記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/29
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
気管支喘息(喘息)の治療は、吸入薬(長期管理薬)でのコントロールが基本です。市販の咳止めの使用はできないといわれていますが、それはいったいなぜでしょうか。
この記事では、喘息で市販の咳止め薬を使ってはいけない理由と、喘息に効果があるといわれている市販の漢方薬について説明しています。
気管支喘息(喘息:ぜんそく)は、アレルギー反応や疲労が原因で気管支が炎症を起こして狭くなり、激しい咳やゼーゼーヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)、呼吸困難を起こす疾患です。
病院では、喘息の治療薬として喉の粘膜に直接薬を届け、炎症を速やかに鎮める作用のある吸入タイプの薬が処方されることが多いですが、市販薬には、現在このような吸入タイプの薬はありません。
気管支を広げて咳を止める効果があると謳っている市販薬も販売されていますが、これらは喘息を治療するものではなく、あくまでも一時的に症状を抑えるもので、喘息を長期にわたってコントロールするための薬ではありません。喘息の治療には医療機関から状態にあわせた薬を処方してもらう必要があります。
喘息の治療では、病院から処方された薬を正しく使うことが大原則です。そのため、市販薬を自己判断で使うことはおすすめできません。
さまざまな咳止めが市販されていますが、喘息の咳は「気管支を広げて呼吸を楽にすることで咳をしずめる薬」を使わなければいけません。一般的な咳止めの薬に配合されている、咳中枢に働くことで咳をしずめる効果のある鎮咳成分(ジヒドロコデイリン酸塩など)は喘息の症状に対して使用できないのです。
つまり、現在市販されている咳止め薬の効果は不十分であり、また気道を守る大切な防御反応のひとつである咳をむやみに止めるのも良いとはいえないでしょう。さらに咳止め薬によっては気道を収縮(狭く)させる副作用があることもあり、このような薬は喘息には逆効果となります。
市販薬は、あくまでも一時的に咳を止める効果しかありません。繰り返しになりますが、医師の許可なく自己判断で市販の咳止め薬を使うことは絶対にしないでください。
喘息に効くとされている漢方薬は、体質を改善していくことで喘息の症状が出にくくなるようにするために使われることがあります。市販されている漢方薬には、以下のものがあります。
「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」は、気管支拡張の作用がある麻黄をはじめとして、湿った咳をおさえる半夏や五味子など8種類の生薬が配合されています。ただし、2歳以上から使用できますが、体がひどく弱っている場合は使用できません。
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)も気管支拡張作用のある麻黄のほか、痰の排出を助ける杏仁(きょうにん)や、体の痛みなどを緩和する甘草など4種類の生薬が配合され、咳や急性期の気管支喘息にも使用されます。体力のある人に向いている漢方薬で、発汗が異常に多い人には使用できません。
そのほか、麻杏甘石湯に痰を切る桑白皮(そうはくひ)が加わった「五虎湯(ごことう)」、喉を潤して咳を鎮める作用があり体力のない人も使える「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」などがあります。
ただし、いずれの漢方薬も単独で喘息を改善することは難しいと考えられています。あくまでも病院での治療の補助として使うようにし、服用する前に必ず医師に許可をもらいましょう。
喘息の症状を抑える市販薬は販売されていますが、どれも一時的に症状を抑える効果しかありません。喘息の症状がある場合は必ず病院へ行き、完治のために適切な治療を受けるようにしましょう。また、喘息に効くとされる市販の漢方薬もありますが、服用する前に必ず医師に相談しましょう。