糖尿病だと感染症になりやすい理由は?どうすれば感染を防げる?

2018/5/5 記事改定日: 2020/5/25
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

中高年以降から患者数が増える糖尿病は、発症すると感染症にかかりやすくなります。
この記事では、糖尿病の人が感染症にかかりやすくなる理由と、糖尿病の人の感染症対策について解説していきます。

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糖尿病だとなぜ感染症になりやすいの?

糖尿病患者は、風邪や肺炎、結核、膀胱炎、腎盂腎炎などの感染症になりやすく、また重症化しやすいといわれています。
とくに糖尿病患者はインフルエンザや肺炎による死亡リスクが高いことが知られており、日本人の糖尿病患者の死因の約14%が感染症によるものというデータもあるほどです。

糖尿病の人が感染しやすい理由

糖尿病患者が風邪や肺炎などに感染しやすくなる理由としては、以下のことが挙げられます。

免疫力の低下

糖尿病により高血糖の状態が続くと、白血球(特に細菌を食べてくれる貪食(どんしょく)好中球)の機能が低下します。このため病原体が侵入しても防げずに感染に移行しやすく、免疫力も低下し、さらに感染しやすい状態になります。

血流の悪化

血糖値が高い状態が続くと細小血管の血流が悪化し、細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、回復が遅くなります。また白血球も感染部位に届きにくくなるため、感染症を起こしやすくなります。
血流が低下すると内臓の機能も低下するため、内臓の感染症(肺炎や膀胱炎)のリスクも高まります。

神経障害

高血糖の状態が続くと、変性した糖質が神経細胞に蓄積されることで神経の機能が低下して、内臓の活動が乱れやすくなります。また細小血管の血流も低下し、酸素不足に陥ることで痛みを感じる神経が鈍くなり、感染症に気づくのが遅れやすくなります。
糖尿病足病変は、神経障害と血流障害が原因で起こります。

薬の影響

経口糖尿病薬の中でもSGLT2阻害薬を投与している患者は、糖が尿中に余分に排出されるため、性器感染症や尿路感染症のリスクが高い傾向にあります。

手術

糖尿病患者は感染症を起こしやすい状態です。腰椎手術や変形性膝関節症などの手術をきっかけに感染症になることもあります。

糖尿病で感染症になると、血糖値も上がる?

感染症にかかると、体内では血糖値を上げるアドレナリンやサイトカインが分泌されます。健康な人であれば、これらの分泌に合わせてインスリンも分泌されますが、糖尿病患者はインスリンの分泌が障害されているため、血糖値は普段よりも上昇します。これにより糖尿病が悪化することで、さらに感染症も進行しやすくなるので注意が必要です。

糖尿病の人が感染症を予防するためにできる対策は?

糖尿病は上でも述べた通り、免疫力を低下させ、感染症にかかりやすくなる病気です。

糖尿病の人が感染症をできるだけかからないようにするには、適切な糖尿病治療を行って血糖値をコントロールすることが大切です。また、日ごろから手洗いや手指消毒など通常の感染対策を徹底して行い、インフルエンザなどの感染症が流行しているときはマスクを着用したり、不要不急の外出は控えたりするようにしましょう。

糖尿病は進行すると末梢神経障害を引き起こし、痛みなどを感じにくくなります。その結果、足先などの小傷から細菌が侵入して強い炎症が生じても発症に気づかず、最悪の場合壊死を引き起こして足を切断しなければならなくなることもあります。
糖尿病の人は足の爪の手入れなどを丁寧に行うようにしましょう。

おわりに:糖尿病患者は感染症リスクが大!未然に予防を

糖尿病患者は、高血糖状態の持続によって免疫力や血流などが低下しているので、感染症になりやすいです。感染症にかかると血糖値も上昇し、糖尿病自体に悪影響を与えるので、日頃からインフルエンザや肺炎球菌などのワクチン接種を受け、衛生管理を徹底しましょう。また、免疫を高めるためにはきちんと血糖コントロールすることも大切です。担当医と相談しながら、きちんとコントロールしていきましょう。

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