようになる
肛門湿疹
粘液の増加による刺激で皮膚炎を起こし、湿疹やただれができる

また、脱出した痔核を戻せなくなる状態を「嵌頓(かんとん)状態」といい、激痛や壊死、発熱といった症状が現れることがあります。

脱肛はどうやって治療するの?

指で押し戻せるような軽度の脱肛の治療においては、内服薬や軟膏などを用いた保存的療法が中心です。
痛みや炎症が見られるのであれば、鎮痛剤や抗炎症剤なども投与されます。

自分では戻せなくなってしまったり、排便や歩行などの日常生活に支障をきたしたりする場合には、以下のような方法で手術が行われます。

  • ゴム輪結さつ法
  • 痔核結さつ切除術
  • ALTA(ジオン)硬化療法

脱肛は予防できる?

脱肛を予防するには、具体的に次のようなことに注意しましょう。

便秘を改善する

便秘は脱肛を引き起こす最も大きな要因と言っても過言ではありません。便秘気味の方は乳製品や食物繊維など腸内環境を整えるような食品を多く摂ることを心がけましょう。また、起床時にコップ一杯分の水分を摂取するのもおススメです。

排便時にいきみ過ぎない

できるだけ自然な腹筋の力のみで排便できるようにするのも脱肛を防ぐポイントです。そのためには便を柔らかくするため、適度な水分補給を心がけましょう。また、すでに脱肛になっている方や脱肛になったことがある方は便を柔らかくするタイプの下剤を利用するのも一つの方法です。

肛門に負担がかかる体勢を避ける

しゃがんだ姿勢などは肛門に負担をかけて脱肛を引き起こすことがあります。肛門に負担がかかる体勢はできるだけ少なくするようにしましょう。

肛門周囲の血行を改善する

肛門周囲の血行が悪化すると痔核ができやすくなり、脱肛につながるため冬場などは便座ヒーターを使用したり、普段から下半身が冷えにくい服装をするなどの対策が必要です。

おわりに:脱肛は悪化する前に医師と相談し、治療・予防に励もう

脱肛も軽いものであれば自然に戻ったり指で戻せたりしますが、悪化すると戻らなくなり激しい痛みや出血などが現れるようになります。
悪化防止や予防のためのセルフケアも大切ですが、状態によっては手術が必要な場合もあるので、医師と相談しながら自分にあったケアをするようにしましょう。

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