記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
お金がなくてもギャンブルがやめられず、家族や友人、消費者金融などからお金を借りては使ってしまい、将来的に生活が破綻に追い込まれることもある「ギャンブル依存症」。ギャンブル依存症はよく「本人の自制心がないせい」といわれますが、本当に資質だけの問題なのでしょうか。
以降ではギャンブル依存症の原因について、脳の問題や幼少期の環境など、多面的な観点からお伝えしていきます。
ギャンブル依存症とは、経済的・社会的・精神的な問題や損害が発生するにも関わらず、ギャンブルを続けたいという衝動が抑えられない病気です。これまで、ギャンブル依存症は本人の資質の問題とされがちでしたが、近年では「ギャンブルがなかなかやめられない」という状態は、脳内の報酬系の機能異常が原因とも考えられるようになっています。
この「報酬系」はワクワク感や気持ちよさ、多幸感などの発生源となる部位で、ギャンブルをやり始めた時期に大勝ちしたときにもこの部位が強く反応し、ドーパミンという快楽物質が大量に生成・放出されることがわかっています。
しかし、ギャンブルを長期間続けて依存状態になってくると、徐々に報酬系は鈍感になり、ギャンブルで勝っても反応しなくなっていきます。そして美味しい食事や楽しい出来事にも、快楽や喜びを感じなくなっていきます。
ただ、ギャンブルを連想させるもの(パチンコ台など)を見たりすると、そのときだけ脳の一部分が強く反応し、ギャンブルをやりたい激しい衝動だけが残ります。しかし今まで通りギャンブルをしても快楽は感じにくくなっているので、勝っても欲求が満たされず、さらなる刺激を求めてギャンブルがエスカレートするようになるのです。
ギャンブル依存症の原因は明確にはわかっていませんが、先述の脳の機能異常だけでなく、幼少期の体験や年齢、性別、もともとの性格、環境など、さまざまな要因が組み合わさって発症していると考えられています。具体的には下記の通りです。
幼少期や青年期のギャンブル体験は、ギャンブル依存症のリスクを高めると考えられています。特に家族や友人にギャンブル依存症の人がいる場合は高リスクです。
ギャンブル依存症は若い人や中高年に多く、高齢者にもみられることがあります。また、性別でいえば男性の発症率が高いですが、女性が発症した場合は男性よりも早く症状が進行する傾向にあります。
ギャンブル依存症の原因として、過度の負けず嫌いな性格や、落ち着きのなさ、時間を持て余していること、人生に目標がないことといった素因も関係していると考えられています。
うつ病や双極性障害、強迫性障害、ADHD患者や、ドーパミンアゴニストというパーキンソン病の治療薬を服薬中の人に、ギャンブル依存症が見られることがあります。
ギャンブル依存症の発症には、本人の性格やライフスタイルも関係していますが、脳の機能異常や幼少期の体験などさまざまな原因が複雑に絡み合っていると考えられています。特に脳の機能に関していえば、ギャンブルを絶つことで徐々に元の健康な脳へと戻っていくことも確認されているので、専門機関などの助けを借りながら、早期に治療を始めていきましょう。