心房中隔欠損症において自然閉鎖は期待できる?

2018/1/31

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

心房中隔欠損症は、生まれつき心臓の一部(心房)に穴があいている症状です。小さいころは自覚症状がなく、大きくなって初めて穴があいていることに気づくこともあります。この記事では、心房中隔欠損症の症状とともに、心臓の穴は治療しなくても自然にふさがるのかどうかについて解説します。

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心房中隔欠損症とは?

心房中隔欠損症は、心臓の中にある心房の壁に穴がある病気です。お腹の中にいるときは自力で呼吸する必要がないため、左右の心房に血液の通り道となる穴があいていますが、生まれてから数時間経つと穴がふさがります。
しかし、心房中隔欠損症の人の場合、出生後も穴がふさがらないままに成長してしまいます。心臓の壁に穴があいているため、心臓内の血液の流れが正常に行われず、右心房、右心室、肺の血流量が通常よりも多くなります。肺がうっ血した状態になるため、疲れやすい、息切れが起きやすい、呼吸器感染症にかかりやすいといった症状があらわれます。

心房中隔欠損は自然閉鎖する可能性があるって本当?

心房中隔欠損症は、ほとんどの場合幼児期や学童期に発見されます。しかし、幼いときは症状があらわれなくても、大きくなって初めて症状が出て心房中隔欠損症だとわかることもあります。成長するにつれて、全身を巡る血液が必要量を満たさなくなると、心不全の症状が出てきます。
心房中隔欠損症が見つかった場合は、時間の経過で自然に閉鎖することもありますが、その確率は低く、また、必ずしもふさがるとは限りません。心房中隔欠損症の状態が続き、肺動脈圧が高くなり過ぎてしまうと、心不全の病状が重くなって治療が難しくなります。心房の穴が大きい場合、症状がひどくならないうちに治療することが大切です。

心房中隔欠損の治療法と治療後の注意点について

心房中隔欠損症の治療は、カテーテルを使って心臓の穴に閉鎖栓を運び、穴を塞ぎます。穴がしっかりふさがるまで時間がかかるため、しばらくは心臓の様子を見ながら生活する必要があります。
まず、血液を固まりにくくする抗血小板薬を最低でも6カ月間服用します。また、心臓の中の傷に感染を起こさないよう、抗生物質を服用することもあります。
そのほか、運動に気をつけることも必要です。心臓の負担になるので、激しい運動は控え、胸を強打するような運動(柔道、相撲、ラグビーなど)は、手術で取り付けた閉鎖栓が外れてしまう恐れがあるため行わないようにします。

おわりに:自然治癒ではなく、治療で心房中隔欠損症の穴をふさいだほうがよい

心房中隔欠損症は、生まれつき心房の壁に穴がある状態です。自然にふさがることもありますが、その可能性は低く、また、完全にふさがるかどうかはわかりません。このため、治療できちんとふさぐことがとても大切です。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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