記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/1/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
妊娠中、女性は定期的に妊婦検診を受けますが、そのなかでB型溶連菌への感染を指摘されることがあります。B型溶連菌とはどのような細菌で、感染していると妊娠中・出産時の女性と赤ちゃんに、どのような影響を及ぼすのでしょうか。今回は妊婦さんとB型溶連菌感染について、適切な対応とともに解説していきます。
B型溶連菌は女性の膣・産道・肛門付近に多く存在する細菌で、日本の妊婦さんのおよそ10%、海外でも10~30%もの人が保菌しているといわれています。保菌していない人もいますが、カンジダ菌のような常在菌に近い細菌のため、自覚症状はなく、抗生物質で除菌してもすぐに出現してしまいます。
このように、母体には特段の症状・悪影響を及ぼさないB型溶連菌ですが、出産時に産道から新生児に感染すると、約2%の確率で肺炎・敗血症・髄膜炎などを発症することが明らかになっています。最悪の場合、B型溶連菌感染による疾患から赤ちゃんに後遺症があらわれたり、命を落とす可能性をも引き起こす恐れがあります。
なお、妊娠中に母体から胎内にB型溶連菌感染が起きた場合は、卵膜という組織が炎症を起こす「絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)」の原因となります。絨毛膜羊膜炎は早産や前期破水を引き起こす重大な要因となるため、妊娠中にも注意が必要です。
妊婦さんにB型溶連菌の感染がわかった場合、胎児が産道を通るときに感染するのを防ぐため、分娩時に抗生物質を投与します。一般的には、陣痛が始まった段階で、点滴でペニシリンなどの抗生物質の投与を開始し、出産が終わるまで点滴を続けて新生児へのB型溶連菌感染を予防します。
感染は産道を通るときに起こるため、基本的には経腟分娩の場合にだけ投与され、もともと帝王切開による分娩を予定している場合は投与されません。なお、途中で緊急帝王切開になった場合は抗生物質が投与されます。
もし、ペニシリンアレルギーがある妊婦さんの場合は、問題なく使える別の抗生物質が使われます。
膣・産道・肛門に生息するB型溶連菌は、保菌していても自覚症状が現れないのが特徴です。このため、感染しても妊娠中に胎内感染が起こらなければ母子の健康に悪影響を及ぼすことはありません。ただし出産時に産道から胎児に感染すると、約2%の確率で後遺症や死亡リスクも伴う疾患の原因になる可能性もあります。B型溶連菌に感染した妊婦さんが経腟分娩で出産する場合、抗生物質点滴による処置が必要です。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。