記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/4/27 記事改定日: 2019/3/28
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性的な耳鳴りには、めまいや吐き気、動悸、あるいは頭痛など、その他の症状を伴うケースも少なくありません。今回の記事では、これらの症状を招く原因となる病気や、何科を受診すべきかなどを解説します。
耳鳴りとめまいを引き起こす病気には以下のものがあります。
片耳の耳鳴りと難聴、回転性のめまい、吐き気や嘔吐、腹痛が見られる場合は「メニエール病」の可能性があります。メニエール病のめまい発作は激しく、突発的に起こるもので、30分〜4、5時間程度持続するのが一般的です。めまいがおさまると耳鳴りも治りますが、その後もめまい発作を繰り返すたびに、難聴は徐々に悪化していきます。30〜40代の女性の発症率の高い病気です。
メニエール病の原因ははっきりわかっていませんが、ストレスや疲労の蓄積、睡眠不足が発症のきっかけと考えられており、患者の内耳では内リンパ腔が腫れる「内リンパ水腫」が見られます。
このため治療では、利尿剤によって水分を排出したり、血流改善薬を処方したり、あるいは手術で内リンパ水腫に穴を開け、リンパ液を排出させることで回復を促します。また、めまいの原因である平衡感覚を調整する神経を切除する、前提神経切除術が実施されることもあります。
音が脳に伝わる経路に腫瘍や出血が起きることで、耳鳴りや浮動性のめまい、吐き気が起きることがあります。
普段、音は内耳で電気信号として変換され、蝸牛神経を通って脳へと伝達されます。また内耳には体の回転を感じる部分があり、その信号は前庭神経を通じて脳へと送られます。この前庭神経と蝸牛神経は脳の近くでまとまっているため、聴神経とも呼ばれます。
この聴神経に腫瘍ができたり、神経付近で出血が起きると、音と回転の信号の両方が阻害され、耳鳴りとめまいが発生することがあるのです。
脳腫瘍や脳出血が起きている場合は、両耳の耳鳴りやめまいだけでなく、激しい吐き気、嘔吐、手足のしびれなどが伴うことがあります。これらの異変が見られたら、すぐに病院へ行きましょう。
突発性難聴とは、名前の通り、前触れなく突然片耳の聴力が低下する病気のことです。
30代以降に多く発症し、明確な発症メカニズムは解明されていませんが、何らかのウイルス感染や内耳の血流悪化などが主な原因です。
突発性難聴では、聴力の低下以外にもめまいと耳鳴りを引き起こすことがあります。ウイルス感染による内耳の炎症や血流悪化によって、平衡感覚を司る内耳内の三半規管がダメージを受けることでめまいを発症し、内耳内の音を感知する神経が過剰に刺激されることで耳鳴りを発症すると考えられています。
突発性難聴は発症後早期から治療を開始することで治る可能性が高い病気ですが、治療が遅れた場合や、重症な場合には難聴・めまい・耳鳴りが後遺症としてのこることも少なくありません。
耳鳴りとめまいに加え、動悸と頭痛も見られる場合は、「自律神経失調症」の可能性があります。自律神経失調症は、過度なストレスや生活リズムの乱れ、環境の変化、女性ホルモンの変化などが原因で自律神経が乱れたことで起きます。症状は、耳鳴り、めまい、頭痛、動悸、ほてり、倦怠感、微熱、便秘や下痢、イライラ、抑うつ症状など多岐にわたります。
自律神経失調症を治療するには、栄養バランスのとれた食事をとる、十分な睡眠をとるなど生活習慣を改善し、ストレスの対処法を身につけることが大切です。専門外来では自律訓練法やカウンセリング、音楽療法、薬物療法などの専門治療を受けられるので、該当する症状が多ければ一度受診してみてください。
耳鳴りとめまいが見られたらまずは耳鼻咽喉科を受診し、耳そのものの異常が原因なのかを確認してもらいましょう。
もし耳鼻咽喉科で異常が見られなかった場合は、脳の病気が原因の可能性もあるため、脳神経外科か内科を受診してください(おそらく最初に診てもらった耳鼻科で紹介してもらえると思います)。
ここでも異常がない場合は、自律神経失調症と診断されることが多く、ストレス性の耳鳴りやめまいの場合、心療内科や精神科での治療が有効な場合もあります。
耳鳴りに加えめまいや吐き気、動悸などが見られるときには、メニエール病や自律神経失調症など、さまざまな病気が考えられます。併発する症状によって可能性の高い疾患は異なりますが、自己診断はなかなか難しいので、まずは耳鼻咽喉科や内科で検査を受けるところから始めましょう。