妊娠糖尿病は食事療法が治療のポイント!?正しい知識でリスクを回避

2017/12/18 記事改定日: 2018/5/16
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

妊婦検診にて「妊娠糖尿病」と診断されてしまった場合、普段の食事ではどんなことに気をつけたらいいのでしょうか?この記事では、妊娠糖尿病の症状や治療について、食事療法のポイントを中心にお伝えしていきます。

妊娠糖尿病とは?

妊娠糖尿病とは、妊娠中に初めて発症した糖代謝異常の一種で、まだ糖尿病までには至っていないものをいいます。この定義には妊娠前からの糖尿病は含まれず、また、妊娠前までに糖尿病を発症したことがない人にも発症することがあります。妊婦さんで妊娠糖尿病を患っている人は、全体の約10~15%とされています。

症状とお腹の赤ちゃんへの影響

妊娠糖尿病の自覚症状はほとんどなく、母体では

  • 妊娠高血圧症候群
  • 流産・早産
  • 網膜症や腎症(糖尿病の合併症)

胎児においては

  • 発育不全もしくは巨大児
  • 新生児低血糖
  • 高ピルピン

などの合併症を引き起こすリスクが上昇することが分かっています。このため、早期発見するために妊娠初期・中期において妊娠糖尿病のスクリーニング検査を受けることが大切です。

妊娠糖尿病の検査方法と基準値

一般的な妊婦健診では、定期的に血糖値の計測が行われます。血糖値は空腹時に90㎎/dl未満であることが理想であり、それ以上の場合には糖尿病の可能性が考えられます。

このような一般的に行われる血液検査で糖尿病が疑われた場合には、血糖値の状態をさらに詳しく調べるために経口ブドウ糖負荷試験が行われます。これは、糖分が多く含まれた検査用の飲料を飲んで、その後の血糖を時間を追って測定するものです。

  • 飲料を飲む前の血糖が92mg/dl以上
  • 一時間後の血糖が180mg/dl以上
  • 二時間後の血糖が153mg/dl以上

のどれかに該当する場合には妊娠糖尿病と診断されます。

妊娠糖尿病の治療 ― 血糖値管理はどうやってするの?

食事療法

妊娠糖尿病と診断されたら、母体と胎児のために血糖値を良い状態に保つことが必要となります。血糖値の管理方法としては、食事を工夫したり、運動によってカロリーを消費する、インスリン注射などによるものがあります。食事療法においては、糖分少なめで栄養バランスと1日の総摂取カロリーを管理します。

運動療法

ここ2、3年でその効果の大きさが見直されてきている運動療法においては、ウォーキングやマタニティビクス・ヨガ・スイミングなどの妊婦さん用の運動が推奨されています。運動する時間帯は、血糖値の一番上がる「食後1時間後」が効果的とされていて、妊婦さんにおいては約30分間ほどで良いと言われています。

インスリン治療

また、インスリンによる薬物療法も管理方法のひとつです。しっかりとした血糖コントロールが必要となりますので、経口血糖降下薬ではなく強化インスリン治療を行うことになります。産後にはインスリンの必要量が減りますので、血糖値の変化に合わせて医師の指示により投与量が調節されます。

食事制限のポイントについて

妊娠糖尿病における血糖コントロール方法の中でも、一番効果的と言われているのが食事療法です。食事療法を行うときには、炭水化物や果物の摂取量に注意する必要があります。

妊娠糖尿病の食事療法は通常の糖尿病における食事療法と基本的には同じで、3大栄養素のうちタンパク質・脂質に関しては総カロリーだけを気にして、血糖値上昇に関係する糖質(炭水化物)の摂取を控えるようにするというものです。糖として吸収される炭水化物には白米・パン・根菜類・かぼちゃなども含まれ、果物(果糖)やスポーツ飲料などの糖分にも普段から気を配る必要があります。

赤ちゃんのために撮るべき栄養は?

