記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/4
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
一昔前には「不治の病」というイメージのあったHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染と、これによる後天性免疫不全症厚遇・エイズ。しかし近年、HIVの研究と治療方法の開発はすすみ、HIVは必ずしも死に直結する感染症ではなくなってきています。
今回は近年のHIVの治療法について、かかる費用の目安や効果を高めるポイントとあわせてご紹介していきます。
HIV感染症とは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染によって人が本来持っている健全な免疫システムが破壊され、生存に必要な抵抗力が失われていく感染症です。
またHIV感染症による著しい免疫不全・抵抗力低下が原因で、健康な人ならかからないような合併症になることをエイズ(後天性免疫不全症候群)といいます。
かつてはHIVウイルスを殺し、HIV感染症・エイズ発症を食い止める根本治療が不可能だったことから、少し前までHIV=死というイメージを持たれてきました。
しかし、1996年に抗HIV薬が開発されてからは治療の研究がすすみ、抗HIV治療薬でウイルスの増殖を抑え、抵抗力が下がらないよう処置する治療法が確立されつつあります。
このような治療方法の変化から、適切な治療さえ受けていればHIVに感染しても感染前とさほど変わらない生活を送れるようになってきているのです。
近年のHIV治療は、基本的に3~4種類程度の薬を使った投薬がメインです。
このような3~4種類の抗HIV薬を同時に服用する治療法は「HAART(ART)」と呼ばれ、治療には大きく分けて以下5種類の抗HIV薬が使われます。
上記のうち薬の組み合わせは患者の状態や医師の判断によって変わってきますが、1~2種類ではすぐにウイルスが耐性を持ってしまうため、常時3~4種類を使用するのが一般的です。
抗HIV治療薬の服用による治療法が確立されつつありますが、このようなHIV治療の効果をより高めるために、できることはあるのでしょうか。
まず大切なのは、早期の段階から適切な治療を始められるよう、感染が疑われるような機会があるならできるだけ早く検査を受けることです。治療の開始が早期であればあるほど、抗HIV治療薬によってHIVウイルスの増殖を抑えられる可能性が高くなります。
ただし、感染の機会から1か月以内の初期である「ウインドウ期」は正確な検査結果を得られないことがあるため、注意が必要です。
ウインドウ期には感染していても陰性と出ることがあるので、せっかく検査を受けても正しい結果が得られない可能性もあります。このため、感染が疑われる機会から1か月以内のウインドウ期の検査結果が陰性でも、感染の機会から3か月後を目安に再検査する必要があることは覚えておきましょう。
また検査の結果HIVに感染しているとわかった場合には、身体の状態にかかわらず処方されたHIV治療薬を飲み続けることが、治療効果を高めるカギになります。
自己判断で服薬を中断すると、免疫力が落ちてHIV感染症がすすみ、エイズを発症する可能性もありますので、服薬はしっかり続けてください。
治りにくいイメージのあるHIVの治療費は、なんとなく高そうに感じますよね。しかし実際にはHIV治療は保険適応が可能なため、保険証を提示すれば他の病気と同じように通常3割負担で治療を受けることができます。
また、治療の継続によって負担額が高額になった場合にも、高額療養費制度を利用すれば上限額を超えた医療費は返還される可能性があります。
上限額は患者の年齢や所得に応じて変わりますので、詳しくは加入している健康保険組合、または国保を運営する自治体に相談してみると良いでしょう。
HIVが不治の病といわれたのも今は昔、近年では有効な治療法も確立されつつあり、HIVは死に直結する病気ではなくなってきました。検査によって早期発見し、適切な治療を開始するうことができれば、HIVウイルスの増殖を抑えて感染前と変わらない生活を送ることも可能になってきています。治療効果を上げるには早期発見が重要ですので、HIV感染が疑われる機会があったなら、できるだけ早く検査を受けてください。