記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/1/29
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
50代くらいから増加してくるのが、「入れ歯」の使用率です。今回は入れ歯を使用している方向けに、入れ歯の正しいお手入れ方法をご紹介していきます。
入れ歯を入れるのは、見た目や噛む機能のためだと思っている人が多いです。確かに、そのような役割もあるのですが、残っている歯に対しても、入れ歯は重要な役割を果たしています。
歯がないまま長期間放置していると、噛み合う歯がなくなってしまうので、反対側の歯が飛び出してしまったり、隣の歯が傾いたりしてしまいます。この状態では歯並びが悪くなってしまうだけでなく、顎を動かすときの障害にもなります。当然噛む機能も低下するので、消化器官への負担も強くなってしまいます。ほかに、唇にシワがよるなどの見た目の問題もあります。
つまり、入れ歯を入れることはお口の中だけでなく、顎や筋肉、そして全身の健康の維持に役立っているのです。
入れ歯も自分の歯と同じように、毎日お手入れをすることで清潔な状態を維持することが大切です。熱いお湯を使うと、入れ歯が変形してしまう恐れがあるので、水やぬるま湯を使うことがポイントになります。洗う頻度は、できれば毎食後に外して洗うといいでしょう。
入れ歯別の注意点としては、部分入れ歯の場合は、金属のバネがかかっているところに汚れがたまりやすいです。総入れ歯の場合も、歯茎に汚れがたまることがあるので、うがいを忘れずに行うようにしましょう。
また、洗っている間に落としてしまうと、割れるなどの破損の可能性があります。水を張った洗面器やプラスチック容器の上で洗うようにすると、落としても割れる心配がないのでおすすめです。
入れ歯のお手入れでは、まず流水で食べかすやヌメリなどを洗い流していきましょう。その後、歯ブラシを使って全体を磨いていきます。歯磨き粉を付けてしまうと、入っている研磨剤により表面が傷ついて細菌が繁殖しやすくなってしまいます。粘膜や歯茎の腫れ、口臭の原因となるので、歯磨き粉は使用しないようにしましょう。
なお、部分入れ歯の場合は、金属のバネを力強く磨いてしまうと、曲がってしまう原因になります。軽い力で磨くようにしましょう。バネを持って磨くのも、一カ所に力がかかって、曲がったり折れたりする原因になります。
全体を洗い終わったら、すすぎ洗いしてお手入れは終わります。日中であればお口の中に装着しますが、寝る前であれば洗浄剤の入った水の中で保管します。
入れ歯のお手入れをしないと、カンジダ菌という菌が繁殖する恐れがあります。加齢やストレスで抵抗力が落ちていると、口腔カンジダ症といって口の中の粘膜や舌に異常がみられるだけでなく、全身に菌が感染して重篤な症状に進むことがあります。
ほかには、入れ歯のお手入れをしないと汚れが残り、口臭がしたり、入れ歯に色素や歯石が付いてしまうこともあります。自分の歯が残っている場合、その歯が虫歯や歯周病になる可能性もあります。
なお、きちんと毎日洗っているにもかかわらず入れ歯が合わなくなった場合、歯茎が痩せてしまった可能性があります。その場合は調整が必要なので、歯科医院を受診しましょう。
入れ歯は正しくお手入れをしないと、菌が繁殖したり、口臭の発生につながったりする恐れがあります。毎日お手入れすることでリスクを回避して、健康なお口の状態だけでなく、全身の健康にもつなげていきましょう。