舌癌の手術後の後遺症と再発の可能性について

2018/2/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

舌癌の手術は、癌ができている範囲によって切除する大きさも変わってきます。そのため、手術の後遺症がどの程度残るかも違ってきます。この記事では、舌癌の手術の後遺症と再発の可能性について詳しく解説しています。

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手術による後遺症について

舌癌の手術では、口の中の筋肉や舌を一部分又は全部切除するため、後遺症として、嚥下、咀嚼、発声などの機能が低下する場合があります。どの程度の後遺症が残るかは、下記で示しているように切除する舌の範囲によって大きく異なります。

部分切除術

比較的小さく浅い腫瘍に対し、舌の一部分のみ切除する手術法です。術後数日は舌の腫れや痛みを伴い、若干の舌の変形が残りますが、飲食や会話への障害はほとんど現れません。

舌半側切除術

癌が舌の中央付近まで根を広げている場合、癌がある側の舌の1/2を切除する手術法です。欠損部は、組織移植で再建できる場合もあります。嚥下、発声機能に障害が残りますが、日常生活にほとんど支障はなく、味覚障害もほぼありません。

舌亜全摘術

舌の半分以上に広がった癌を除去するため、広範囲の舌を切除する術式です。体の他の部分から組織を移植する再建手術を行うことで、術前の7割から8割の嚥下機能や発声機能が回復すると考えられています。
ただし残った舌の柔軟度によって後遺症の重症度には個人差が出てきます。またリハビリが必要であり、嚥下については流動食が摂れるようになるまで1~2か月以上かかることが多いといわれています。術後しばらくは思うように舌が動かないためうまく発声できず、コミュニケーションに苦労することも珍しくありません。

舌全摘出術

癌が舌のまん中を越えて反対側まで進展しているため、舌を全部摘出する手術法です。切除後の欠損部を種々の方法で再建しますが、大きな機能障害が残ります。嚥下機能についてはリハビリが必要ですが、口からの食事だけで十分な栄養が取れるようになるには1~2ヶ月かかることも珍しくなく、咀嚼機能はほぼ失われ誤嚥を完全に防止できないことから、咽喉を摘出する場合もあります。味覚機能は残りますが、発声機能については大きな障害が残ります。

舌癌の代表的な治療法とは?

舌癌の治療法には大きく4種類あります。

切除術

癌のできている部分を手術で取り除く方法で約9割を占めます。癌の進行の度合いによって、部分切除術、半切除術、亜全摘術、舌全摘術などがあります。手術で切除する範囲は、腫瘍の大きさ、位置で決まります。

放射線療法

外照射と、動脈内化学療法(放射線治療と併用)があります。 外照射は、体の外から放射線を当てるライナックと呼ばれる治療です。通常25~30回前後に分割して照射を行い、1回の照射に要する時間は数分とされています。治療期間は約1ヶ月半かかりますが外来通院治療も可能です。
動脈内化学療法は、動脈に選択的に抗がん剤を流し込み、放射線治療の効果を高める治療法です。放射線治療の補助的治療法として併用されます。
なお初期の場合に選択される小線源法とは、放射線を限局的に照射する治療法です。イリジウム針などの線源を舌に挿入して、癌にポイントをしぼって放射線を組織内照射します。

抗がん剤治療

癌細胞を死滅させる薬を使う治療法です。舌癌の治療は、主に手術療法と放射線治療であり、抗がん剤による化学療法はこれらの治療との組み合わせで行われることがあります。

免疫療法

免疫療法は、本来体が持っている免疫力(免疫細胞)を活かしてがんと闘います。他の治療ほど即効性はないケースもありますが、効果が長期間持続することがメリットといわれています。
免疫療法では、健康な細胞まで攻撃されるため、脱毛、発疹といった皮膚症状に加え、嘔吐、下痢、顔面麻痺などさまざまな副作用が現れることがあります。

舌癌が再発しないように、定期的に検査を受けよう!

舌は筋肉でできており血流とリンパ流に富むため、がんが頸部に転移し、後日腫れが出て再手術となるケースがあります。これは、切除手術を行った場合でも同様で、早期がんでも、1年以内に約3割のケースで頸部転移がみつかるとされています。
退院後は触診やエコー検査、MRIなどの検査を定期的に行いますが、自分でも舌癌の再発予防を怠らないように努めましょう。

おわりに:舌の健康状態をマメにチェックして、舌癌の早期発見に努めよう

舌癌は早期発見が可能な病気である一方、部位によっては発見が遅れ、転移が進みやすい危険な癌ともいえます。またどの治療法をとっても後遺症や副作用を伴います。日ごろから舌の健康状態をチェックし、異常の有無を気にかけるように努めましょう。

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