記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/14 記事改定日: 2019/11/5
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
妄想を現実のことと思い込む状態がずっと続いてしまう「妄想性障害(パラノイア)」。今回の記事では、パラノイアの5つのタイプの特徴や家族ができるサポート、治療方法について解説していきます。
妄想性障害(パラノイア)とは、妄想を主とした精神疾患です。
妄想というのは、内容が非合理的であり非現実的で、訂正不能な思い込みのことを言います。
妄想というものの定義自体が曖昧なのですが、一般的には現代の世の中において明らかにあり得ないことを本人が信じ込んでいる場合には妄想に該当します。
つまり、一般常識では考えられないようなことを本人は信じて疑わないのがパラノイアの特徴です。
パラノイアの判断基準として、妄想が1ヶ月以上続いていることが挙げられます。しかし基本的に本人に病識はない上に、自分の考えが他人から見れば異常であるということを理解している場合もあれば、理解していない場合もあります。
理解していたとしても、その事実を受け入れられないという場合もあります。
パラノイアには、以下の5つのタイプがあります。
すべて自己満足で終わる妄想であれば問題はないのですが、度が過ぎると他者に迷惑をかけてしまう場合があります。
とくに被愛型や嫉妬型は手紙を書いたり、自宅まで押しかけたりといった行動や、浮気していると考えられる相手の家まで行ってしまうなどのストーカー行為に及ぶ可能性もありますし、被害型は暴力で対抗したり裁判を起こそうとする人もいます。
どのタイプも主となる妄想の内容は異なるものの、共通して言えるのは「説明しても納得してくれない」ということです。
だからこそ話し合いでの解決も難しいですし、治療においても医師の話を聞こうとしない場合もあるので回復は難航する傾向にあります。
パラノイアを持つ人の多くは、自分が病気になっているという自覚がありません。自分の考え方が普通だと思っていますし、日常生活に特に支障がないからです。
そのためそもそも病院に行くということがなく、この病気を発症していることも知らずに生活している人も多いでしょう。
病院を受診して「パラノイア」と診断された場合でも、大きな治療効果が期待できるものは現段階では存在しません。
薬物療法が行われる際には、統合失調症の治療で用いられる薬を投与されますが、あまり効果が得られない傾向にあります。そしてカウンセリングも、妄想という認識がない患者にとってはあまり効果がありません。
そのため、現段階においては抗精神病薬で妄想を抑えつつ、日常生活の中で環境の調整を行っていくというのがもっとも有効とされています。その際には、家族などの周りの人々の協力が必要不可欠です。
家族がパラノイアと診断されたときは、適切な治療を続けることができるように通院や服薬などをサポートすると同時に、患者自身や周囲の人が困難な状況に陥らないよう日常生活を支えていくことも必要です。
日常生活上のサポートを行うには、まず患者の症状を正しく理解し、妄想によって引き起こされる異常な行動や考えを知ることが大切です。
患者にはそれらの行動や考えが異常であるという認識がないため、真っ向からすべてを否定するのは症状を悪化させることもあります。見守りをしつつ、周囲に迷惑をかけないよう導くようにしましょう。
また、学校や職場などへの理解を求める必要もあるため、病気について伝えておくことをお勧めします。
パラノイアの人は自分が病気だということを認識できないために、治療が困難になりがちです。現段階では効果の大きい治療法は確立されていませんが、抗精神病薬と環境整備によって症状が改善するケースもあります。
家族のサポートを受けながら、専門医のもとで継続的な治療を続けていくことが大切です。