記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
スマートフォンが普及した現代。時間が空くと、ついついスマートフォンを触ってしまうという方はとても多いはずです。しかし、スマートフォンの長時間使用に伴い、「バネ指」の発症率が上がっていることが今問題になりつつあります。以降で詳しく解説していきます。
指を曲げたり伸ばしたりする時には指にある腱が使われており、私たちはこの腱が正常に動くことで指の曲げ伸ばしをスムーズに行うことができます。この腱を酷使した時に起こるのが腱鞘炎です。腱鞘炎になると指を動かす時に痛みを感じるようになります。さらに悪化すると、指を伸ばす時にスムーズに伸ばせず、引っ掛かる感じが出てきます。ひっかかった後にはバネのように指が伸びることから、この症状が起こる病気をバネ指といいます。
バネ指になると指の曲げ伸ばしをする際に引っ掛かりがでることで、いつもと同じように指を使えなくなってしまいます。症状が悪化してくると、指の曲げ伸ばしの時にゴリッという音がして、強い痛みを伴います。指をよく使う人がなりやすい病気です。
バネ指の原因の最も大きなものは指の使いすぎです。指を動かす時に使われる腱が酷使されることで、異常をきたし正常な働きができなくなります。仕事などで普通以上に指を使い過ぎている人がよく発症します。それ以外には妊娠中や産後、更年期の女性など、ホルモンバランスが乱れている時に発症しやすくなります。持病として関節リウマチや結核、細菌感染、糖尿病がある時にも発症しやすくなります。
ただし、最近では長時間のスマートフォンの操作が原因でバネ指を発症する人が増えています。特にスマートフォンを一日中使っている人の場合、指の疲労はかなりのものになるので、バネ指を発症しやすい状態といえます。
指を曲げたり伸ばしたりする時には、指の屈筋腱という腱の周囲にある滑膜性腱鞘(かつまくせいけんしょう)が、靭帯性腱鞘(じんたいせいけんしょう)というトンネルの中を通り、腱が伸びたり縮んだりすることで指の曲げ伸ばしが行われます。しかし指を酷使していると、何度もこのトンネルの中を屈筋腱が通ることで摩擦が強くなり、滑膜性腱鞘に炎症が起こります。すると炎症によって腫れた滑膜性腱鞘がトンネルの中を上手く通れなくなり、指の曲げ伸ばしに引っ掛かりが出てきます。こうしたメカニズムでバネ指の症状が起こります。
バネ指を治すためには、患部の安静を保つことが重要です。炎症が起こっている部位を安静に保つことで、炎症が鎮まるのを待ちます。スマートフォンの使い過ぎによってバネ指になっている場合は、とにかくスマートフォンを使う時間を短くすることが大切です。他にも原因となっていることがあれば、その行為を行わないことで指の安静を保ちます。
ただし、炎症が強い時には抗炎症薬を使用します。他に温めたりレーザー治療をして痛みを抑えたり、どうしても症状が強い時にはステロイド剤を腱鞘内に注射します。それでも症状が改善しない時には、手術が検討されます。手術方法には、主に腱鞘切開手術と内視鏡手術の2種類があります。
スマートフォンの使いすぎは腱鞘炎を招き、さらにはバネ指の発症につながることがあります。痛みや炎症が深刻な場合は手術が必要になってしまうこともあるので、発症を防ぐために、日頃からスマートフォンの長時間使用を控えるよう心がけましょう。