記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/26 記事改定日: 2018/8/23
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
過剰な不安によって体調を崩したり、日常生活に支障をきたしてしまう「全般性不安障害」。この全般性不安障害は、どのように診断されるのでしょうか。診断基準や治療方法、家族が気をつけることなどをご紹介します。
全般性不安障害とは不安障害の一種で、「特定の状況に限定されない、理由の定まらない不安や心配」が長時間続きそれに伴い精神的あるいは身体的な症状が出現する病気です。男性に比べて女性の方が1.5~2倍ほど多く、特に若い女性に多く見られることが特徴です。
全般性不安障害で見られる症状はさまざまですが、ほぼみられる症状は「浮動性不安」といい、コントロールできないほどの過剰な漠然とした不安が見られます。他にも精神症状としては些細なことが気になり、取り越し苦労が多くなる、常に緊張してリラックスできない、疲れやすくて根気が無い、そわそわする、いらいらする、集中力がない、寝つきが悪くなり途中で目が覚める、記憶力が悪くなった感じがする、悲観的になり人に会うのがわずらわしく感じる、といったことがあります。
身体的な症状としては頭痛や頭重感など頭に圧迫感がある、緊張している、しびれを感じる、めまいや頭が揺れる感じがする、便秘または下痢、頻尿などがあります。
全般性不安障害はさまざまな症状を生じますが、「その人の本来の性格によるもの」と考えられてしまうことが多くあります。しかし、全般性不安障害はれっきとした病気であり、適切な治療を行うことで、日常生活を円滑に行えるようになります。
まずは、ご自身や家族が全般性不安障害を疑うことから始めてみましょう。以下の項目に当てはまることが多い人は全般性不安障害を発症している可能性がありますので、早めに心療内科などを受診してみましょう。
全般性不安障害は心の病気であるため、客観的な診断が非常に難しいとされています。医師によって診断がばらけてしまわないように、客観的な基準となるガイドラインが設けられており、このガイドラインに基づいて診断されます。
長い歴史や社会の変化の中で全般性不安障害の判断基準は変化していっているものの、現在ではアメリカの診断基準であるDSM‐Ⅴが最も新しく、一般的に取り入れられています。この診断基準は大人だけでなく、小児など自分のことを十分に伝えられない年齢でも活用することができます。
DSM‐Ⅴによる、全般性不安障害のおおよその診断基準は以下の通りです。
これらにどの程度当てはまっているかによって診断をします。診断ポイントとしては、「過剰な不安や心配がある」「不安や心配がコントロールできない」「精神症状や身体症状がある」「苦痛や生活への支障がある」「他の病気や薬などのせいではない」の5つが挙げられます。
全般性不安障害では、薬物療法と精神療法が行われますが、それぞれの特徴は以下の通りです。
一般的には依存性の少ない抗不安薬の投与が行われます。不安障害以外にも、抑うつ気分などを生じている場合には、SSRIなどの抗うつ薬が併用されることもあり、現れた症状に対して総合的な治療が行われます。
精神療法には様々なものがありますが、全般性不安障害では認知行動療法が行われることが多いです。認知行動療法とは、精神科医や心療内科医などとカウンセリングを行い、自身が不安に思っていることと現実との乖離を認識するように導き、不安感を改善するという治療法です。
全般性不安障害の人は、常にそわそわと落ち着きがなく、様々な体調不良を訴えるため、家族は患者の行動や訴えに振り回されてしまうことが多々あります。
しかし、これは病気による症状であるため、患者自身に悪意があるわけではありません。治療を続けることで症状が緩和する可能性もあります。
家族は患者の訴えに耳を傾け、行動や訴えを否定しないように気をつけましょう。また、家族が疲れてしまったときは、患者と少し距離を置いて休むのもひとつの手段としておすすめです。
全般性不安障害にはさまざまな要因が複雑に絡み合っており、医師であっても客観的に診断を下すことは難しいものです。そのため、専門の外来を受診し、正確に診断してもらうことが重要になります。ご紹介した診断基準に当てはまる点が多い場合は、一度専門医のもとを受診することをおすすめします。