記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/8/20
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「骨肉腫」は子供のがんの中でも特に発症率の高いものとされていますが、具体的にどんな症状が出るのでしょうか。また、骨肉腫の場合にはどんな治療が行われ、生存率はどれくらいでしょうか。以降で解説していきます。
骨肉腫は骨腫瘍の中の1つであり、組織学的に腫瘍性の類骨・骨を形成する悪性腫瘍と定義されています、小児期に発生するがんで最も頻度の高いがんで、日本で発症する割合は150人に1人とされています。
発症者を年齢別に見てみると10歳代が全体の約60%、20歳代が約15%を占めています。しかし、高齢者にも見られる病気であり、男女差を見ると男性に発症者がやや多いことが特徴です。原因は不明であるものの、子供によくみられることから骨成長の速さと骨肉腫の発症の関連性が考えられています。
子供が骨肉腫になるとみられる症状は、数か月から半年間持続する局所の疼痛や腫れです。好発部位は膝の近くの太もも、すねの骨の膝に近い部分が60~70%であり、二の腕の骨の肩に近い部分にも見られます。典型的には膝や肩周囲の疼痛や腫れによって骨肉腫が発見される場合もあります。また明らかな外傷がない場合や軽度の外傷であるにもかかわらず骨折をしたことによって骨肉腫が発見されることもあります。
他にも関節のこわばりや腫れも症状として出現することがあります。
骨肉腫の標準治療は、手術による局所制御と術前・術後の化学療法による微小転移の制御を組み合わせた集学的治療となります。
手術では、腫瘍とその周囲の正常な組織を切除する広範囲切除を行います。現在では切除後に移植骨や人工骨を挿入する患肢温存術が主に行われ、特に10歳以下の子供に対して積極的に行われています。
また、下肢に対しては回転形成術という、血管と神経以外の皮膚や筋肉をすべて切除し、残ったすねの下から足首、足を引っ張り上げ、前後180°逆向きにして大腿部に接合する手術も行われています。
化学療法では、手術を円滑にし、術後はできるだけ患肢を温存するための術前化学療法と手術後の化学療法が行われています。術前は通常2~3か月間化学療法を行い、術後は数か月から1年間化学療法を行うという方法が日本では主流になりつつあります。治療にはメトトレキサート、シスプラチン、アドリアマイシンの3剤が基本的に使用され、イホスファミドとエトポシドが用いられることもあります。
なお、骨肉腫の場合、腫瘍細胞を放射線で破壊することができないため、放射線治療は行われないことが多いことが特徴です。
術前から化学療法を行うまで、骨肉腫の生存率は30~40%となっていました。しかし、術前化学療法を行うようになってから5年生存率は50%程となっており、10年生存率が60%代にまで上昇しているというデータもあります。また、特に診断時に転移がない場合は5年生存率が75%程という報告もあります。転移先が肺転移のみに限られている場合でも高い生存率が報告されています。
骨肉腫は、10代から20代の若い人が発症する可能性の高いがんです。現在は化学療法と手術を組み合わせた治療が主流であり、転移をしていなければ、この手術法で高い生存率が見込めています。ただし、生存率を少しでも上げるためには、骨肉腫が疑われる症状があったら早期に医療機関を受診することが大切です。