記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/6
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
突然うまく呼吸ができなくなり、呼吸困難に陥ってしまう過呼吸。この過呼吸で薬が処方されることはあるのでしょうか?また、どのような薬が使用されるのでしょうか?過呼吸の治療で使われる薬について解説していきます。
過呼吸・過換気症候群では必ず服薬治療が必要というわけではなく、また過呼吸を根本的に治療する薬というのもありません。基本的には、過呼吸の発作は30分〜1時間ほどで治ることが多く、命に関わる事や後遺症が残ることはありません。症状によっては、服薬が必要だと判断される場合もありますが、基本的には薬を使用せずに治療を行います。
先述の通り、過呼吸・過換気症候群の症状を直接的に抑える薬というものはありません。ただし、発作を引き起こす原因となっている精神的ストレスや不安感に対して効果のある薬剤を使用することがあります。
過換気発作は、酸素の吸入量が過剰になることにより二酸化炭素の排出量が多くなる症状なので、紙袋に吐き出した二酸化炭素を再吸入するペーパーバッグ法が使用されることがあります。ただし、現在はさらに不安をあおる可能性があることから、あまり推奨されていないといわれています。
ペーパーバッグ法を行っても症状が改善されない場合は、抗不安薬を投与する場合があります。慢性的に過換気発作が起こる人は、予防策として毎日抗不安薬を服用することが必要です。
腹式呼吸法や自律訓練法などを行うことにより症状が改善されることがあります。
精神的ストレスや心理的葛藤、不安感などが強い場合は、日頃からストレスを溜めないように工夫をしたり、人付き合いの方法を変えてみるなどの心理療法が役立つことがあります。
過呼吸・過換気症候群の治療で使用される薬は、発作時に用いる薬と間欠期に用いる薬の2種類に分けられます。
また過呼吸・過換気症候群はパニック障害の症状と類似点(不安や恐怖感に伴い発作が起こるなど)が多いため、ほとんどの薬剤はパニック障害の治療で使用されるものと同じものになります。
過呼吸発作は、不安感、恐怖、緊張などの精神的ストレスが急激に強まることにより起こるため、それらの症状に対して効果が強く、かつ即効性がある薬が使用されます。
基本的には、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が用いられることが多く、その中でも効果が強く、即効性が優れているものが処方されます。
効果がピークに達するまでの時間 | 約2時間 |
抗不安作用 | 中等度 |
効果がピークに達するまでの時間 | 約2時間 |
抗不安作用 | 強い |
効果がピークに達するまでの時間 | 約1時間 |
抗不安作用 | 強い |
効果がピークに達するまでの時間 | 約3時間 |
抗不安作用 | 強い |
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、即効性があり、抗不安作用が強いものが多いため、過呼吸発作に対しても優れた効果を発揮します。ただし副作用として、眠気やふらつきなどか起こることがあるため、特に普段運転をすることが多い人は注意する必要があります。
また、発作止めの薬はお守りとしての効果もあり、「発作が起きてもこの薬を飲めば大丈夫」と思うことにより安心感を持つことができます。このように、発作止めの薬の使用方法は多岐にわたり、過剰摂取や長期間の服用などをしなければ、処方してもらうメリットは多くあるといえるでしょう。
間欠期に用いる薬は、発作が起きていない間の気分を落ち着かせたり、発作を予防する効果がありますが、基本的には使用しないことが良いとされており、できる限り服薬以外の方法で症状を改善するのが望ましいとされています。
具体的な服薬以外の治療法には以下のようなものがあります。
しかし、上記のような方法を行なっても症状が改善されない場合や、上記の方法を取り入れられない場合は、間欠期に用いる薬を使用することがあります。
不安や緊張に対して効果のある漢方薬を使用することで、気分を落ち着かせて過呼吸発作の予防が期待できます。具体的には以下のような漢方薬が使用されることが多いです。
発作止めとして使用される抗不安薬(ベンゾジアゼピン系抗不安薬など)は、間欠期にも不安感を抑えて落ち着かせるために使用されることがあります。ただし、抗不安薬は効果が強く即効性がありますが、長期間の服用または大量の服薬をすると体に耐性がついたり依存するリスクが高まるため、できる限り使用を控えることが推奨されています。
止むを得ず定期的に使用しなければならない場合は、少量を長期間に渡り漫然と投与しないように注意する必要があります。またその際は、耐性・依存性形成のリスクを少しでも軽減するため、比較的作用時間の長い抗不安薬が使用されます。
不安や抗うつが強く、他の薬では効果が得られなかった場合は、抗うつ剤が処方されることがあります。抗うつ剤は、すぐに効果が現れるわけではありませんが、長期間使用しても耐性や依存性の形成リスクがないため、抗不安薬の使用が長期にわたり必要な場合は、抗うつ剤に切り替えることがあります。
過呼吸・過換気症候群の治療では必ず服薬が必要というわけではなく、また過呼吸を根本的に治療する薬というのもありません。そのため、発作の原因となる不安感、恐怖、緊張などの精神的ストレスを和らげる抗不安薬などが処方されることが一般的です。
ただし、抗不安薬を長期的に常用すると依存のリスクが高まるため、基本的には根本的な原因となるストレスへの対処の仕方を身につけることが重要です。