日本での寄生虫の症例は? 豚肉にはどんな寄生虫のリスクがある?

2018/6/14

山本 康博 先生

記事監修医師

東大医学部卒、独立行政法人国立病院機構東京医療センター

山本 康博 先生

東南アジアなどの海外旅行で感染するイメージの強い「寄生虫」ですが、日本国内でもさまざまな寄生虫の症例が報告されています。今回はその中でも代表的な寄生虫や、豚肉に潜んでいる可能性のある寄生虫について解説します。

日本での寄生虫、どんな症例がある?

戦後間もない頃と比べれば、日本での寄生虫による感染例は減っていますが、現在でも寄生虫に感染する国内患者は存在します。代表的な症例を、いくつかご紹介します。

アニサキス

サバやタラ、イカなどの生鮮魚介類の内臓や筋肉に寄生する寄生虫です。刺身などで魚を生で食べる習慣の根強い日本では、特に多くみられます。国立感染研究所の推計では、日本国内で年間7147件(2005~2011年の年平均)、アニサキスによる食中毒が発生していると考えられています。

アニサキスは魚介類の生食による経口摂取が主な感染源で、食後数時間以内に激しい腹痛や嘔吐などを引き起こします。

クリプトスポリジウム

人や牛、豚、犬、猫、ネズミなどの腸管に寄生する原虫で、消化管内で増殖し、糞便中で直径5μmのオーシスト(囊胞体)として大量に放出されます。このオーシストが付着した食べ物や水を経口摂取することで、4〜10日ほど経過した後にクリプトスポリジウム症を発症します。

クリプトスポリジウム症の主な症状は腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、微熱などで、3日〜1週間程度継続します。

回虫

20cm程度の白色または肌色をした、ミミズのような寄生虫です。処理が不十分な人の糞尿を使った有機栽培の野菜や、輸入野菜などを生で食べると、手指や野菜などに付着した虫の卵をそのまま取り込むこととなり、感染します。

小腸に静かに寄生している間は自覚症状はほとんどないものの、ときどき腹痛や下痢、食欲不振などの消化器症状を引き起こします。

日本海裂頭条虫

サクラマスやシロザケなどに寄生する幼虫で、加熱不十分なものを経口摂取することで裂頭条虫症を発症します。かつては北海道や東北、北陸地方での発症者が多かったですが、現在は輸送システムの発達によって首都圏でも感染者がみられ、ここ11年(2007〜2017年3月)では約440例の症例が認められています。

潜伏期間は2〜3週間程度と長いですが、軽い腹痛や腹部膨満感、下痢程度でおさまることが多いです。排便時に、長いきしめんのような虫体が肛門から出てくることで気づくケースが多いとされています。

豚肉の寄生虫にはどんなものがある?

加熱不十分な豚肉には寄生虫が潜んでいることがあります。いくつか代表的な例をご紹介します。

トキソプラズマ

豚や羊、山羊などの加熱不十分な肉や、山羊の生乳などに寄生する寄生虫です。これらの食材を経口摂取すると人へと感染しますが、感染しても、頭痛や軽い発熱程度で済む場合が多いです。
しかし、免疫力が低下している人が感染すると重篤化する恐れがあり、特に妊婦が感染すると、流産や死産、胎児の水頭症や発育不全などを引き起こす可能性があります。

有鉤条虫

豚やイノシシなどに幼虫が寄生していることがあり、これらの肉を生で食べると感染します。幼虫を摂取した場合は消化器症状、虫卵を摂取した場合は腸管で幼虫がかえり、体内に運ばれる過程で、意識障害や痙攣を引き起こすことがあります。

おわりに:日本でも、あらゆる食べ物から寄生虫感染のリスクはある

寄生虫は、サバやイカなどの魚介類、豚肉、生野菜など、あらゆる食べ物に潜んでいる可能性があります。衛生意識の高い日本でも、適切に処理されていない食べ物や水分を摂取すると、食中毒症状に見舞われるリスクはありますので、加熱処理や冷凍処理、食事前の手洗いなどを徹底しましょう。

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