記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/4
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
急激に腎臓の機能が低下し、さまざまな症状を引き起こす「急性腎不全」。今回の記事ではこの急性腎不全について、具体的な症状や原因、治療法などを解説していきます。
腎臓の機能が正常に働かなくなる状態を、腎不全と呼びます。この腎不全の中で、腎臓の機能が1日から数週間といった短い期間で悪化するものが急性腎不全です。これに対し、症状が時間をかけてゆっくり進行するものを慢性腎不全といいます。
急性腎不全は原因によって3つに分類されます。まず、腎臓そのものが原因で起こる腎不全を腎性急性腎不全といいます。腎性急性腎不全は、腎臓に腫瘍ができている場合や、薬物などその他の代謝産物が原因で起こります。
次に、全身の血流量が減少した時など、腎臓に流れる前の血流トラブルが原因で起こる腎不全を、腎前性急性腎不全と呼びます。
そしてもうひとつ、腎臓で尿が作られて体外へ排出されるまでの過程に原因がある腎不全を腎後性急性腎不全といいます。腎後性急性腎不全は、尿管や膀胱、尿道が閉塞した時に起こります。
腎臓には全身を巡った血液がたくさん集まってきます。腎臓の皮質には、腎臓の濾過機能をつかさどる毛細血管の集合体・「糸球体」があるのですが、この糸球体によって血液が濾過されることで、人間は必要な栄養分を体内に残し、不必要な老廃物を体外へ排出することができています。
しかし、腎臓に流れ込む血液が少なくなると、尿をつくる十分な水分が腎臓に入ってこなくなります。すると尿量が減少し、また腎臓の細胞への血流も悪くなることで腎臓の細胞が破壊されるようになります。その結果、腎臓の機能が正常に働かなくなることで起こるのが急性腎不全です。なお、尿が通常通りに排出されない時も腎臓の血流が阻害されるので、通常のように腎臓を働かせることができなくなり、急性腎不全を引き起こすことがあります。
急性腎不全の最も代表的な症状は、尿量の減少です。腎臓の血流が悪くなることで尿量が著しく減少します。尿の出口が塞がれてしまうような原因の時には、全く尿がでないこともあります。また、尿の排出が行われないことで膀胱が充満し、下腹部が腫れ、血尿が出ることもあります。そして老廃物が蓄積してくると、疲労感や食欲不振、吐き気、皮膚のかゆみなどの症状があらわれるようになります。
急激に病状が進行した時には重篤な症状が起こることもあり、胸痛やけいれん発作、筋肉のひきつり、肺に体液が溜まることでの息苦しさなどもあります。そのほか、電解質のバランスの乱れで不整脈が起こることもあるので注意が必要です。
先述のとおり、急性腎不全には3つの種類がありますが、その種類ごとに治療法も異なってきます。
まず腎前性急性腎不全の場合には、血流量を増加させることが重要なので、全身の輸液を行ったり、出血がある場合には輸血を行ったりします。また昇圧剤を使用して、血圧を上げて血流を良くします。
腎性急性腎不全の場合には、腎臓に影響を与えている原因そのものの治療を行います。腎臓に炎症が起こっている時には抗菌薬や消炎剤の投与を行い、炎症を鎮めます。
そして腎後性急性腎不全の場合には、尿の排出を防いでいるものを取り除きます。また電解質の乱れが大きい時など、急いで腎機能を補う必要がある時には、透析を行うこともあります。
急性腎不全には3つのタイプがあり、それぞれで発症原因や治療法は異なります。過度な尿量の減少や血尿など気になる症状がみられたら、早めに病院で検査を受けるところから始めましょう。