記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/2/21 記事改定日: 2019/7/2
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腸閉塞(イレウス)は、何らかの原因で腸が詰まってしまったために、消化した食べ物やガスが出なくなってしまう症状です。腸閉塞(イレウス)を発症したときの治療法として、絶食や安静にする保存的治療のほかに、高気圧酸素治療があります。それぞれどのような治療を行うのか、以下で解説します。
人間が食べたものは、胃から腸を通って肛門から排泄されますが、何らかの原因で排出されないことがあります。この状態が腸閉塞(イレウス)で、機械性イレウスと機能的イレウスに分類されます。
腸閉塞(イレウス)を発症すると、内側から腸に圧力がかかって膨張し、腸壁を通して水が漏れ出すだけでなく、腹部膨満感が出てきます。
また、急性・慢性の痛みを伴うことが多く、便やガスがまったく出なくなったり、腸から水分を吸収できないので脱水状態になったりすることがあります。
重症になると血行が阻害され、腸が壊死したり、穴が開いたり(穿孔と言います)します。
腸閉塞(イレウス)を治療するには、まず安静にして腸に負担をかけないようにします。また同時に、絶食して口から食べ物を入れないようにします。不足している水分や栄養分は、点滴で補給するのが一般的です。
こうした保存的治療でも、軽度のイレウスであれば治療できます。
保存的治療で治らない場合は、胃や小腸にチューブを挿入して内容物を吸引し、腸にかかっている圧力を下げます。また、保存的治療を1週間ほど続けても効果がみられないときは、外科手術を行います。
繰り返しイレウスが再発する場合や、がんなどの腫瘍に圧迫されている場合も、外科手術で原因を取り除きます。内臓がねじれて壊死を起こしそうなときは、ただちに手術を行わないと危険です。なお、症状が治まったら緩下剤などを服用して、再び中身が詰まらないようにすることもあります。
腸閉塞(イレウス)の治療法のひとつに、高気圧酸素治療があります。これは患者をカプセルに入れ、カプセル内を高圧の酸素で満たすことで病気を治療する方法です。
具体的には腸閉塞(イレウス)のほか、急性心不全や一酸化炭素中毒、脳塞栓や突発性難聴などの治療に用いられます。また、腸閉塞(イレウス)の原因ががんの腫瘍だった場合は、放射線治療や抗がん剤を併用することもあります。
患者がカプセルに入ったら約15分かけて徐々に加圧し、2~2.5気圧に達したらそのまま1時間ほど様子をみます。外気圧と比べて内臓の圧力が低下することと、腸の虚血に晒されていた部分が酸素を取り戻すことで動きやすくなり、便やガスの排泄が期待できます。その後、ふたたび約15分かけて徐々に減圧していきます。カプセルは圧迫感がないよう工夫されていますが、閉所恐怖症や認知症の方は利用できません。
高気圧酸素治療は1回でも効果がありますが、ほとんどの方は複数回の治療が必要とされます。ただし、癒着がある場合は再発の可能性があるため、根治させるには手術が必要となります。
腸閉塞(イレウス)にはいくつかのタイプがあり、腸管の一部が捻じれることによって発症する「絞扼性腸閉塞」、腸管同士や腸管と周辺の組織が癒着することによって発症する「単純性腸閉塞」などに細かく分けられます。この二つのタイプの腸閉塞は、放置すると腸管の血行が悪化して腸管壊死を引き起こしたり、再発を繰り返したりすることがあります。
このため、手術によって腸管の捻じれや癒着を治す必要があるケースも少なくありません。また、進行した大腸がんなどでは腸管が完全に閉塞することで腸閉塞を発症することがあり、このような場合には大腸がん自体の切除や手術できない場合は人工肛門などを造設する手術を行うこともあります。
腸閉塞(イレウス)を発症した場合の治療法には、絶食して安静にする保存的治療のほかに、高圧の酸素を使った高気圧酸素治療が行われます。高気圧酸素治療はカプセルの中に入って受ける治療のため、閉所恐怖症の方や認知症の方はできませんが、圧力によって腸の中にたまっていた便やガスの排泄を促す効果が期待できます。