記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/12/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
気胸とは、何らかの原因で肺に穴があいてしまい、胸腔内に漏れた空気が肺を押してしまうことです。気胸になるとどんな症状が起こり、どんな治療があるのでしょうか。原因や種類もあわせて、気胸の基礎知識をご紹介していきます。
気胸とは肺を包む胸腔の中に空気が漏れた状態のことを言います。肺から空気が漏れて胸腔の中にたまっていたとしても、胸は堅強な肋骨があるため風船のように外側に膨らむことはありません。結果として肺が空気に押されることになってしまい、小さくしぼんでしまいます。
つまり気胸とは、肺から空気がもれて肺を圧迫し、肺が小さくなってしまった状態のことを指すのです。10代後半から30代の方に多く、痩せて胸の薄い男性に多く発生する病気であり、主な症状として突然の胸の痛みや息苦しさが挙げられます。また、空気が大量に漏れてしまうと心臓を圧迫してしまうことから血圧が低下し、ショック状態に陥ることもあります。
気胸は原因によって3つの種類に分類することができます。
自然気胸は、肺の一部が「ブラ」と呼ばれる壁の薄い風船の様になり、これが破裂して穴があくタイプの気胸です。肺に穴があいて一時的に空気が漏れますが、多くはすぐに閉じ漏れた空気は血液に溶け込んでいくため次第に消失します。明らかな理由もなく発生することから「自然」気胸と呼ばれます。
また、外傷が原因で気胸を発症することもあります。交通事故などで折れた肋骨が肺に刺さったりすると、損傷部位から空気が漏れ出し気胸となります。
さらに、女性特有の現象として月経随伴性気胸もあります。これは生理(月経)を原因としており、子宮内膜由来の細胞が胸腔に出現し、生理周期とともに脱落するために穴があいてしまうことで気胸になります。
気胸の代表的な症状は胸痛、呼吸困難、咳などです。呼吸ができたとしても、大きく息が吸いにくい感じがしたり、激しい運動をすると呼吸ができなくなるなどの症状があらわれます。また、酸素飽和度の低下、頻脈、動悸、咳などの症状があらわれることもあります。ただし、症状がまったくでないこともあります。
前ぶれもなく突然発症することから気づかれないことも多く、発症初期の段階では、肩や鎖骨辺りに違和感、胸痛や背中への鈍痛が見られることもありますが、多くの場合、肺が小さくなるとその痛みもなくなってしまいます。
また上記で説明したように、重症化するとショック状態に陥り、命を落とす危険があります。重症とされる高度気胸や緊張性気胸は早期に治療を施さないと危険です。
肺表面にあいた穴が小さく症状が非常に軽度である場合には、安静にしているだけで回復します。この場合は、状態の確認のためにX線(レントゲン)検査は行われますが、特別な治療は行わず経過観察になるのが一般的です。
これよりも症状が進行し、胸部X線検査で肺の上端が鎖骨より下にあることが確認された場合は中等度、肺の虚脱が著しい場合には高度もしくは緊急性気胸と診断されます。
重度の気胸は、入院して胸腔内にドレーンを留置し陰圧をかけて吸引する治療が行われます。また、自然気胸は再発することが多いため、過度な運動を避けるなど日常生活での注意も必要です。再発した場合や再発が見込まれる場合は、手術療法で、気胸の原因となっているブラ(壁の薄い風船のようなもの)を切除して治療を行います。
気胸には、外傷性や生理が要因のもの、自然気胸などの種類があります。それぞれ原因と治療法が異なるので、気胸と思わしき症状がある場合は、すぐに病院で検査してもらい、適切な治療をうけるようにしてください。