記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/17
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
平均寿命が延び、高齢者人口が増加する現代、
体も頭もすっきり健康、寝たきりや痴呆とは無縁でいたいもの。
しかし、老化とともに身体能力は確実に低下していきます。
そのため、歩くのが面倒くさくなったり、転倒への不安感から家にこもりがちになります。
そうなると、悪循環のスタート。
体を動かさないことで、身体機能は著しく低下していきます。
老化は避けることのできないものですが、老化の進行具合は一人ひとり異なります。
同じ70歳でも、実に30歳もの差が出ることもごく普通です。
身体機能は、毎日体をよく動かせば、機能低下の度合いを小さくすることが出来ます。
積極的に運動することで、実年齢より20歳若い体力年齢を目指しましょう!
日常生活の中に適度な運動を定期的に取り入れることで、体は丈夫になり、足腰が鍛えられ、バランス能力も高まり、簡単に転倒しない体になります。そして、活動範囲が広がり、シニアライフも楽しくなります。
運動と言っても、激しいスポーツをする必要はありません。高齢者には、高齢者に適した運動があります。
特に運動量を制限せざるを得ないような事情がなければ、65歳以上の健康な高齢者は、日頃からアクティブに運動することをおすすめします。推奨されている運動は以下になります。
・週に150分以上のサイクリングやウォーキング
・筋肉(脚、腰、背中、腹部、胸部、肩、腕)を週2日以上鍛える
・週に60分のランニングやテニスなどの激しい有酸素運動
・中程度の有酸素運動と激しい有酸素運動を組み合わせる。(たとえば、30分間のランニング2回と30分間のウォーキングは、中程度の有酸素運動150分に相当)
目安としては、1分間の激しい運動は2分間の中程度の運動に相当します。また、常に軽い運動をすることを心がけ、長時間座りっぱなしでいることは避けましょう。座っている時間が長いと、身体機能が低下し、病気になるリスクが高まります。
簡単に転倒しない足腰をつくり、バランス感覚を養うため、高齢者は、週に少なくとも2日間、足腰とバランス感覚のための運動を行うべきです。例としては、ヨガ、太極拳、ダンスなどがあります。
中程度の有酸素運動には以下のようなものがあります。
・ウォーキング
・水中エアロビクス
・社交ダンス
・サイクリング
・テニスのダブルス
・バレーボール
中程度の運動は、心拍数が上がり、呼吸が少し速くなり、体が火照ってきます。運動中に話すことはできても、歌を歌うことはできなければ、中程度の運動にあたります。
買い物、料理などの日常的な家事は、心拍数が上がらないため、一週間に必要な150分の運動には入りません。しかし、座りっぱなしを防ぐ効果的な活動になります。
激しい運動をすることで、中程度の運動よりもさらに健康に良い効果をもたらすことがわかっています。ほとんどの人にとって、激しい運動は、以下のようなものを指します。
・ジョギングまたはランニング
・エアロビクス
・速く泳ぐ
・自転車を速くこぐ、または坂道で乗る
・テニスのシングルス
・サッカー
・坂道をハイキングする
・ダンス ・武道
激しい運動をすると、呼吸が速くなって心拍数が上がります。息が切れてしまい、会話も少ししかできなければ、激しい運動をしていると言えるでしょう。
一般的に、75分間の激しい運動は150分間の中程度の運動と同程度の効果をもたらすと言われています。
・日常生活を営む
・強い骨をつくり、維持する
・血糖値と血圧を調節する
・健康な体重を維持する
ために、筋肉が必要になります。
筋力トレーニングでは、1種類を何セット、というふうに数えます。たとえば、二頭筋カールや腕立て伏せなど、1つの動作を1種類と数え、それを一定回数繰り返します。これを1セットと考え、それを何セットか行います。
それぞれのトレーニングについて、以下のことを心がけてください。
・1セットは、8~12回に設定する
・最低1セット行う
筋力トレーニングで効果を高めるためには、「これ以上繰り返すのは無理」と感じるまで頑張るようにします。
筋力トレーニングは自宅でもできます。やり方はさまざまで、以下のようなものがあります。
・重い荷物を運ぶ
・床の上でのダンス
・スコップで地面を掘るなどのガーデニング
・腕立て伏せや腹筋
有酸素運動を行う日と同日に筋力トレーニングを行っても構わないし、別の日に行っても構いません。自分に合う方法を見つけてください。
激しい運動の中には、有酸素運動と筋力トレーニング双方にあたる、以下のような運動があります。
・サーキットトレーニング
・エアロビクス
・ランニング
・サッカー
・ラグビー
・ホッケー
筋肉の量と質が老化で異なってくるため、70歳にもなると定期的に運動している高齢者でも、体力の低下は避けることができません。
しかし、持久力に関しては、日頃の運動による影響が大きく、やる・やらないで著しい差が現れます。高齢者が運動することは、身体機能の低下を防ぐだけでなく、精神的にもいい影響をあたえます。
しかしながら、ケガや事故の危険も年齢を重ねるにつれて高くなるので、安全面に十分配慮した上で運動を行ってください。