記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/11 記事改定日: 2019/3/7
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
下垂体とは様々なホルモンの分泌に関わる器官です。また眼の近くにある器官のため、下垂体腫瘍ができると心臓病や糖尿病などの合併症や、視力障害を起こしてしまう可能性があります。
この記事では、下垂体腫瘍の治療方法と、手術がきっかけで起こる合併症について解説していきます。
下垂体腫瘍とは、脳腫瘍の一種で、脳の下にぶら下がるように付いている「下垂体」という組織にできる腫瘍のことです。
下垂体は、成長ホルモンや性腺刺激ホルモンなど、いくつかのホルモン分泌をつかさどる司令塔を担う器官です。成長ホルモンは、子供はもちろん、大人になってからも筋肉、脂肪、肝臓などの代謝を促し、生活習慣病を防ぐ重要な働きをしています。
良性腫瘍のことが多く「がん」にはなることは非常に少ないのですが、この腫瘍が膨らんでいき、脳の他の部分を圧迫刺激することによって、様々な症状が現れることがあります。
下垂体腫瘍によって起こる主な症状は以下の通りです。
腫瘍の膨らみによって下垂体が圧迫されて、本来の機能が維持できなくなります。ホルモンが出にくくなる「分泌低下」と、ホルモンが出すぎる「分泌過剰」の2通りの症状が現れます。
腫瘍の膨らみによって、下垂体の上を通っている視神経が圧迫されることで視野が狭まってしまいます。圧迫が強まると失明に至りますので、早期に腫瘍を取り除き視神経を正常な状態に戻す必要があります。
下垂体腫瘍の治療には主に以下の3つがあります。
根本的な治療のためには手術を行うのが一般的です。下垂体は脳の底部に存在するため、一般的な脳外科手術とは異なり、鼻の穴から手術器具を挿入して内視鏡を用いて腫瘍を切除する「Hardy手術」が行われることが多いです。
頭皮や頭蓋骨を切開する必要がないため身体の負担が少なく、大脳などにダメージを加える可能性が低いため後遺症が出にくい手術とされています。
サイズの小さな下垂体腫瘍や手術で切除しきれなかった腫瘍などでは、「ガンマナイフ」と呼ばれる放射線治療が行われることがあります。「ガンマナイフ」は頭部を固定し、200余りの放射線ビームを腫瘍に集中的に照射できる放射線治療装置です。下垂体腫瘍は脳の深部に存在するため、「ガンマナイフ」では脳の他部位にダメージを与えずに的確な照射を行うことができます。
下垂体腫瘍の中には、成長ホルモンやプロラクチンなどのホルモンを過剰な産生を促すものがあります。これらのホルモン再生腫瘍の場合には、ホルモンの働きを妨げるための薬物療法が併用されることがあります。
また、悪性度の高い腫瘍の場合には、テモゾロマイドなどの抗がん剤が使用されることもあります。
手術後には、ホルモン低下症や低ナトリウム血症、髄液漏れ、視機能障害などの合併症が生じるリスクがあります。脳出血(術中大量出血)や脳梗塞など、命に関わる合併症もありえますが、こちらは可能性が極めて低いといわれています。
ただし、細心の注意を払い適切な手術を行った場合でも合併症が起こる可能性はゼロではありません。手術前には下垂体腫瘍の撤去手術によって、どのような合併症が起きるのかを事前に把握し、十分納得したうえで意思決定をすることが大切です。
下垂体は、長さ1センチほどの小さな器官です。小さな器官ではありますが、ホルモンの司令塔の役割を担っていたり、眼の近くに位置しているため、たとえ良性腫瘍でも人体に悪影響が生じることがあります。
現在は、頭部を開けなくても手術で腫瘍を取り除くことができるので、まずは医師に相談し、いくつかの治療方法を検討しながら自分の納得できる治療法を選択するようにしましょう。