記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/12 記事改定日: 2019/4/15
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
妊婦がトキソプラズマ症に感染すると、胎児に感染し深刻な状態に発展してしまう可能性があります。トキソプラズマ症は猫から感染するといわれていますが、これは飼い猫でも同じリスクがあるのでしょうか。この記事では、トキソプラズマ症を予防するために大切なポイントについて解説していきます。
トキソプラズマとは、土の中や哺乳類、鳥類の体内に棲む微生物の一種です。人間にも感染しますが、成人が感染した場合は特に免疫抑制状態でない限り、原則として重症化しません。症状が出たとしても、発熱やリンパの腫れなど、風邪によく似た症状にとどまります。
ただし、トキソプラズマが妊娠中の女性に感染すると、胎盤を通じて胎児にも感染する危険があるので、大変危険です。妊娠中に、あまり火が通っていない肉を食べたり、土いじりをしたりすると、胎児がトキソプラズマ症にかかるリスクが高まります。視力障害や水頭症など、深刻な障害を残る可能性がありますし、流産の危険も増大します。
しかし、トキソプラズマ症のリスクは、世間であまり知られていません。ある機関の調査では、妊婦が生肉やあまり火が通っていない肉を食べる危険性は妊婦の6割が知らなかったという状態であり、妊娠中にガーデニングで土いじりすることのリスクについては、妊婦の8割以上が認識していなかったとの統計が出ています。
前述の通り、トキソプラズマは哺乳類や鳥類全般に感染する可能性があります。ただ、人間の生活に身近な動物の中でも、猫については、糞の中に感染したトキソプラズマが潜んでいる危険性があるといわれています。
しかも、猫の糞の中にあるトキソプラズマは、「オーシスト」という特別丈夫な構造をしていて、土に戻ると数か月は生きのび、一般的な消毒薬で殺すことができません。
とはいえ、猫を家の中でのみ飼い、餌として生肉やあまり火の通っていない肉を食べさせていなければ、トキソプラズマ感染のリスクはそれほど高くないといわれています。
オーシストとは、トキソプラズマなどの原虫の成長段階の一つで、硬い被膜で覆われたものです。
トキソプラズマは非常に小さな半円や三日月形をした原虫ですが、ネコ科動物の腸管内でオーシストを形成します。オーシストは便と共に体外へ排出されますが、非常に固い殻に覆われているため、環境の変化など強く屋外の土壌でも一年近く死滅しないと考えられています。
そして、オーシストを含んだ土壌や生肉に含まれたオーシストを人が口にすると、体内でタキゾイドと呼ばれる形態に変化して活発に増殖を開始し、様々な症状を引き起こすのです。
妊婦のいる家庭で猫を飼い続ける場合、次の3点に気をつける必要があります。
出産までの間は、家族で協力しあいながら、以上の配慮をするように心がけましょう。
妊娠を計画する前に、妊娠希望の女性と飼い猫のトキソプラズマ感染歴があるかどうか、病院や動物病院で検査をしておくと、さらなる予防につながります。
ただし、すべての動物病院で猫のトキソプラズマ症の検査を実施しているわけではありません。事前に電話やメールで問い合わせ、検査に対応していることを確認してから訪れるようにしましょう。
トキソプラズマ症が胎児に感染すると、胎児の生命維持にも関わる深刻な症状となることがあります。しかし、トキソプラズマに関する正しい知識を持っておけば、極端に怖がる必要はないでしょう。家族で協力しながら予防に努めるようにしてください。