深部静脈血栓症ってどんな病気?何が原因で発症するの?

2017/12/13 記事改定日: 2018/12/6
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

呼吸困難を引き起こし、死に至る可能性のある病気「深部静脈血栓症」をご存知でしょうか?今回はこの深部静脈血栓症について、症状や原因、治療法など全般的な情報をお伝えしていきます。

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深部静脈血栓症とは?

静脈は、全身で利用された血液を回収し心臓に戻す役割を担っています。この静脈には体の表面に近い表在静脈と、それより深い体の奥の方にある深部静脈があります。この内、深部静脈に血栓が形成されてしまう病気が深部静脈血栓症です。
なお、血栓とは血液の固まりのことです。

深部静脈血栓症を発症する部位として多いのは脚、特に大腿部や骨盤内ですが、腕に発症することもあります。深部静脈血栓症により血栓ができてしまうと、静脈の機能は著しく低下しますし、静脈内部の血流にも支障が発生します。こうしたことによりむくみや皮膚の変色、腫れなどが出やすくなります。

更にできてしまった血栓が剥がれて血流にのり全身を巡っていくと、それが肺に到達することもあります。すると胸の痛みや呼吸困難などが引き起こされることもあり、こうなると命の危機に直結するリスクも発生してしまいます。

深部静脈血栓症の症状とは?

深部静脈血栓症を発症しても半数以上は無症状であるとされています。脚の軽いむくみや疲労感などで済んでしまうことも少なくはありません。

症状が出る場合は、使用済みの血液が回収されないことによる患部の重度のむくみ、疲労感が現れます。血栓によって血流が滞るので、その部分の腫れ、皮膚の変色が出てくることも多いです。

また血栓が血液に混ざって肺に到達してしまうと、肺塞栓の症状が出てくることもあります。これは、血栓により肺の血流が遮断されてしまう症状です。この場合には激しい胸の痛み、著しい呼吸困難などが引き起こされます。

深部静脈血栓症を発症する原因

深部静脈血栓症の発症原因ですが、ひとつは静脈の内壁の損傷が挙げられます。血栓はもとは止血のためにできる固まりであるため、静脈にダメージがありそこから出血があると、それを止めるために血栓ができやすくなります。なお、この血栓により静脈内に損傷が発生してしまうこともあります。

それから、血液が凝固しやすい状態にあるのも原因のひとつです。たとえば特定の病気にかかっていたり、特定の薬を飲んでいる、また喫煙習慣がある、脱水気味なときには、血液が凝固しやすくなる可能性が高いため、それにより血栓ができてしまい深部静脈血栓症が引き起こされることが考えられます。

そして血流速度の低下も原因のひとつになります。
長時間同じ姿勢でいた場合や、心臓に血液を戻すためのポンプ機能が著しく低下していた場合などには、血流が遅くなりがちなので、血液が詰まりやすくなって血栓が発生し、深部静脈血栓症の発症リスクも上がりやすくなります。

深部静脈血栓症はどうやって治療するの?

深部静脈血栓症では、血栓が肺に到達するのを防ぐのが最重要課題となります。ですから治療においてもその点に重きが置かれ、そのために必要な方法が選択されます。

治療法のひとつが、投薬です。血液の流れをサラサラにする作用がある抗凝固剤や、血栓の溶解に作用がある血栓溶解薬が処方されます。ただし抗凝固剤に関しては体調や既往歴などによっては服用できない人もおり、また効果が得られない人もいます。そのような場合には、傘の骨組みのような形をしたフィルターを体内に留置する治療が選択されることもあります。

また発病から時間が経過しており、腫れやむくみが残っている場合には、弾性ストッキングの着用も必要となってきます。

治療後にリハビリは必要?

深部静脈血栓症は再発を繰り返すことがあります。このため、治療後でも再発を予防するためにリハビリが必要になることがあります。

リハビリの方法については、どのような原因で深部静脈血栓症を発症したのかによって異なりますが、寝たきりの人や術後の人では、関節可動域訓練や下肢のマッサージなどを行い、血栓の形成を防ぐような訓練が必要です。また、健康な人では下肢の筋力トレーニングなどが行ない、血栓ができにくくなるような訓練を行います。。

予防のために注意するべきこととは?

深部静脈血栓症を予防するには、長時間同じ姿勢を続けるのは避け、適度に体を動かすことと十分な水分補給が必要です。
デスクワークや長距離フライトなどで長時間座位でいる必要がある場合は、適度に席を立って歩いたり、足首の屈伸運動などをこまめに行い、普段よりも多めの水分を摂るように心がけましょう。

おわりに:自覚症状がないことも多い深部静脈血栓症。高リスクの方は特に注意を

深部静脈血栓症は血栓が肺に到達してしまった場合、死に至る危険性があるにもかかわらず、目立った症状の少ない厄介な疾患です。血栓ができやすい持病があったり、薬を飲んだりしている方は、特に発症に注意しましょう。

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