記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/1 記事改定日: 2020/9/21
記事改定回数:2回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
長引く痰や咳などに悩まされる「気管支拡張症」。再感染のリスクもあるため治療が重要ですが、どのような治療があるのでしょう。この記事では、気管支拡張症の治療の目的と使われる薬の種類について詳しく解説していきます。
気管支拡張症とは、気管支がなんらかの感染症にかかったことで炎症が起き、円柱状に膨らんでしまったり、袋状に膨らんでしまったりする疾患です。
気管支拡張症が軽度のうちは、自覚症状が少なくなかなか自分では気づけません。しかし進行すると、咳が出たり痰がからむようになり、それらの症状が長引くようになります。
気管支拡張症を一度発症すると、その部分に細菌やカビが増殖しやすくなり、再感染を起こしやすくなってしまいます。そうして気管支の感染症を繰り返すうちに、気管支がどんどん拡張し、再び感染を繰り返しやすくなる悪循環に陥りやすくなります。
本来気管支には、繊毛運動といって身体に入ってきた異物や気管支から分泌された痰を、口の方へ運んで排出する働きが備わっていますが、気管支拡張症になるとこの機能が弱まり、異物や痰を排出する力が低下します。そのことで気管支の自浄作用が低くなり、膿のような痰が出たりなど痰の量が増えます。
多い時には1日で100ml以上の痰が出ることがあります。また気管支拡張症の炎症部分では血管が増殖するので、血痰や喀血、発熱が起こりやすくなります。
気管支拡張症は一度なってしまうと、拡張した部位を元に戻すことは難しくなります。そのため気管支拡張症の治療は、症状を緩和するための対症療法が中心になります。
痰の量が増えて排出が困難な時には痰が出やすくなる薬を使ったり、ネブライザーを用いて痰が出しやすくなるよう促します。その他にも身体の向きを変えることで気管支の奥に残っている痰を出しやすくする方法が行われます。
感染があり炎症が起こっているときには抗生物質を用いて炎症を抑えます。また、喀血をしていて止血が難しい場合は止血剤を服用したり、内視鏡的止血法が行われることもあります。場合によっては気管支動脈塞栓術や外科的切除術が行われることもあります。
気管支拡張症は、症状の軽快や悪化を繰り返すのが特徴です。このため、症状の程度によって必要な治療薬が異なりますが、基本的には以下のような薬が使用されています。
気管支拡張症では、症状がある程度落ち着いている場合、とくに細菌感染の傾向がなくても症状の更なる軽減や炎症を抑えるため、マクロライド系抗生物質の長期投与が行われることがあります。
一方、風邪などによって症状が悪化し、細菌感染が疑われる場合には痰の細菌培養検査などを行ってそれぞれに適した抗生物質の集中的な投与が行われます。
気管支拡張症は症状が安定している場合でも痰の排出量が多く、喉にからまって不快な症状を引き起こすことがあります。このため、症状の程度によらず、去痰剤の内服を続けるのが一般的です。
去痰剤と同じく、症状が安定している場合でも、痰の排出を促すために気管を広げる作用のあるβ2刺激薬の吸入療法を続けるのが一般的です。
気管支拡張症は、症状が悪化すると気管支内で出血を引き起こし、血痰や喀血の原因となることがあります。このため、血痰や喀血が見られる場合は止血剤の投与が行われることがあります。
気管支拡張症の症状は、ほとんどが風邪などの感染症で起こる症状と類似しています。そのため症状だけを診て気管支拡張症だと判断することは難しく、気管支の状態を目視できる検査を行ってから診断を下すことになります。
検査は、胸部X線検査やCT検査を行います。
例えば、胸部X線検査では気管支の形が見えるので拡張している部位があるかどうかがわかります。そのため、健康診断で胸部X線検査を受けたことがきっかけで、気管支拡張症が判明することもあるでしょう。
また、胸部のCT検査でも気管支の状態を見ることができます。身体の断面図を見ることができるので、どこの部位の気管支が拡張しているか、どのような形で拡張しているかまでわかることもあります。そのため、無症状の気管支拡張症を発見することもできるようになってきています。
気管支拡張症は、気管支炎や肺炎など気道への感染症が発症・再発の原因になりやすいと考えられています。そのため、予防には日ごろから手洗いやマスク着用などの基本的な感染対策を行うことが大切です。また、咳やのどの痛み、発熱などの症状があるときは悪化する前に医療機関で適切な治療を受けましょう。
治療後も再発を予防するために上記のことに注意し、加齢による筋力の衰えなどによって痰が出しにくい・飲み込みが悪いといった症状がある人は適切な呼吸リハビリなどを行うようにしてください。
気管支拡張症で拡張してしまった部分をもとの状態に戻すことは難しいです。そのため、治療は対症療法で症状を緩和していくことが目的となります。そして、放置するとますます拡張が悪化し、感染を起こしやすくなってしまいます。
症状が風邪とよく似ており、見過ごされがちなので、「気になっている」という程度でも念のため早め検査を受けておきましょう。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。