記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/7/27
記事監修医師
前田 裕斗 先生
乳がんの発症原因はいまだによくわかっていない点が多いですが、乳製品の食べすぎやストレスの蓄積が発症リスクを上げる可能性はあるのでしょうか?乳がんの原因について、現在わかっていることをお伝えしていきます。
乳製品が乳がんの発症リスクを高めるかどうかについては、はっきりとした関係はわかっていません。もともと、乳製品を食べる機会の多い北欧を中心に、乳製品と乳がんに関する研究が盛んに行われてきましたが、乳がんの発症リスクに関する報告にはばらつきがみられてきました。
ただし、最近の研究では、乳製品全般を多く摂取している人は、少ない人に比べて乳がんの発症リスクが少し低くなるという報告がされています。また、乳がんの発症リスク減少については、低脂肪乳を選択していることや閉経前であるといった要因が関係している可能性があるとも考えられてます。
一方で、乳製品といっても、牛乳、チーズ、アイスクリーム、ヨーグルト、バターなどさまざまな種類があります。また、原料も乳牛のミルクだけを使っているわけではありません。そのため、どのような乳製品をどの程度の量を食べれば良いのかについては明らかにはされていません。
私たちは、日々の生活の中でさまざまなストレスの中で生活をしています。仕事や子育て、介護のほか、さまざまな人間関係もストレスになります。ストレスと乳がんの発症リスクについては数々の研究がされてきましたが、乳がんの発症率が「高まる」という結果も「低くなる」という結果もあり、どちらかに一致していません。
たとえば、仕事や介護や子育てなどのストレスと乳がんの発症リスクについての研究では、ストレスと乳がんは相互に関連していないという結果が得られました。一方で、ストレスを経験している女性と経験していない女性の間では、乳がんの発症率に2倍の差があったとの報告もあります。今の研究状況ではストレスと乳がんの関連性については、はっきり結論づけられないのが現状です。
たばこは、がんの原因となる物質や血管を収縮させる物質などが含まれています。特に肺がんの発症リスクを高めることが明らかですが、乳がんについても発症リスクを高めるとされています。
また、たばこによるリスクは、喫煙者だけが受けるものではありません。喫煙者以外の人がたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」でも、乳がんの発症リスクがあるという報告もあります。
禁煙を始めるのが早ければ早いほど、がんのリスクが低下するといわれています。現在では禁煙外来も多く存在しているため、近隣の医療機関に相談をしてみることが望ましいでしょう。
乳がんの原因として、すでに明らかになっているものも複数あります。たとえば、女性ホルモンのひとつである「エストロゲン」が関わっていることはよく知られています。
エストロゲンは卵胞ホルモンとも呼ばれており、思春期ごろから分泌が始まって、乳房の発達や月経リズム、妊娠に関わっています。また、髪や肌をつややかにしたり、骨を丈夫にし、脳の働きを活発にする働きもあります。
このエストロゲンが体内で過剰になると、乳がんのリスクが高まるといわれています。体質的なものもありますが、経口避妊薬(ピル)の使用や、ホルモン補充療法(プロゲステロンと併用した場合)はリスクになります。
その他の乳がんの要因としては以下のようなものがあります。当てはまる場合は、生活習慣の改善を行ったり、定期的な検診を受けたりするなど予防を心がけましょう。
乳がんの原因として、乳製品やストレスの関与は明らかにはされていませんが、喫煙は肺がんだけではなく、乳がんのリスクにもなります。またそのほかに、個人の体質や生活習慣の中でも、乳がんに関わるものがあります。該当する項目の多い人は、日ごろから自分で乳房のチェックをしたり、定期的に検査を受けることが望ましいです。