ダンピング症候群になったら気をつけたい食事の仕方とは?

2018/2/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ダンピング症候群は、吐き気や嘔吐、発汗といった症状が出てくる病気で、胃を切除したことがある人が発症する病気です。この病気を予防するためには、食事面で気をつけるとよいと言われていますが、具体的にはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。この記事で詳しく解説します。

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ダンピング症候群の基礎知識

ダンピング症候群とは、胃の切除が原因の病気です。健康な胃で発症することはなく、たとえば胃がんで胃の一部を切除したことがある人にのみ起こる病気です。切除した人の約3割に発症すると言われています。
ダンピング症候群の症状は、吐き気やおう吐などの消化器の症状と、動悸や発汗などの循環器の失調症が挙げられます。胃が健康な場合、食べ物は少しずつ胃の中で攪拌(かくはん)されて腸に送られます。しかし、胃の一部が切除されると食べ物が一気に腸に送られてしまうため、このような症状があらわれます。
ダンピング症候群には、食後30分以内に発生する早期ダンピング症候群と、食後2~3時間後に発生する後期ダンピング症候群があります。早期ダンピング症候群の場合、腹痛や心拍数の上昇、発汗やおう吐、吐き気などが主な症状で、体内を循環する血液量の減少や、消化管ホルモンが一気に分泌されることが原因で発症します。一方、後期ダンピング症候群の場合、冷や汗、めまい、空腹感や脱力感といった症状があらわれます。こちらは一過性の高血糖状態を改善するためにインスリンが過剰に分泌され、結果として低血糖状態になることが原因で発症します。

発症を防ぐための食事面での注意点とは?

ダンピング症候群の発症を防ぐためには、食事にかける時間や量、メニュー、そして食後の過ごし方に気をつける必要があります。
まず、食事は30分以上かけてゆっくり食べるのが望ましいです。そうすれば、小腸へ食事が一気に流れ込むのを防ぐことができます。また、一時的な高血糖状態を防ぐことにもつながります。
また、食事の量が多くなると、それだけ胃の機能に負担がかかりやすくなります。このため、一度にあまり食べ過ぎず、何回かに分けて少しずつ食べるようにしましょう。そして、食事のメニューも脂質や油など、胃に負担がかかるものは避け、辛いものや刺激物も控えてください。一方で、チーズやヨーグルトなどの乳製品は、予防に適していると言われています。
最後に食後の過ごし方ですが、座ったままの姿勢でいると、胃から小腸への食べ物の流れ込みが速くなってしまうので、上半身を少し高めにした体勢で横になると、流れ込むのが緩やかになるので症状を抑えることができます。

「以前のように・・・」と無理をして食べ過ぎないことが大切

胃を一部切除してしまった場合、その機能は手術前と同じというわけにはいきません。その影響のひとつとして出てくるのがダンピング症候群ですから、発症を予防するためには以前と同じ食習慣を避けることが大切です。先にも述べたとおり、食事量やそれにかける時間、その内容などに気を使えば、症状の発症を予防することは可能です。
そして、一度にたくさん食べ過ぎないことが重要です。たくさん食べたいときは、食べ物を小分けにして、間隔を空けて複数回に分けて食べるようにしましょう。食べるときはゆっくり時間をかけ、しっかりと噛んで、できるだけ胃や腸に負担をかけないことも大切です。また、あらかじめ避けた方が良い食べ物と、積極的に食べても問題ないものを把握しておくことも大切です。

おわりに:自己管理でダンピング症候群を予防しよう

入院中は栄養士が作成した食事を摂ることができますが、退院後は食事の量や内容などを自分で決める必要があります。自己管理が必要になるぶん、大変になりますが、ダンピング症候群を引き起こさないために欠かせないことです。工夫しながら続けていきましょう。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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