甲状腺腫瘍の手術の流れと適応になる条件とは?

2018/1/16 記事改定日: 2019/3/22
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

甲状腺に腫瘍ができた際には、場合によっては手術が必要になります。
こちらの記事では、甲状腺腫瘍で手術が適応となるケースや、手術の方法、そのほかの治療法について解説します。

甲状腺腫瘍で手術が必要になるのはどんなとき?

甲状腺腫瘍で手術が必要になるのは、基本的には腫瘍が悪性である場合です。
悪性の甲状腺腫瘍とは、いわゆる甲状腺がんのことを指し、甲状腺がんには以下のような種類があります。

  • 乳頭がん
  • 濾胞(ろほう)がん
  • 髄様(ずいよう)がん
  • 未分化がん
  • 悪性リンパ腫

また、甲状腺腫瘍が良性であっても、以下のように大きさや症状などによっては手術が必要となります。

  • 一見良性でも、悪性の可能性が捨てきれない(細胞診では診断のつきにくい濾胞がんが疑われるなど)
  • 腫瘍が大きい(目安は3~5cm程度)
  • 気道や食道が圧迫されている(呼吸困難や嚥下障害が認められる)
  • 見た目が気になるなど、美容的な問題で患者自身が手術を希望している

良性の甲状腺腫瘍の一種である甲状腺嚢胞においては、経皮的エタノール注入療法を繰り返しても改善が見られない場合にも手術が検討されます。

甲状腺腫瘍の手術方法

甲状腺乳頭がんなど、甲状腺腫瘍が悪性の場合には、甲状腺の切除手術や頸部郭清術が行われます。

甲状腺の切除手術

基本的には、蝶々の形をしている甲状腺の半分を切り取りますが、両側に多発している場合、被膜外に大きく浸潤している場合、肺などに遠隔転移している場合には甲状腺全摘となります。
反回神経は原則温存となるものの、反回神経にがんが浸潤している場合には切除されます。

頸部郭清術(リンパ節の郭清)

甲状腺乳頭がんは、甲状腺周囲(特に気管周囲)や側頸部(首の側方)など、リンパ節に比較的転移しやすいといわれているため、がんだけでなく周辺のリンパ節も併せて切除されることがあります。

リンパ節に転移していない場合や側頸部のリンパ節転移がない場合には甲状腺周囲のみの郭清が行われ、側頸部にリンパ節転移が認められる場合には甲状腺周辺に加えて側頸部の郭清も行われます。

手術後に傷跡は残る?手術後の注意点は?

甲状腺腫瘍の手術は首の前面に3~5㎝程の皮膚切開が行われます。目立ちやすい部位のため、首のシワにそって切開するなどの配慮がなされますが、完全に傷跡を隠すことは困難です。
ただ、コンシーラーを利用したり、襟の高い衣類を着用することで目立たなくすることはできます。

手術後は全摘の場合は甲状腺ホルモンの分泌が停止するだけでなく、部分切除の場合でも分泌量が低下することもあります。また、術後再発を生じることもありますので、定期的な検査を欠かさず受けることが大切です。

もし倦怠感や眠気、抑うつ気分、むくみなど甲状腺ホルモンの減少による症状が現れた場合は早めに病院に相談するようにしましょう。

悪性でも手術以外の治療法はある?

甲状腺腫瘍が悪性だった場合、たいていは手術が行われます。ただし、転移の状態によって、または再発防止のために別の治療が行われることもあります。

アイソトープ治療

放射性ヨウ素剤を投与します。放射性ヨウ素には甲状腺細胞に集まる性質があり、がん細胞に取り込まれた放射性ヨウ素は、甲状腺がん細胞を破壊します。

放射線外照射治療(リニアック)

リニアック(直線加速器)を使い、病巣部にエネルギーの高いX線を照射するというものです。腫瘍の縮小もしくは破壊を目的としています。

TSH抑制療法

「TSH」とは「甲状腺刺激ホルモン」のことです。甲状腺刺激ホルモンの分泌を抑え、再発予防するために甲状腺ホルモン薬を投与します。

分子標的薬治療

アイソトープ治療や甲状腺刺激ホルモン(TSH)抑制療法を行っても効果が見られない場合に、チロシンキナーゼ阻害剤(分子標的薬)を投与して腫瘍の増殖を抑えるという治療です。

おわりに:悪性の甲状腺腫瘍の治療法は外科手術が基本

甲状腺腫瘍が悪性の場合や、良性でも大きくなっていたり症状が出たりしている場合には外科手術が行われます。また、手術の後には転移や再発防止のため、状態に合わせてアイソトープ治療や放射線外照射治療、TSH抑制療法なども行われるでしょう。

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