記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/14 記事改定日: 2019/4/15
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
東南アジアなどの海外旅行で感染するイメージの強い「寄生虫」ですが、日本国内でもさまざまな寄生虫の症例が報告されています。今回はその中でも代表的な寄生虫や、豚肉に潜んでいる可能性のある寄生虫について解説します。
戦後間もない頃と比べれば、日本での寄生虫による感染例は減っていますが、現在でも寄生虫に感染する国内患者は存在します。代表的な症例を、いくつかご紹介します。
サバやタラ、イカなどの生鮮魚介類の内臓や筋肉に寄生する寄生虫です。刺身などで魚を生で食べる習慣の根強い日本では、特に多くみられます。国立感染研究所の推計では、日本国内で年間7147件(2005~2011年の年平均)、アニサキスによる食中毒が発生していると考えられています。
アニサキスは魚介類の生食による経口摂取が主な感染源で、食後数時間以内に激しい腹痛や嘔吐などを引き起こします。
人や牛、豚、犬、猫、ネズミなどの腸管に寄生する原虫で、消化管内で増殖し、糞便中で直径5μmのオーシスト(囊胞体)として大量に放出されます。このオーシストが付着した食べ物や水を経口摂取することで、4〜10日ほど経過した後にクリプトスポリジウム症を発症します。
クリプトスポリジウム症の主な症状は腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、微熱などで、3日〜1週間程度継続します。
20cm程度の白色または肌色をした、ミミズのような寄生虫です。処理が不十分な人の糞尿を使った有機栽培の野菜や、輸入野菜などを生で食べると、手指や野菜などに付着した虫の卵をそのまま取り込むこととなり、感染します。
小腸に静かに寄生している間は自覚症状はほとんどないものの、ときどき腹痛や下痢、食欲不振などの消化器症状を引き起こします。
サクラマスやシロザケなどに寄生する幼虫で、加熱不十分なものを経口摂取することで裂頭条虫症を発症します。かつては北海道や東北、北陸地方での発症者が多かったですが、現在は輸送システムの発達によって首都圏でも感染者がみられ、ここ11年(2007〜2017年3月)では約440例の症例が認められています。
潜伏期間は2〜3週間程度と長いですが、軽い腹痛や腹部膨満感、下痢程度でおさまることが多いです。排便時に、長いきしめんのような虫体が肛門から出てくることで気づくケースが多いとされています。
加熱不十分な豚肉には寄生虫が潜んでいることがあります。いくつか代表的な例をご紹介します。
豚や羊、山羊などの加熱不十分な肉や、山羊の生乳などに寄生する寄生虫です。これらの食材を経口摂取すると人へと感染しますが、感染しても、頭痛や軽い発熱程度で済む場合が多いです。
しかし、免疫力が低下している人が感染すると重篤化する恐れがあり、特に妊婦が感染すると、流産や死産、胎児の水頭症や発育不全などを引き起こす可能性があります。
豚やイノシシなどに幼虫が寄生していることがあり、これらの肉を生で食べると感染します。幼虫を摂取した場合は消化器症状、虫卵を摂取した場合は腸管で幼虫がかえり、体内に運ばれる過程で、意識障害や痙攣を引き起こすことがあります。
寄生虫の多くは飲食物を介して感染しますが、以下のようなものは食事以外でも感染する可能性があります。
寄生虫は、サバやイカなどの魚介類、豚肉、生野菜など、あらゆる食べ物に潜んでいる可能性があります。衛生意識の高い日本でも、適切に処理されていない食べ物や水分を摂取すると、食中毒症状に見舞われるリスクはありますので、加熱処理や冷凍処理、食事前の手洗いなどを徹底しましょう。