記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
盲腸(急性虫垂炎)が悪化して虫垂が破裂してしまうと、合併症として敗血症を発症してしまうことがあります。この記事では、敗血症とはどんな病気かについて解説しています。急性虫垂炎を放置するリスクについても触れているので参考にしてください。
盲腸(急性虫垂炎)は、虫垂に化膿性の炎症が起こる病気です。なお虫垂とは、盲腸の先から突き出た管状の器官です。
盲腸になると激しい腹痛や吐き気、発熱の症状が現れます。発症のピークは10~20代ですがどの年齢層でもみられ、男女差はありません。
盲腸を放置すると、虫垂の壁に穴があき虫垂の中に溜まった膿が外に漏れ出します。膿には大量の細菌が含まれているため、腹腔から次々と炎症を起こします。この状態が腹膜炎です。腹腔全体に炎症が及んだ場合には、敗血症に陥る可能性があり、死の危険も伴います。
敗血症は、細菌をはじめとする様々な病原体が感染することにより全身に過剰な免疫反応が起きている状態と考えられています。
症状としては、発熱あるいは低体温、頻脈、多呼吸、白血球数増加あるいは減少などが挙げられます。治療の効果が十分でないと敗血症性ショック、さらには多臓器不全に進み、死に至ることがあります。
しかし健康な人がいきなり敗血症になることはありません。敗血症は、生体のある部分で感染症を起こしている場所から血液中に病原体が入り込み、重篤な全身症状を引き起こすものです。悪性腫瘍、血液疾患、糖尿病、肝・腎疾患、膠原病といった基礎疾患がある場合、あるいは未熟児や高齢者、手術後などの発症例が多いといわれています。
また、抗がん薬投与や放射線治療を受けて白血球数が低下している場合や、副腎皮質ホルモン薬や免疫抑制薬の投与によって免疫機能低下している場合でも敗血症が起こりやすくなります。
原因となる細菌がわからない場合は、細菌が死滅する可能性を高めるために2~3種類の抗菌薬を同時に使用することが多いといわれています。その後、検査結果が出てから、感染を引き起こしている細菌に対して最も効果的な抗菌薬に切り替えます。
敗血症性ショックが起こっている場合は、静脈から大量の輸液も行い、血流の量を増やして血圧上昇をはかります。投与する輸液の量が少なすぎると効果は得られず、多すぎると重度の肺うっ血を生じることがあります。
全身状態が悪化して酸素供給が保たれなくなった場合に行われます。マスク、鼻カニューレや気管内チューブなどで酸素吸入を行い、必要に応じて人工呼吸器を使用して呼吸を補助することがあります。
膿瘍がある場合は膿を排出し、感染の原因と思われるカテーテルやチューブなどを医療器具は取り外しや交換を行います。感染または壊死した組織を手術で除去することもあります。
敗血症は、細菌などの病原体による感染で起こる病気です。虫垂の破裂によっても発症するおそれがあり、放置すれば命に関わりかねません。特に高齢者は抵抗力が低いため発症しやすいといわれています。急性虫垂炎と思われる症状があるときは、敗血症の合併を避けるためにも、早めに受診するようにしましょう。