記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの産生量が少なくなったり、全く作られなくなってしまうことで起こる病気です。放置すると深刻な病気に発展する可能性がありますが、どのような原因で発症してしまうのでしょうか。
この記事では、甲状腺機能低下症の原因と早期発見のために注意することについて説明しています。
甲状腺は首の前部にあり、体の代謝を制御するホルモンを作りますが、何らかの原因で十分なホルモンが産生されなくなることを甲状腺機能低下症といいます。
幼児や思春期の子供を含む誰でも発症することがありますが、特に50歳以上の女性では、男性よりも甲状腺機能低下症になる可能性が高くなっています。未治療のまま放置すると、肥満、関節痛、不妊症および心臓病を引き起こします。
甲状腺機能低下症の最も一般的な原因は、慢性甲状腺炎(橋本病)と呼ばれる自己免疫疾患です。
甲状腺機能低下症を引き起こす主なものには、以下の要因があります。
高齢女性や、妊娠または妊娠の可能性のある女性では、定期的な甲状腺機能低下症のスクリーニング検査が推奨されます。
自己免疫疾患が原因で生じる甲状腺機能低下症では、ストレスによって症状が悪化することがあります。
大きなストレスは免疫機構のバランスを崩すことが知られており、甲状腺機能低下症が悪化することがあるので注意が必要です。特に、入学や就職、引っ越しなどの環境の変化によるストレスで症状が悪化することが多く、ストレスとうまく付き合う術を得る必要があります。
症状は、わずかな疲労からはじまり、ゆっくりと進行する傾向があります。
また、以下の症状がみられることがあります
子供では、病気が進行するにつれて摂食障害を起こし、正常な成長、発育がないことがあり、便秘、筋緊張低下またはひどい眠気があらわれます。小児の甲状腺機能低下症は、以下のような身体的および精神遅滞につながる可能性があります。
甲状腺機能低下症の初期症状としては、倦怠感や日中の眠気、気分の落ち込みなどの精神症状と、顔を中心としたむくみや便秘などの身体症状が挙げられます。
初期の段階では、身体症状よりも精神症状が目立つことが多く、うつ病などと間違われることが多々あります。実際、精神科や心療内科を受診してうつ病と診断され、抗うつ薬を飲んでも症状が改善せずに悩んでいる人も大勢いると予想されています。
甲状腺機能低下症は放置すると動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳卒中を発症する危険が高くなるため、早期診断と早期治療が重要となります。
うつ病を疑うような症状の他にも、体重の増加、むくみなどの症状が現れた場合には、甲状腺機能低下症を疑って、早めに病院を受診しましょう。
甲状腺機能低下症の治療薬は、レボチロキシンという甲状腺ホルモン製剤です。
過度の薬の服用は、甲状腺機能亢進症(過活動甲状腺疾患)と同様の症状をきたすことがあります。服薬にあたっては、医師の指示をきちんと守ることが重要です。
いくつかの薬、サプリメント、食品は、体に影響を及ぼすことがあります。多量の大豆製品、高繊維食、鉄サプリメント、カルシウムサプリメント、コレスチラミンや水酸化アルミニウム(一部の制酸薬に含まれている)などの薬を服用している場合は、医師に相談してください。
甲状腺機能低下症は、以下の病気を起こす可能性があるので、根気よく治療を続けることが大切です。
甲状腺機能低下症の人は代謝が落ちているため太りやすく、体内に水分を保持しやすくなっているため、むくみや体重増加が生じます。
このことからダイエットを試みる人も多いですが、無理なダイエットは禁物です。特にダイエットがストレス源になってしまっている場合には、甲状腺機能低下症を悪化させる可能性もあります。
ダイエットには運動と食事改善が必要となりますが、甲状腺機能低下症の人は過度な運動をすると疲れが溜まりやすく症状が悪化することがありますので、無理のない範囲でのウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動がおすすめです。
また、食事改善では、低カロリーのメニューを選ぶ必要がありますが、カロリーの低い海藻類には甲状腺機能低下症を悪化させるヨードが多く含まれているので摂りすぎは控えましょう。さらに、過度な量の食物繊維や乳製品、大豆製品は甲状腺機能亢進症の治療薬であるレボチロキシンの吸収を抑制することがありますので、摂りすぎには注意してください。
運動、食事改善共に、甲状腺機能低下症の人には危険がある場合があります。ダイエットを試みる場合には、医師と相談し、甲状腺の状態や薬の効き方などをチェックして安全な方法で行うようにしましょう。
甲状腺機能低下症の原因には、甲状腺機能亢進症や甲状腺がんの治療薬の影響やヨウ素不足なども考えられますが、最も多いものが橋本病です。
ゆっくりと症状が現れることが多く、うつ病などと間違われやすい特徴があるため、治療が遅れる傾向があります。深刻な病気に発展する可能性がある病気なので、少しでも疑わしい症状があるときは、早めに病院を受診しましょう。