記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/6/26 記事改定日: 2019/2/27
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
PTSDは、事故やいじめなどの「過去の出来事」が起因してさまざまな症状を引き起こす障害です。
過去の出来事がトラウマとなって心身に影響することが原因といわれていますが、PTSDはどのような症状が起こり、どうやって治療を進めていくのでしょう。トラウマとの関係性もあわせて解説していきましょう。
災害や事故、犯罪やいじめなど、個人の力ではどうにもならないほどショックな出来事を体験したとき、それが「トラウマ」と呼ばれる心の傷になることがあります。
そして、このトラウマが心身に影響を与え、社会生活においてもさまざまなストレス障害を与える疾患を「PTSD」と呼ぶのです。つまり、PTSDの発作が現れるということは、何らかの原因で受けた心の傷がまだ癒えていないことを示します。
いちがいにPTSDといっても、突発的な事故や犯罪など、一度きりの出来事に由来する「単純性PTSD」や、幼少期に受けた虐待やいじめなどの継続的な出来事に由来する「複雑性PTSD」などのさまざまな種類があります。そのため、それぞれの症状や原因に応じたサポートが必要です。
PTSDには、下記のように代表的な症状がいくつかあります。
PTSDと診断されるのは、これらの症状が複合的に、心的外傷体験から1ヵ月以上経っても続いているときです。1ヶ月未満の場合には ASD(急性ストレス障害)と診断されます。症状が1ヵ月以上3か月未満であれば急性、3か月以上であれば慢性のPTSDとなります。
PTSDやトラウマの原因になりうる事柄には以下のようなものがあります。
当てはまる項目が多い場合はPTSDの可能性がありますので、軽く考えず専門の医療機関を受診するようにしましょう。
PTSDの治療の基本方針は
です。
PTSDについて正しく理解し、自分の感情と向き合いながらコントロールしていくことが重要になります。
心の傷の治療法としてさまざまな手段が用いられますが、どの治療法が有効であるかは人によって異なります。
たとえば「持続エクスポージャー療法」は、心的外傷体験をあえてイメージし、向き合わせる治療法です。そのときの体験が自分の中にあったとしても、「今は危険がない。今は怖くない」ということを、患者自身が感じ取っていくための治療のため、かえって不安が強くなり、症状が悪化することもあり、この治療法を用いるかは慎重に判断する必要があります。
ほかにも、PTSDに悩む人たちが数名で自分の悩みを語り合う集団療法(グループ療法)などもあります。これは、自分の体験を人に聞いてもらうことで、孤独感を軽減し、周囲への信頼感を取り戻します。
これらの心理的な治療のほかにも、PTSDの発作の苦しい症状をやわらげるため、薬が処方されることもあります。抗うつ薬や抗不安薬などが状態に合わせて処方されますが、ほかの薬との飲みあわせによっては思わぬ副作用が起こることもあります。
また、症状が治ったと思って自己判断で薬を飲むのを止めたり、良くならないからと勝手に薬の量を増やすとPTSDの症状が悪化したり強い副作用が起こったり依存症に陥るおそれがあります。精神疾患の薬は、正しく使用しているのであれば安全性が高いといわれています。
医師と相談しながら自分にあった薬を見つけていき、薬は必ず医師の指示を守って服用しましょう。
心的外傷を与えるような体験を受け、さらにその体験が1か月以上経っても心身や社会生活に影響を与えることを「PTSD」といいます。一人で抱え込んだり、そうなってしまった自分に罪悪感を覚えたりせずに、周囲のサポートを受けながら適切な治療を受けましょう。