記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2025/12/17
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
動物由来感染症には、200以上の種類があるといわれていますが、感染の機会が多いおもな種類はある程度しぼることができます。また、動物由来感染症の予防対策や感染したときの対策などの注意点にも、ある程度共通する点があります。この記事では、動物由来感染症のおもな種類と、感染に注意が必要な理由などについて解説していきます。
動物由来感染症とは、動物から人間へうつる感染症のことで、「人獣共通感染症」や「ペット感染症」と呼ばれることもあります。感染源となる動物に触れたり、傷つけられたりすることで感染する「直接伝播」と、何らかの媒介を経て感染する「間接伝播」により感染します。なお、間接伝播は、蚊など他の動物による媒介、感染源によって汚染された水・土などを介した環境媒介、感染源に汚染された食品を食べることで感染する食品媒介に分けられます。おもな動物由来感染症として、以下が挙げられます。
トキソプラズマ症とは、猫の糞に寄生するトキソプラズマ原虫が原因となる動物由来感染症です。感染した場合でも、健康な人であれば無症状なことも多いといわれています。一般的には抗菌薬などで治療を行いますが、妊婦が初感染した場合には流産する可能性や胎児に重大な影響を及ぼす可能性があるといわれています。
エキノコックス症とは、キツネや犬の糞に混じったサナダムシの卵が原因となる動物由来感染症です。感染すると体内でふ化した幼虫が肝臓で成長し、感染から5〜10年後に肝機能障害に陥る恐れがあります。
オウム病とは、オウムやインコ、カナリアなどの小鳥の糞・唾液に生息するクラミジア菌による動物由来感染症です。乾燥した糞を吸い込んだり、鳥のくしゃみ・口移しをきっかけに感染します。感染すると、発熱・頭痛・倦怠感などの風邪・インフルエンザのような症状が現れます。
猫ひっかき病とは、猫や犬にひっかかれたり咬まれたりした場合、または、ノミの媒介によってバルトネラ菌に感染したときに発症する動物由来感染症です。傷口が化膿するなどの症状が現れ、体が弱っている状態ではリンパ節が腫れたり、髄膜炎の症状が現れたりすることもあります。
パスツレラ症とは、猫や犬にひっかかれたり咬まれたりした際にパスツレラ菌に感染することで起こる動物由来感染症です。ほとんどの猫・犬は、パスツレラ菌を保有しているといわれています。通常は軽い炎症程度ですみますが、悪化して敗血症を起こすこともあります。
Q熱とは、コクシエラ菌という細菌が原因の動物由来感染症です。感染すると、発熱・倦怠感・悪寒・筋肉痛などのインフルエンザに似た症状が現れる可能性があります。おもに猫から感染しますが、まれに犬からも感染する場合があります。
動物の糞などに混じる食中毒の原因微生物(サルモネラ菌など)に感染することで発症する動物由来感染症です。食品から感染したときと同様、下痢・腹痛・おう吐などの食中毒症状が現れます。
海外に比べて日本では動物由来感染症にかかる人は少ないといわれていますが、海外では新しい感染症が見つかっており、ペット・牧場・野生動物などによる動物とのふれあいで感染した例があり、日本人が海外で感染する例もあります。動物由来感染症を予防するには、おもに以下の注意が必要であり、ペットを飼っている人は、ペットとの接触に関して注意することが大切になってきます。
以上の予防対策をしていても感染する可能性はあるため、気になる症状や思い当たる行動があるときは、早めに医療機関を受診してください。また、最近では「ジビエ料理」を口にする機会もあると思います。適切に処理・管理・調理されたものは問題ありませんが、個人管理しているジビエに関しては注意しましょう。自然の環境下で育った動物・野菜(野草)には、さまざまな原因微生物のリスクがあり、十分に加熱していない状態で食べると感染リスクが高まります。ジビエを食べるときは、食材の出どころ・管理方法・調理方法を確認し、生食しないようにすることをおすすめします。
日本では動物由来感染症の発症数は少なく、適切に対策ができていればある程度感染を予防できます。ペットを飼っている人、旅行・観光などで動物と触れ合う機会がある人、自然が豊かな場所に出かけたときなどは対策をとるようにしてください。なお、日本に比べて海外は動物由来感染症の発症例も多く、新しい感染症も発見されています。海外旅行に行くときは、とくに注意しましょう。