記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/2 記事改定日: 2018/8/23
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、何らかの原因で血小板が減ってしまうことで出血症状が現れる病気です。症状には個人差があり、治療方法も症状や患者が置かれている状況によって変わってきます。この記事では、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療法を種類別に紹介していきます。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、他の明らかな原因がみられないのに血小板が減少する病気です。血小板は主に出血を止める役割を担う血液中の成分であり、5万/µL以上あれば危険性がほとんどないといわれています。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療は血小板の数、出血の症状の有無、その人の生活スタイルなどを考慮し、治療をするかを否かを決定します。
治療は血小板の数値の設定が必要であり、血小板数が少なくとも3万/μL以上に維持できるように治療を計画していきます。
ただし、血小板数10万/μL以上の維持と出血症状がないところまで回復するのが理想です。まずは休薬しても、あるいは維持量が3万/μL以上、かつ出血症状がみられない状態までの回復を目指します。出血症状については、血小板の量が少なくても出ないことがあるため、問診や視診などで確認をとります。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)で言う出血とは点状や斑状の皮膚出血、歯茎や口腔粘膜の出血、鼻出血、便や尿に血液が混じる、生理が止まりにくい、生理出血が多いなどになります。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の治療には、ヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法、副腎皮質ステロイド療法、脾臓摘出術、ステロイド以外の薬物療法の4つの治療法があります。
治療を始めるとなったときにまず検討されるのがヘリコバクター・ピロリ菌除菌療法です。ピロリ菌の検査を行い、胃の中にピロリ菌が存在するようであれば抗菌薬を使って除菌治療を行います。除菌に有効な複数の薬を一週間服用します。この治療で約半数の人は血小板数が上がるといわれています。
ピロリ菌が存在しない、あるいは効果が認められなかった場合は副腎皮質ステロイド療法を行います。ステロイドは免疫を抑制する作用があり、抗体の産生や脾臓での血小板の補足作用を抑制します。この治療法はステロイドの副作用が大きいというデメリットがあるため、治療前にメリットとデメリットをきちんと説明してもらい選択するようにしましょう。
副腎皮質ステロイド療法で効果を得られない場合、または副作用で治療継続ができなくなった場合、脾臓摘出を行います。これは血小板が主に脾臓のマクロファージによって壊されるために行われます。近年では腹腔鏡手術が選択されることが多くなっておるようです。
上記3つの治療で効果が無い場合は、次のステップとして血小板増殖刺激因子製剤や免疫抑制剤など、他の薬剤による治療を行います。
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は万が一大量出血を起こすと命に危険が及ぶことがあります。また、手術や分娩などの予定がある場合も大量の出血が予想されます。このような場合は、出血に備えて血小板数を安全とされる基準値まで増やしておく必要があるのです。
血小板数を増やすための治療には、免疫グロブリン製剤大量療法(IVIgG療法)とステロイドパルス療法があります。
5日間継続して大量の免疫グロブリン製剤を投与する治療法です。入院が必要であり、点滴を始めて3日後を境に血小板が増え始め、1週間ころに最大値まで増加しますが、効果は2、3週間しかありません。血小板増加作用を上げるために、血小板輸血を併用することもあります。
メチルプレドニゾロンを3日間大量投与し、その後は投与量を減らしていく治療法です。こちらも入院が必要になります。3日後から血小板の増加がみられますが、効果はあくまでも一時的なものです。治療をうけた8割の人が10万/μL以上まで血小板量が増加したと報告されています。
特発性血小板減少性紫斑病の人は出産時に大量出血する可能性があるので注意が必要です。出産は健康な人でも多くの出血を生じるため、血小板が少なく血が止まりにくい患者は大量出血のリスクが高まります。また、妊娠中に特発性血小板減少性紫斑病の症状が悪化して、血小板数が更に低くなる人も多いとされています。
このため、特発性血小板減少性紫斑病患者が妊娠した場合には、治療を強化すると共に出産に向けて血小板数が5万/μL以上を維持できるよう、計画的にステロイドの大量療法やγグロブリン大量投与などの治療が行われます。また、それでも十分な血小板数が維持できない場合は血小板輸血を行うこともあります。
さらに、胎児は胎盤を通して母体から抗血小板抗体が移行していることがあるので、出産時の衝撃などで稀に頭蓋内出血を起こすこともあるので、慎重な経過観察が必要となります。
ITPは、原因不明で血小板が著しく減少してしまう病気です。出血しやすく、血が止まりにくくなるため、事故などで大量出血すると命を落とすリスクが高まります。治療は通常の治療と、手術や事故などで大量出血がある、もしくは予見されている状況とで大きく変わってきます。また、通常の治療も症状にあわせて治療方法が選択されるので、同じITP患者でも治療方法が全く違ってくることもあるのです。
ただし、目標が血小板の増加というところは共通しています。医師の指示に従いながら、目標の数値まで血小板が増加するまで治療を続けていきましょう。