葉酸が不足するとどうなる??葉酸に期待される意外な効果とは?

2018/3/29

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

葉酸は水溶性ビタミンの1種です。葉酸不足は胎児に悪影響があるとされていますが、どのような影響があるのでしょうか。この記事では、葉酸不足が招く体への影響について解説しています。一日の推奨摂取量の紹介もしているので、栄養管理に役立ててください。

葉酸サプリの摂取は厚生労働省も奨めています

葉酸は、水溶性のビタミンB群の一種で、お母さんと赤ちゃんの健康のために欠かせない栄養素です。妊娠初期に葉酸が不足すると、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクが高まることが多くの研究から分かってきました。神経管閉鎖障害とは、脳や脊髄などの中枢神経系の元となる神経管が作られる際に発症する先天異常のことです。

妊娠初期である4~5週頃は胎児の細胞増殖が活発なため、この時期に葉酸摂取が不足すると神経管閉鎖障害の発症リスクが高まるといわれています。神経管閉鎖障害のリスクを低減させるためには食事での葉酸摂取を心がけることはもちろん、不足分をサプリメントで摂取することが重要です。厚生労働省は、葉酸には胎児の神経管閉鎖障害発症リスクを低減できる可能性があるとして、特定保健用食品の関与成分として認めています。また、妊娠の可能性がある女性はサプリメントで葉酸を摂取するよう2000年に通知を出しています。

葉酸が不足するとどうなる?

葉酸は腸内で合成されるため、通常の食事をしていれば不足することはほぼありませんが、妊娠中の女性や、お酒を飲む人、ピルやアスピリンや抗がん剤を使用している人は不足しやすくなる傾向があります。葉酸が不足すると赤血球がうまく作ることができなくなるため、結果的に貧血になりやすくなってしまいます。貧血の主な原因は鉄分の欠乏ですが、葉酸不足が原因の貧血は酸素を運ぶヘモグロビンが足りていても貧血となるため、悪性貧血と呼ばれています。また、葉酸が不足すると血液中のホモシステインという成分の量が増加し、動脈硬化の原因となります。他にも、腸管粘膜、口内、舌に炎症が起きやすくなります。

葉酸が動脈硬化を予防するって本当?葉酸の効果について

葉酸には、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させる以外にもさまざまな効果があります。代表的なものを3つご紹介します。

一つ目が、成長を促進する効果です。葉酸には、たんぱく質や核酸の合成をサポートする役割があります。核酸とはDNAやRNAの総称で、遺伝情報を持ち、その情報通りに体をつくる指令を出しています。DNAの合成が正常に行われることで、新陳代謝や成長を促進します。
二つ目が、貧血を予防する効果です。葉酸は、赤芽球という赤血球のもととなる成分を作り出すサポートをする役割があります。赤芽球が正常に作られれば、赤血球も正常に作られるため、貧血予防につながります。
三つ目が、動脈硬化を予防する効果です。葉酸は、ホモシステインというアミノ酸をメチオニンやシステインに変換する働きがあります。葉酸が不足してしまうと血液中のホモシステインの量が増えることで、血液凝固や血管内皮細胞の機能に影響します。すると血栓ができやすくなってしまい、動脈硬化が起こりやすくなります。葉酸を摂ることホモシステインがメチオニンやシステインに変換されるために動脈硬化の予防の効果が期待できると考えられています。

葉酸はどのくらい摂取すればいい?

日本人の食事摂取基準(2015年版)では、葉酸摂取の推奨量は成人の場合240μg/日とされ、葉酸の耐用上限量は1,300-1,400μg/日となっています。サプリメントなどを大量に摂取すると耐用上限量を超えることになるので注意が必要です。葉酸の過剰摂取はビタミンB12欠乏症を診断しにくくするといわれています。適切な摂取量を守りましょう。

厚生労働省ホームページをもとに編集して作成 】

おわりに:妊娠初期にはサプリメントで葉酸摂取を

葉酸には、胎児の神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させたり、動脈硬化を予防したり、さまざまな作用があり、胎児から高齢者・シニアまでの健康維持に役立つ可能性があります。厚生労働省も特定保健用食品の関与成分として認めています。特に、妊娠初期の葉酸が不足しやすいときには、サプリメント等を活用してしっかりと摂取するようにしましょう。

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