腰部脊柱管狭窄症の手術の目的とリスク。治療前に知っておくべきこと

2018/1/9 記事改定日: 2018/6/28
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

腰部脊柱管狭窄症は、老化で靭帯や骨が変形することで脊髄が圧迫されてしまう病気です。日常生活に支障がでるようになると、手術が検討されることもあります。この記事では、腰部脊柱管狭窄症の手術方法とリスクについて紹介していくので、意思決定やセカンドオピニオンに役立ててください。

腰部脊柱管狭窄症になるとどんな症状が出るの?

脊柱管は背骨、椎間板、関節、黄色靱帯などで囲まれた脊髄の神経が通るトンネルです。腰部脊柱管狭窄症とは、骨や靭帯の肥厚、椎間板の突出などにより、この脊柱管が狭くなることで脊髄が圧迫され、脚のしびれや痛みが起こる病気です。長い時間歩くと症状がひどくなり、しばらく休むとまた歩けるようになる間欠跛行(かんけつせいはこう)などの症状が現れます。
腰部脊柱管狭窄症は老化が原因の骨や靭帯などの変性で起こることが多いといわれています。

手術が必要なのはどんな症状のとき?

初期の腰部脊柱管狭窄症の治療は、保存療法とされていますが、保存療法で症状が改善しない場合や歩行障害が進行して日常生活に支障が出てくるほど進行してしまった場合には手術が選択されることもあります。
その他、両足に症状が出ている場合は改善する見込みが乏しいとされているため、この場合も手術が検討されます。

腰部脊柱管狭窄症の2つ手術方法とは

脊柱管狭窄症の手術は、脊柱管の狭くなった部位を広げて神経(脊髄)への圧迫を取り除くことが目的です。そのために、狭窄が発生している部位周辺の骨を削ったり、あるいは靭帯を取り除く作業を行います。これを「除圧」といい、椎弓切除術が代表的な手術方法です。
また腰椎すべり症などで腰椎がぐらつき不安定なときは、「除圧」に加えて背骨を安定させる「脊椎固定術」を行います。

椎弓切除術

脊柱管の狭窄が起きている部分を取り除くために、脊柱管の背中側に位置する椎弓を状態にあわせて切除していきます。かつては広範囲椎弓切除術が広く行われていましたが、身体への負担が大きいため、現在では部分椎弓切除術が主流になっています。

ただし、神経の圧迫が長期間にわたり、回復不能な状態までダメージを受けていた場合は、手術後もしびれや麻痺などの症状が残ることがあります。また、手術には感染症や合併症などのリスクもあるので、手術前には必ず医師に事前説明をしてもらい、メリットとデメリットを十分理解したうえで意思決定しましょう。

脊椎固定術

椎弓切除術により椎弓を削った後、脊椎が不安定になった場合には、除圧を行った範囲の脊椎を固定します。除圧を完了したうえで、骨盤から採ってきた骨を固定する範囲の周辺に置き、その骨と脊椎を骨癒合させて安定化を図ります。

腰部脊柱管狭窄症の手術の合併症のリスク

腰部脊柱管狭窄症の手術方法は大きく分けて上の2つがありますが、それぞれに合併症が生じる可能性があります。主な合併症は次の通りです。

椎弓切除術
顕微鏡や内視鏡を用いて行う手術のため、術創は非常に小さく、合併症も少ない手術ですが、術後に傷跡が感染したり、発熱などの合併症を生じる可能性もあります。
また、椎体を切除する操作で神経や脊髄を傷つけることもあります。
脊椎固定術
最も多いのは術創の感染や、全身麻酔後の発熱などです。しかし、これらは抗生物質投与などによって改善し、深刻な障害を残すことはまずありません。
しかし、一方で、脊椎固定術は脊椎にスクリューなどの金属を差し込むため、周辺の太い動脈や臓器、神経にダメージを与えることもあり、脊髄を包むくも膜に穴が開くと脳脊髄液が漏れ出す脊髄瘻を生じ、頭痛やめまいなどの症状が引き起こされます。
また、術後は2週間程度の安静が必要となるため、深部静脈血栓症や肺塞栓症の発症リスクが高くなることも注意しなければなりません。

このように、手術には様々な合併症があります。特に神経や脊髄にダメージを与えた場合には運動麻痺や感覚異常などの神経障害が後遺症として残ることもあるため、手術を希望される場合には、担当医とよく話し合い、納得のいく方法を選ぶようにしましょう。

手術後のリハビリ

手術後は筋肉拘縮や筋力低下などを防ぐためにも適切なリハビリが必要となります。
リハビリ内容はそれぞれの年齢や状態などによって異なり、理学療法士が作成するメニューに従って行われます。
主なメニューは、腰や太ももの筋肉のストレッチや筋力トレーニングなどから始め、徐々にウォーキングなどの運動を開始していきます。
脊椎固定術では術後安静にする必要があるため、別途上で筋力低下を防ぐようなリハビリが行われます。

おわりに:現在の状態にあわせた適切な治療が必要。必ず医師に相談を!

近年では手術技法の向上によって、リスクも軽減し、長期成績も良好になっているといわれます。ただし、全ての腰部脊柱管狭窄症が手術で改善するとは限りません。また、患者の進行度合や健康状態によっては手術ができないケースもあります。保存療法でも、手術療法でも、状態にあった適切な治療が必要です。担当医と相談しながら、それぞれの治療法についての理解を深め、十分納得したうえで治療方法を選択するようにしましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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