記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/1/19
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
若いうちに癌と宣告されたとき、
「妊娠しても大丈夫なのかな?」
「将来、家庭をもてなくなっちゃうの?」
などと不安になる患者さんは少なくありません。
実際、癌治療中に妊娠しても大丈夫なのでしょうか?
癌が生殖機能に与える影響や、
セックス時の注意点などについてご紹介していきます。
癌治療を受けている多くの人(特に幼少期に癌治療を受けたことがある人)は、生殖機能が維持されたままであり、将来自分の家庭を築くことができます。一部では一時的に生殖機能に影響を受ける人もいますが、この場合も治療が終わると回復します。
しかし、年齢、性別、受けた治療法、癌が発症した部位によっては、長期にわたって影響を受けてしまうケースもあります。
生殖機能に影響を与える可能性がある癌治療は、
・化学療法
・放射線療法
・卵巣や睾丸などの生殖器官の手術
などです。
なお、ホルモン療法の場合は、影響はほとんどないと考えられています。
「特定の治療法によっては、生殖機能に影響を与える可能性がある」というのは前述のとおりですが、具体的にどのようなところに影響が出るのでしょうか。
男女別に詳しくみていきましょう。
妊娠可能な年齢の女性の場合、癌治療によって以下の面に影響が出ることがあります。
・特定のホルモンを分泌しなくなる
・卵巣が機能しなくなり、早期閉経を引き起こす
・子宮内壁を傷つける
・子宮摘出手術を受ける必要がある
将来的に妊娠を希望する場合は、癌治療を開始する前に医師に相談し、妊娠の可能性を維持する方法についてアドバイスを受けてください。また、治療までに時間があるなら、産婦人科医に相談してみるのもいいでしょう。
将来的に妊娠するための策として、
・凍結された胚(受精卵)
・卵子の凍結保存
・卵巣組織の凍結保存
をすすめられる場合があります(卵巣組織を保存して不妊治療に使う治療法は実用され始めたばかりのため、詳細については専門医に相談してください)。
癌治療によって以下の面に影響が出ることがあります。
・精子が作れなくなる、もしくは形成に支障をきたす
・性的機能にかかわるテストステロンやほかのホルモンの生成に影響する
・骨盤周辺の神経や血管を傷つけ、勃起や射精が困難になる
治療を始める前に、精子の一部を保存する「精子バンク」が導入可能なケースがあります。精子バンクでは、数日から数週間にわたって複数の精子サンプルを提供する必要がある場合があります。提供後は凍結され、不妊治療の一環として将来使う可能性があります。
ただ、癌の進行状況によっては、癌治療の開始を先送りにできないケースもあります。心配な場合は医師に相談してください。
癌治療中に子どもを作っても問題ないのか、気になっている方も少なくないと思います。
癌患者が女性のケースと男性のケース、それぞれの場合について以下でご紹介します。
癌治療は胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠することはおすすめしません。たとえ生理が止まっていても治療中に妊娠することはあるので、避妊薬を使うかセックスをしないかを検討しておいてください。また、避妊薬を服用する場合は、癌治療中も服用していても問題ないか医師に相談してください。
治療後どれくらい経てば妊娠しても安全なのかについても、医師に尋ねてください(受けた治療の種類などによって期間は異なります)。
もし、癌と診断された時点ですでに妊娠している場合は医師にすぐ伝え、事前に治療方針について話し合ってください。治療中に妊娠した場合も同様です。
癌治療中は女性を妊娠させないことをおすすめします。治療によって精子のDNAや遺伝物質に影響を与え、胎児に影響を及ぼす可能性があるからです。女性同様、治療中は避妊薬を使うかセックスを控える必要があります。
化学療法薬が精液に混入する恐れがあるので、避妊の際にはコンドームの使用をおすすめします。
癌の治療が終わった後も、
「自分は将来子どもを作れるのか」
「治療が子どもにどんな影響を与えるのか」
「子どもができてから癌が再発したらどうすればいいか」
といった疑問や懸念をもつ人はとても多いです。
それには、医師に答えてもらうのがいちばんよいでしょう。基本的には、癌治療の種類や治療が身体に与えた影響によって答えは異なります。
また、将来家庭が欲しいと思う方には、下記の検査や治療の選択肢があります。
この生殖機能検査に関してはすぐに受ける人もいれば、妊娠するまで待つか、検査をまったく受けない人もいます。生殖機能があるかどうかを確認するのはストレスになるケースがあるからです。
検査を受ける前に、下記の点を検討しておくことがおすすめです。
・今知りたいか、先送りしたいかを検討する
・検査結果にどう向き合うかを考える。結果を受け取る前と後の心境について、家族や交際相手と話し合う
・生殖機能の有無に関係なく、検査結果は必ずしも正確ではないということを知っておく
最初の検査では今は生殖機能がなかったとしても、その後の検査では機能が回復していることがあります。
なお、あなたやパートナーに生殖機能があっても、治療後に妊娠するには最大2年の期間が必要です。懸念や疑問がある場合は医師に相談してください。
生殖機能が癌治療の影響を受けている場合は、不妊治療を受けることで妊娠できる可能性があります。不妊治療を受ける場合は、まず専門医に相談してください。
癌治療による生殖機能の問題があった場合も、ひとりで悩まず誰かに話せば力になることがあります。自分の気持ちを家族やパートナー、友達、医師に伝えてみてください。
もし不妊治療が合っていないなら、養子縁組や代理出産など、家族を持つことができるほかの選択肢を選ぶこともできます。子どもを作らない、というのも選択肢のひとつです。
癌治療は胎児に影響を与える可能性がある治療も含まれるため、治療中の妊娠に関しては、事前に医師に相談するようにしましょう。また、妊娠希望の場合でも、治療前に受精卵や精子を保存することで将来家庭をもてるようになるケースがあります。また、治療後もできることはたくさんあります。ひとりで悩まず、身近な人や医師に相談してくださいね。