記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
お尻から出血は何らかの病気のサインとして現れます。痛みがあるものもあれば痛みがないものもありますが、どのような病気が原因となるのでしょうか。この記事では、お尻からの出血を引き起こす病気についてまとめています。
痛みを伴わない出血がみられる病気として、内痔核が挙げられます
内痔核とはいぼ痔(痔核)の一種です。
いぼ痔(痔核)は、肛門にいぼ状の腫れができている状態で、主に排便時のいきみや便秘などにより、肛門に負荷がかかることが原因となって起こります。歯状線(直腸と肛門上皮の境界)より内側(直腸側)にできるいぼ痔(痔核)を「内痔核」、外側(肛門上皮側)にできるものを「外痔核」と呼びます。
内痔核ができる直腸下部の粘膜周辺には知覚神経が通っていないため、痛みを感じることは少なく、排便時の出血で初めて痔に気付くケースも多いとされます。症状が進むと肛門から内痔核が出てきて、炎症等による痛みを感じたりすることがあります。なお鮮血か赤黒いなどの「血の色」だけでは、病名までは判断できません。
一方、外痔核が生じる肛門上皮には知覚神経が通っているため、激しい痛みを感じますが出血することはあまりありません。
痛みを伴う出血の場合、可能性が高い病気として切れ痔が挙げられます。切れ痔は、排便時の勢いで肛門の出口付近の皮膚(肛門上皮)が切れた状態です。上記でも説明したように肛門上皮には知覚神経が通っているため、切れ痔には強い痛みが伴います。便秘がちな女性に多くみられるのが特徴です。
切れ痔が慢性化し、排便時に強い痛みを生じるようになると、排便を我慢する傾向が強まり便秘になる結果、次の排便時にまた肛門を傷つけさらに強い痛みにつながります。このような悪循環を切れ痔の悪化サイクルと呼びます。
大腸癌は、血便や下血、下痢と便秘のくりかえしなどが主な症状です。
大腸癌の検査の中に便潜血検査があります。これは、便の中に血液が混じっているか調べる検査で、手軽に行うことができ、目視では確認できないような微量の血液も検出できる検査です。大腸癌は死亡率が高く、早期発見が大切な病気であるため、検診を受けることが何よりの予防となります。血便や下血が出たときに検査を受けることはもちろんですが、定期的に検査を受けることも早期発見につながります。
直腸炎は直腸が炎症を起こす病気で、原因は様々ですが、細菌やウイルスなどによる感染症や、クローン病や潰瘍性大腸炎など他の消化器疾患が原因となる場合もあります。痛みを伴わない出血や下部腹痛を主な症状とします。
大腸ポリープは、結腸壁や直腸壁の組織が増殖し、腸の中でいぼ状に飛び出したものです。悪性のものは、癌になる可能性があるため、5mm以上のものであれば大腸内視鏡を用いて切除することが一般的です。ほとんどの大腸ポリープについて、特に症状はみられませんが、直腸からの出血があることもあります。
お尻からの出血が分かった場合は、その症状を軽く見ないようにしましょう。単なる痔にとどまらず、大腸癌、大腸ポリープ、直直腸炎など重篤な疾患の症状が現れている可能性もあります。安易に自己判断をせずに、医師の診断を仰ぐことが重要です。