記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/3/2
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
マイコプラズマ肺炎は、発症の初期に風邪と似た症状が見られることで知られる細菌性の感染症の一種です。初期症状の一つに発熱がありますが、熱が出たら何日ぐらい続くものなのでしょうか?また、熱が出た場合、どのようにして治療するのでしょうか?
マイコプラズマ肺炎とは、「肺炎マイコプラズマ細菌(マイコプラズマ・ニューモニエ)」という菌によって引き起こされる肺炎です。肺炎全体の約10~20%がマイコプラズマ肺炎であるといわれていて、肺炎球菌が引き起こす一般的な肺炎とは別の細菌が引き起こす疾患です。肺炎球菌による肺炎と区別するため、「非定型肺炎」「異型肺炎」と呼ばれることもあります。
非定型肺炎(異型肺炎)の全てがマイコプラズマ肺炎というわけではありませんが、その大半がマイコプラズマ肺炎であるとされています。肺炎球菌による肺炎と違い、重症に発展することは少なく、胸部レントゲン像も異なります。季節に関係なくいつでも発症する疾患で、発症する年齢は幼児期〜青年期に多いことがわかっています。
約2〜3週間の潜伏期を経て、発熱や全身倦怠感、頭痛などの症状が現れます。初期症状は風邪によく似ているため、風邪と勘違いしたまま発熱や頭痛などの症状が落ち着いてしまうことも少なくありません。マイコプラズマ肺炎に特徴的な症状は、発熱や頭痛などの症状が落ち着いた後も数週間にわたって咳が長く続くことです。
また、咳やくしゃみなどの飛沫感染、感染者との接触による接触感染などで感染するため、家庭や学校など、集団生活を行う場で集団感染を引き起こすことが多いです。感染力はそれほど強くありませんので、短時間の接触での感染のリスクは低いです。しかし、友人間などの長時間のお喋りや頻度の高い接触を含む活動など、濃厚な接触に至る場合は注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎を発症すると、37~38℃程度の熱が約4~5日続きます。風邪やインフルエンザのように突然重い症状が発生するものではなく、ゆっくりと悪化していきます。これは、肺炎球菌やインフルエンザウイルスのように肺胞を直接攻撃するタイプの肺炎とは違い、肺炎マイコプラズマ細菌は「間質」という肺胞の間に炎症を起こし、免疫反応を過剰に引き起こすタイプの肺炎であることによります。
一般的には、6歳以上の小児に発症する肺炎の原因の約40~50%を占めるとされています。20~30代の成人でも感染することがあり、成人が感染すると子供よりも重い症状になることがあります。とくに、乾いた咳でなく湿った咳に移行した場合は肺胞そのものに影響のある肺炎に進行している可能性がありますので、早めに医療機関を受診するのがおすすめです。
マイコプラズマ肺炎による発熱は、肺炎マイコプラズマ細菌の増殖と活動を抑えるための抗生物質を服用することで治療します。ただし、肺炎マイコプラズマ細菌は増殖のスピードがゆっくりであり、症状が出始めた頃には検査で陽性反応が出ない可能性もあります。そこで、初めは胸部レントゲン検査の像を確認すること、聴診器で呼吸の音を聞くこと、問診などから総合的に判断し、確定診断のための検査と並行して治療を開始することが多いです。
抗生物質は主に「エリスロマイシン」「クラリスロマイシン」などのマクロライド系抗生物質が使用されますが、最近ではこの薬剤に耐性を持つ「マクロライド耐性マイコプラズマ」が増えていることから、約4~5日程度服用しても症状の改善が見られない場合はテトラサイクリン系やニューキノロン系など、マクロライド系とは別の抗生物質に切り替えていく必要があります。
マイコプラズマ肺炎には、インフルエンザウイルスや肺炎球菌のように効果的なワクチンが存在しません。そこで、予防のためには日常生活で細菌を体内に入れないような工夫をすることが必要です。具体的には、以下のようなことに気をつけましょう。
肺炎マイコプラズマ細菌は、咳やくしゃみによる飛沫感染と、感染者に接触することでの接触感染が主な感染経路です。そこで、咳やくしゃみを避けるためにできるだけ人混みを避けることや、マスクを着用することが有効です。とくに、マスクは自分が感染しないための予防としてだけではなく、発症した場合は人にむやみにうつさないという点でも重要なエチケットです。
また、それでも人混みを通らざるを得なかった、発症しているかどうかわからない人と接触してしまった、という場合もあるでしょう。そのときはぜひ、手洗い・うがいを徹底しましょう。外出する際にはマスクを着用し、帰宅したらすぐに手洗い・うがいをすることで、室内に肺炎マイコプラズマ細菌を持ち込むリスクを最小限に減らすことができます。
肺炎マイコプラズマ細菌は界面活性剤に弱いため、石鹸で手を洗うだけでも十分に活動性を失わせることができます。また、手指の消毒や接触部分の消毒には、200~1,000rpmの次亜塩素酸ナトリウムはもちろんのこと、消毒用アルコールや70%イソプロパノールなどを使用しても十分に消毒効果が期待できます。
マイコプラズマ肺炎を発症した場合、初期には風邪と同様の症状が現れ、とくに発熱は37〜38℃のやや高めの熱が4〜5日続きます。38℃以上の高熱に至ることはまれですが、成人が発症すると重症化しやすいため注意が必要です。
マイコプラズマ肺炎の治療には抗生物質が使用されますが、高熱が続く場合は解熱剤を併用することもあります。ワクチンなどの予防薬がないため、予防には日頃からの手洗い・うがいやマスク着用が大切です。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。