慢性膵炎による糖尿病は普通の糖尿病とどう違うの?

2018/3/1

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

慢性膵炎は、膵臓に何度も炎症が起こったために膵臓の組織が壊れて線維化を起こす病気です。この記事では、慢性膵炎による糖尿病が一般的な糖尿病とどのような点で異なるのかについて解説します。

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慢性膵炎が進行すると糖尿病を発症するって本当?

慢性膵炎は膵臓に繰り返し炎症が生じたために膵臓の組織が壊れ、繊維が増えて硬くなる線維化を起こす病気です。膵臓の働きが低下して膵液が十分に分泌されなくなるため、食物の消化吸収がうまく出来なくなって腹痛や背部痛が生じます。進行すると膵臓の機能が低下し続け、消化不良を伴う下痢や体重減少のほか、糖尿病の発症や悪化を引き起こします。慢性膵炎は男性の場合は長年にわたるアルコール過剰摂取が原因というケースが多く、女性の場合は原因不明の突発性の慢性膵炎が多いとされます。
慢性膵炎の痛みは、膵液の通り道である膵管が細くなることや、膵管の中に膵石が出来るなどして膵液の流れが阻害されるために起こると考えられています。治療では、内視鏡を使って細くなった膵管を広げたり、膵石が生じていたら取り除いたりするほか、衝撃波を体外から当てて結石を砂状にする体外衝撃波結石破砕術を併用した治療が行われることもあります。こうした治療でも痛みが治まらない場合は、手術による治療が選択されます。
慢性膵炎になると、炎症によって膵臓の破壊が進むため、糖尿病を引き起こしたり、悪化させたりする原因にもなると言われています。

慢性膵炎による糖尿病の特徴について

膵臓にはランゲルハンス島という内分泌機能を持つ細胞集団が散在しており、血糖を上昇させるグルカゴンと血糖低下を担うインスリンを分泌し、血糖コントロールを行っています。
一般的な2型糖尿病の場合、インスリン分泌は低下する反面グルカゴン分泌が増えます。しかし慢性膵炎による糖尿病の場合、グルカゴン分泌も低下して1日の血糖値の変動が大きくなります。また低血糖にもなりやすく、見かけは血糖コントロールが良好でも、消化酵素薬によって消化吸収が改善すると糖尿病が悪化する恐れがあると言われています。
慢性膵炎から発症した糖尿病は、通常の糖尿病と比べて網膜症の合併症が起こる頻度は低いことが判明しています。ただし、血糖コントロールが難しい糖尿病であるため、慢性膵炎の炎症を広げないよう医師の指導をしっかり守って治療を続けることが重要になります。

慢性膵炎による糖尿病の発症はどうやって検査するの?

慢性膵炎による糖尿病の発症を調べる検査には、BT-PABA試験とも呼ばれる膵外分泌機能検査があります。
BT-PABA試験(膵外分泌機能検査)は、膵外分泌酵素α-キモトリプシンによって分解される合成基質BT−PABAベンチロミドを経口投与することで、その分解産物であるパラアミノ安息香酸が尿中に排泄される量を測定して膵外分泌機能を調べます。

おわりに:慢性膵炎による糖尿病は血糖コントロールが難しいのが特徴。症状を悪化させないよう治療することが大切

慢性膵炎による糖尿病は、一般的な糖尿病と違って網膜症といった合併症を発症しやすい反面、血糖コントロールが難しいと言われています。糖尿病を発症させないためには、医師の指導のもと慢性膵炎の治療をしっかり行うことが大切です。

厚生労働省 の情報をもとに編集して作成 】

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