記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/3/9
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
脳の血管に血栓ができてしまう「脳血栓症」という病気があります。今回はこの脳血栓症について、特徴的な症状や治療法を解説します。
脳血管障害には、脳出血などのように脳の血管が破れてしまうタイプと、脳梗塞などのように脳の血管が詰まって血流が悪くなるタイプがあります。
脳血栓症の初期症状としては、血流の悪くなる脳の部位によって症状が異なりますが、ろれつがまわらない、片手に力が入らず食事中によく箸を落とす、片方の手や足にうまく力が入らない(または痺れる)、片足を引きずって歩く、食事中によくむせる、つまずきやすくなる、名前や言葉がなかなか出てこない、片目が見にくくなり視野が半分になる、などが挙げられます。
症状が進行すると、手や足の麻痺や、言いたい言葉が出ない、または言っていることが理解できないという言語障害を起こします。さらに進行すると、意識が朦朧としたりけいれん発作を引き起こしたりします。
脳梗塞は、安静時や朝起きた時に発症し、数時間から数日間かけて徐々に進行することが特徴です。そのため、早期発見および早期治療が後遺症を残さないために非常に重要となってきます。
まず、発症から4〜5時間以内であれば、血栓溶解療法(t-PA療法)を行うことができます。これは組織プラスミノーゲンアクチベータ(t-PA)というお薬を静脈内から注入し、血栓を溶かす治療です。副作用に脳出血のリスクがあるものの良好な治療効果が期待できます。
発症から6時間以内の場合には、動脈内血栓溶解療法が適応となります。これは、詰まっている血管の手前までカテーテルを入れ、ウロキナーゼという血栓溶解薬を注入する方法です。ただし、症状が比較的軽度でないと行うことができず、治療の適応範囲が狭いというデメリットがあります。
t-PA治療で効果がなかった場合や、発症から8時間以内の場合には、特殊な機器を使用して直接血栓をとる血管内治療が行われます。また、発症から48時間経過した場合には、薬物治療がメインになります。
脳血栓症に用いられる主な治療薬は、抗血栓薬、抗凝固薬、脳保護薬です。ただし、発症から5日以上経過している場合には抗血栓薬のみでの治療しか行えません。また、麻痺の改善や日常動作の回復にはリハビリテーションが必要不可欠です。そのため、これらの治療と並行してリハビリテーションも行っていきます。
進行すると、言語障害や麻痺などの重篤な症状につながる脳血栓症。しかし、早いうちに治療できれば、発症前と同等の日常生活レベルに戻ることができます。当てはまる初期症状がみられる、あるいは家族に指摘されたことがある場合には、早めに病院を受診してください。