O157感染症と溶血性尿毒症症候群の治療と予防方法とは!?

2018/1/29 記事改定日: 2018/8/9
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

溶血性尿毒症症候群という病気を知っていますか?溶血性尿毒症症候群は、O157感染症の合併症であり、ひどいときには命に危険が及ぶおそれがある病気です。
この記事では、O157感染症と溶血性尿毒症症候群の治療法と予防対策について解説しています。

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溶血性尿毒症症候群はО157の合併症として発症する!?

溶血性尿毒症症候群は、特に子供に多く見られる病気であり、O157感染症などの合併症として引きおこされます。以前は死亡率の高い病気でしたが、現在は95%以上の症例で救命可能とされています。

発症後、最初に発熱や激しい腹痛、水様性の下痢、血便といった胃腸炎の症状が現れ、続いて、動悸や貧血症状、点状出血斑、尿が出ない、むくみ、高血圧がみられるのが特徴です。これは、腎臓の機能低下にともない、本来なら尿から排出される老廃物が血液中に残ってしまうことで起こる症状であり、進行すると尿毒症を起こし急性腎不全を発症することもあります。

血管に障害が起こると、血小板が血管に集まって血栓をつくることに費やされ、血管を流れる血小板が減少します。さらに、血栓ができることで血管の内腔が細くなり、赤血球の通り道が狭くなるため、その血管内を通る赤血球が減少し、溶血性貧血が起こることもあります。

溶血性尿毒症症候群が疑われたら、どう対処すれば良い?

胃腸炎の段階では、下痢や嘔吐などのため脱水症状に陥りやすいので十分に水分を補給します。強い下痢止めは、O157やベロ毒素が体から排泄されるのを遅くする可能性があるため、使用すべきではないとされています。抗生物質の使用については意見が分かれています。これは強力に大腸菌を殺菌すると毒素の放出が促進される可能性があるからです。しかし、発症から3日以内に抗生物質を使用すると溶血性尿毒症症候群の発症を抑えられることがわかっています。胃腸炎の症状があるときは放置せずになるべく早めに病院を受診することが大切です。

溶血性尿毒症症候群になった場合は2週間ほどの入院治療を行い、貧血症状が強い場合には輸血が、急性腎不全になった場合には一時的な人工透析が必要です。
透析の方法は、お腹の膜を使う腹膜透析と、血液透析器(ダイアライザー)使った血液透析があります。腎臓の機能がもどるまで透析を行い、老廃物を血液から除きます。毒素などを排除するため血漿交換を行うこともあります。

原因菌 ― O157(腸管出血性大腸菌)とは!?

O157は、腸管出血性大腸菌感染症の原因となる代表的な細菌です。腸管出血性大腸菌はベロ毒素という毒素を放出して下痢や腹痛を引き起こすとともに、合併症として溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症(けいれんや意識障害)の危険を有します。感染力は非常に強く、100個程度のO157が身体の中に入っただけでも発症するといわれています。O157は家畜などの糞便中にときどき見られ、糞便や糞便で汚染された水、食物を介して、人の口に入りO157感染症を起こします。

O157感染症の代表的な症状は下痢、腹痛です。感染者の約半数は、4~8日の潜伏期間の後に、激しい腹痛を伴った下痢を頻繁に起こし、まもなく血便が出ます。
成人では感染しても、無症状だったり、軽い下痢で終わる場合があります。しかし、その場合でも便にはO157が混じって排泄されているため、周囲に感染を広げないよう十分な注意が必要です。

溶血性尿毒症症候群を予防するにはどうすればいい?

溶血性尿毒症症候群の発症を予防するためには、O157をはじめとする腸管出血性大腸菌への感染を予防することが大切です。
具体的な予防策として、以下のような対策が必要です。

  • 肉類は中心部までしっかり火を通してから食べる
  • 生の肉類を使用した菜箸や包丁、まな板などの調理器具は適宜洗浄して、他の食材に触れないようにする
  • サラダ用野菜など生食する食材もしっかりと水で洗浄する
  • 焼き肉やバーベキューを行うときは、菜箸やトングの使いまわしをしない
  • 手洗い、手指消毒をこまめに行う
  • 家族に感染者がいるときには便座やドアノブ、水洗レバーなどもアルコール消毒する

また、上記でも説明しましたが、腸管出血性大腸菌に感染した場合でも、発症から3日以内抗生物質を服用すれば溶血性尿毒症症候群の発症を大幅に抑えることができるとされています。下痢や発熱などの症状がある場合には無理をせずに早めに病院を受診するようにしましょう。

おわりに:発熱、腹痛、嘔吐、血便を伴う下痢のときは、すぐに病院へ。予防対策も忘れずに

発熱とともに腹痛、下痢(とくに血便を伴うもの)、嘔吐がみられたら、病院を受診して便の細菌検査を受けましょう。もしO157が検出されたら、完治するまでこまめに医師の診察を受けてください。
また、溶血性尿毒症症候群が回復して退院した場合も、長期にわたって腎臓の障害が残ることがあるので、長期間の定期的診察を受ける必要があります。
まずはO157感染症を予防することが大切なので、手洗いや食べ物や飲み物の管理を徹底しましょう。

※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。

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