記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/1/15 記事改定日: 2020/3/25
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
臍(さい)ヘルニアとは、いわゆる「でべそ」のことです。子供にも大人にも起こる可能性がありますが、原因と治療の進め方が違ってきます。この記事では、大人と子供の臍ヘルニアの違いについて解説していきます。
臍ヘルニアとは、なんらかの理由で臍の部分(おへそ)の筋肉がしっかりと閉じずにいる状態で、へそから腸が脱出した状態のことをいいます。子供に現れた場合は、「でべそ」として扱われます。
ただし、臍ヘルニアは成人した後でも、肥満や妊娠、腹部に水分が過剰に溜まるなどが原因で発症することがあります。
赤ちゃんは生まれた後、へその緒が乾燥し自然に取れていきますが、そのとき体のなかではへその緒の穴を閉じるように筋膜や瘢痕組織(はんこんそしき)を作り出し少しずつ穴を塞いでいきます。
なんらかの理由でへその緒の穴が塞がれずに隙間から腸が飛び出すと、臍ヘルニアを発症します。
大人の臍ヘルニアは
など、原因はいくつかあります。
臍ヘルニアの治療方法は大人と子供によって異なりますが、それぞれ以下のような治療が行われます。
大人の臍ヘルニアは、肥満・妊娠・腹部の病気による腹水貯留などによって腹腔内からの過度な圧迫が腹筋にかかることがおもな原因となります。
大人の臍ヘルニアは自然に治ることはほとんどなく、発症すると腸管がはまり込んで虚血状態に陥る嵌頓を引き起こすことがありますので原則的には手術が必要となります。
完治には手術が必要となります。腹直筋を縫合してヘルニアを引き起こす「穴」を塞ぐ手術が行われますが、「穴」が大きい場合などには人工物のメッシュなどが埋め込まれることがあります。
術式にはお腹を切開する方法と腹腔鏡を使用する方法があり、全身の状態や「穴」の状態などによって術式が決定されます。
子供の臍ヘルニアは生後間もなくのころに発症しやすく、多くは1~2歳ころまでに自然に治ります。
美容上の観点から臍ヘルニアが気になる場合には、ヘルニア嚢をガーゼやスポンジなどで断続的に圧迫する「臍ヘルニア圧迫療法」が行われます。
一方、2歳頃になっても臍ヘルニアが改善しない場合には腹壁の穴を閉じるための手術が行われることもあります。
成人の臍ヘルニアは手術をしても術後に再発することがあります。自分自身の組織を用いて「穴」を縫い縮める方法による手術は、術後感染などが起こりにくいといったメリットもありますが再発を起こしやすいです。「穴」を人工のメッシュで覆う方法による手術は再発が起こりにくいとされています。
手術をする場合は、「穴」の大きさや腹筋の状態など再発リスクを考慮してどのような方法の手術を行うか担当医とよく相談して決めましょう。
臍ヘルニアが大きい場合は3歳くらいになっても筋肉の隙間が閉じずに治らなかったり、皮膚がたるんで見た目が悪くなってしまったりして手術が必要になることもあります。近年は、綿球で圧迫して絆創膏で固定する方法など、手術をせずに治療することも可能といわれています。
子供の臍ヘルニアも大人の臍ヘルニアも、大きいときには早めに病院を受診し、適切な治療計画を立ててもらう必要があります。一般的には大きな問題になりにくい病気ではありますが、まれに嵌頓(かんとん)が起こり重症化するおそれがあるので、大きい臍ヘルニアがあるときは早めに病院で検査してもらいましょう。