副甲状腺機能亢進症には、どんな手術療法がある?

2017/12/21 記事改定日: 2019/6/10
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

副甲状腺機能亢進症に対して手術治療が行われることがありますが、いったいどんな手術が実施されるのでしょうか?
種類別に詳しく解説していきます。

副甲状腺機能亢進症で手術療法を行うのはどんなとき?

副甲状腺機能亢進症は、血液中のカルシウムの濃度を維持する働きを担う副甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるようになり、高カルシウム血症や低リン血症を発症する病気です。

「原発性」と「二次性(続発性)」の2種類があり、発症原因の違いで症状のあらわれ方も違ってきます。

副甲状腺機能亢進症で手術による治療が必要かどうかは、骨量検査や腹部の超音波検査、X線検査や腎機能検査、尿中カルシウム排泄などで合併症の有無を調べてから判断します。

甲状腺手術後に起こる可能性のある副甲状腺機能低下症については、低カルシウム血症や高リン血症に対して投薬治療が行われます。

手術の条件

副甲状腺機能亢進症では、骨に蓄えられたカルシウムが血中に溶け出すことで高カルシウム血症が引き起こされます。
軽症な場合には骨からのカルシウムの溶解を防ぐ薬によって治療が行われることもありますが、血清カルシウム濃度が12mg/dL以上の場合、クレアチニンクリアランスが60ml/min未満の場合、骨折が生じるような重度な骨粗しょう症発症している場合に手術が検討されます。

また、これらの基準に当てはまらない場合でも、副甲状腺がんによる機能亢進症が疑われる場合に出できるだけ早く手術を行って副甲状腺を摘出する必要があります。

原発性副甲状腺機能亢進症の手術法とその効果は?

副甲状腺そのものに異常をきたし、副甲状腺ホルモンの分泌が過剰になって起こる原発性副甲状腺機能亢進症での手術では、検査によって見つかった腫大している副甲状腺を摘出します。腺腫の場合、通常は1つの腺のみに異常が起こっているため、それを摘出します。なお、ほかの3腺が正常であっても、同じ側にあるもう1腺も組織検査のため摘除されます。ほとんどの場合は1つの腺腫の摘出で治癒しますが、2つ以上の副甲状腺が腫大しているときには、それら全てを摘出する必要があります。

手術は入院して全身麻酔下で行われることが一般的で、通常は術後5日目ぐらいまでに退院することができます。ただし、副甲状腺腫の部位や患者の病状によっては局所麻酔による日帰り手術も行われます。手術の翌日から歩行や食事などができるようになり、普通の日常生活に戻ることが可能です。退院後は翌日からは仕事などもできるようになります。

二次性(続発性)副甲状腺機能亢進症の手術法とその効果は?

二次性副甲状腺機能亢進症の治療は、PEITと呼ばれる経皮的エタノール注入療法やビタミンD3注入療法のほか、副甲状腺の4腺すべてを摘出する手術が行われます。ただし、手術で副甲状腺をすべて摘出してしまうと副甲状腺機能低下症を起こしてしまうため、同時に摘出した4腺の副甲状腺のうち1腺を、患者の上腕部や腹部などに自家移植するといった方法が取られます。そうしておくことで万が一副甲状腺機能亢進症が再発したとしても、簡単な手術で再び切除することができます。

なお、副甲状腺機能低下症を発症すると低カルシウム血症による口の周りや手足に痺れなど、さまざまな症状が出てきます。その場合、治療は血中カルシウム濃度を維持する薬や、腎機能の低下や尿路結石などの予防薬の服用といった対症療法が行われます。

おわりに:副甲状腺機能亢進症の種類などによって、治療法は少し異なる

副甲状腺機能亢進症の治療法は、原発性か二次性かによって少しずつ異なります。また、年齢や症状によって手術の適応となるかどうかは違ってくるので、各治療法のメリット・デメリットをふまえながら、専門医と相談の上治療法を決めていきましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

手術(137) 副甲状腺機能亢進症(4) 二次性(2) 原発性(3) PEIT(1) ビタミンD3注入療法(1) 経皮的エタノール注入療法(1)