記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/9 記事改定日: 2018/6/5
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
胆石症とは、肝臓から分泌される胆汁の成分が、胆のうや胆管などで固まって石(結石)ができてしまう病気です。
この記事で、胆石の内科的治療法と外科的治療法について解説します。それぞれの特徴や注意点についても説明していくので、治療法を迷っている人や胆石の治療について知りたいという人は参考にしてください。
胆石症とは、肝臓から出される胆汁の成分が胆のうや胆管などで固まってしまう病気です。胆のうや胆管に石(結石)ができ、痛みなどの症状を引き起こします。
胆石ができる原因には、高エネルギー、高コレステロールの食事を続けることなどがあり、このような食事と続けることで胆汁中のコレステロール量が増加し、過剰なコレステロールが溶かされないまま結晶化したものが胆石になると考えられています。。
胆石症の代表的な初期症状は、背中に違和感があることです。油分を多く含んだ食事をとってから数時間後に、腹部の右上やみぞおちのあたりに不快感を覚えたり、軽い痛みが出たりします。
悪化すると、お腹から背中の部分の鈍痛や、疝痛発作と呼ばれる激痛に襲われたり、発熱や黄疸がみられたりします。ただし、胆石症の方の大半は、自覚症状がみられないといわれているので注意が必要です。
胆石症の治療では、手術療法が最初に選択される治療法です。胆石による痛みの症状が出てきた場合、早めの手術療法が必要です。
胆石症の代表的な手術療法として
があります。胆管内にも石が落下しているかや炎症の程度、開腹手術を受けたことがあるか否か、呼吸、循環器などの併発症があるか否かによって、どちらの手術療法が患者さんに適合するかは異なります。
腹腔鏡下胆のう摘出術は、
という流れで進められます。
ただし、腹腔鏡下胆のう摘出術は全ての人に適用可能な術式ではありません。過去に胃や腸の手術を受けたことがある人はお腹の中に癒着がみられることもあり、その場合は手術が難しくなることがあります。
開腹手術ではみぞおちから右わき腹にかけて15~20cmほど腹部を切開して胆のうを摘出します。
胆石症の手術療法を受けた後も注意すべきことがあります。手術直後の痛みは、時間とともに和らいでいきます。
仕事は事務職であれば術後5日〜7日程度、力仕事の場合には2〰3週間程度後であれば復帰できます。過激な運動は、2〰3週間は控えましょう。
油分が多く含まれた食べ物を多く摂ると消化が遅れることはありますが、大きな問題となることはほとんどありません。ただ、ごくまれに胆石が再発する危険性もあることは留意しておきましょう。再発でも、手術前と同じような症状があらわれたり、腹痛や膵炎などが起こります。
油ものの制限は不要とされていますが、摂取量が多くなれば再発の可能性は上がります。健康のためにも油の摂り過ぎには注意しましょう。
胆石症の内科的治療の代表的なものとして、胆汁酸溶解療法や、体外衝撃波粉砕療法があります。
内科的な治療でまず行われるのは薬物を使用した胆汁酸溶解療法です。
これは、ウルソデオキシコール酸などの胆汁を溶かす作用を持つ薬を内服し、胆石の縮小化や消失を促す治療法です。内服治療ですので、体に大きな負担をかけることはなく、健診などで偶然発見された症状のない初期の胆石に対して広く取り入れられている治療法です。
しかし、効果は人によって大きく異なり、胆石が完全に消失するのは20%以下とされ、再発も生じやすいという欠点があります。また、コレステロール胆石には効果がありますが、色素胆石や石灰化が著しい胆石には効果が少ないと言われています。
体外衝撃波粉砕療法は、体の外から衝撃波を当て、胆石を細かく砕く治療法です。衝撃波が当たるときにやや痛みはありますが、体に傷を残すことなく胆石の治療を行うことができ、胆汁酸溶解療法でも消失しなかった胆石に対しても効果が期待できます。
しかし、胆石が2㎝以上の場合や複数個ある場合には繰り返しの治療が必要であり、衝撃波で粉砕し切れないものもあります。また、完全に粉砕できたとしても再発する可能性もあるので、根治的な治療とは言えないでしょう。
内科的治療法は結石の種類や大きさ、数および胆のうの状態などによってできない場合もあります。
たとえば、胆汁酸溶解療法は胆石が溶解するまでに1年程度の必要ですし、再発の可能性もあります。また、体外衝撃波による治療では、胆石の完全消失は非常に困難なため、根治することが難しいという点に注意する必要があります。
胆石が疑われたときには、まず腹部超音波検査が行われます。超音波検査は胆のうや胆のう内部の結石を描出しやすく、外来で簡便に行うことができる検査です。また、同時に肝機能や胆道系酵素などに異常がないか血液検査で調べることが多いでしょう。
そして、胆のう周囲の炎症や胆管の詰まりなどを観察するためにCT検査やMRI検査が行われます。特にMRIでのMRCPは胆道と膵臓の膵管を描出することができ、胆石がどこかに詰まっていないかを正確に把握することができます。
かつては、内視鏡を十二指腸まで挿入して、胆管と膵管を造影する検査(ERCP)も広く行われていましたが、今ではMRIの普及と精度の向上により、より正確なMRCPが行えるようになったので、ERCPは行われなくなってきました。
胆石症は、薬や衝撃波などを使った内科的な治療法が行われることもありますが、再発を防ぐという観点から、手術を第一選択として検討する病院が多いといわれています。どのような手術を行うか、費用や治癒までの期間は個々の症状や状態、病院によって変わりますので、医師の見解をしっかり聞くようにしましょう。