妊娠中は胎児の成長のためにも一定のカロリー摂取は必須ですので、ダイエットに近い食事療法とならないように、タンパク質・ミネラル分などはしっかり摂取しましょう。

食後血糖値のために食事は小分けに

空腹時の血糖値に加えて食後の血糖値も抑えるのがポイントとなりますので、1日の総摂取カロリーを3回の食事回数だけではなく、4~6回などに小分けするという「分食」も大変効果的です。非常に空腹を感じるという時間帯を作らないようにすることで、血糖値の急激な上昇を避けることが可能となります。

おやつは食べてもいいの?

妊娠中は、妊娠していないときよりも多くのカロリーが必要であり、空腹時につわりがひどくなる人は定期的におやつを食べることもあるでしょう。
おやつを摂ることは決して悪いことではありません。しかし、あまりに高カロリーなものや糖分が多いものは妊娠糖尿病のリスクになりますので避けた方がよいでしょう。

おすすめレシピ ― 胎児と母体を守る食事やおやつ

妊娠糖尿病も食生活に注意することで発症や悪化を防ぐことが可能です。ここでは、妊娠糖尿病の人におすすめのレシピを3つご紹介します。

豆腐グラタン

がっつりメニューで満腹度が高いグラタンですが、高カロリーのため妊娠中は控えている人も多いでしょう。でも、ホワイトソースの代わりに絹ごし豆腐を利用するだけで低カロリーで良質なたんぱく質を多く摂ることができます。

まず、絹ごし豆腐を滑らかになるまですりつぶし、適量のマヨネーズと味噌を加え、塩コショウで味を調えます。ブロッコリーやニンジンなどお好みの野菜を軽く塩ゆでし、できあがった豆腐ソースをたっぷりかけ、ピザ用チーズとパン粉を振りかけてオーブンで色づくまで焼けば完成です。
さっぱり味なのでつわり中にもおすすめのメニューです。

鶏むね肉のサラダ

鶏むね肉は高たんぱく低カロリーな食材であり、妊娠糖尿病の強い味方です。
鶏むね肉は塩コショウで味付けをして十分な量のお湯に入れてしっかり火を通します。取り出して冷ましたら、一口大に割き、お好みのサラダに投入しドレッシングと和えて完成です。

噛み応えもあるため、満腹感を得ることもできるおすすめメニューです。しかし、鶏肉にはしっかりと火を通すように注意しましょう。

牛乳ゼリー

妊娠中でも食べたくなるおやつ。市販のおやつは高カロリーで糖分が多く含まれているため、手作りに挑戦してみましょう。

低カロリーなおやつとして満足度が高いものの代表がゼリーです。まず、ゼラチンを戻してふやかしておきます。これに適量の牛乳とはちみつを加えて冷やして固めれば完成です。
お好みの果物を入れてもいいでしょう。

出産後の注意点

妊娠糖尿病は通常、産後6~12週間の内に治るとされています。これは、妊娠糖尿病の原因であった胎盤から産生されるホルモンが出産によって排出されるためです。

しかし、妊娠糖尿病にかかったことのある人は、正常な人に比べて将来的に糖尿病を発症するリスクが高いことがわかっています。このため、妊娠糖尿病が治ったからといって食生活の大幅な乱れを起こすのは避けた方がよいと考えられます。妊娠中のような厳密な食事制限は必要ありませんが、適切なカロリーと野菜を中心とした栄養バランスの取れた食生活を心がけましょう。

おわりに:早産などのリスクを高める妊娠糖尿病。日頃の食事で血糖コントロールを!

妊娠糖尿病は、流産や早産のリスクを高めたり、発育不全を招いたりする可能性があります。日頃の食事で血糖コントロールをしっかり行うことが改善のカギとなるので、ご紹介したことをひとつひとつ実践し、元気な赤ちゃんを産み育てられるようにしてください。

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