記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/5/14
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
血栓性外痔核という名前を聞いたことはなくても、「痔」という名前を聞いたことのある人は多いでしょう。痔の一種である血栓性外痔核は、どうしてできるものなのでしょうか?また、治療にはどのような方法があるのでしょうか?手術で治す必要はあるのでしょうか?
血栓性外痔核とは、肛門の周りに腫れ物ができた状態のことを言います。お尻に何らかの強い負担がかかり、血管を含めて肛門を閉じる役割をしているクッション部分が腫れたもののことを痔核と言いますが、そのうち肛門の内側にできたものを「内痔核(いぼ痔)」、肛門の外側に一時的にできたものを「血栓性外痔核」と言います。
内痔核の場合は直腸粘膜にできるため、痛みはほとんどありません。しかし、血栓性外痔核の場合、知覚神経のある皮膚が腫れを起こすため、激しい痛みを伴います。摩擦によって皮膚が破れて出血することもあり、注意が必要です。内痔核とはできている場所が違うため、指で押し込んでも肛門の中に戻るものではありません。血栓が消えてなくなれば腫れや痛みもおさまります。
血栓性外痔核は、いわゆる「血豆」ができている状態なので、それほど珍しい症状や難しい疾患というわけではなく、日常的によくありうることです。具体的には、以下のようなことがきっかけで起こります。
肛門には静脈が多く集まっていますが、心臓よりも低い位置にあるため、圧力がかかると血流が悪くなり、鬱血しやすくなります。つまり、何らかの形でお尻(肛門)に大きな負担がかかると血栓性外痔核ができやすくなるのです。
大きさは小さいものから大きいものまでさまざまで、大きくなればなるほど痛みも増してしまいます。小さくて症状が軽いものであれば、ゆっくりではありますが数カ月かけて次第に吸収され、自然に治ることもあります。中には、血栓が線維化して肛門皮垂という皮膚のたるみになって残ることもありますが、痛みは残りません。
痛みや腫れなどが重症の場合は、薬物治療または手術治療を行います。基本的には軟膏や座薬を用いた薬物治療を行い、これらの薬剤によって患部の痛みが改善するのを待ちます。お風呂に入るなどして患部を温めることも、痛みを緩らげるのに有効です。
これらの薬物療法を行うと、個人差はありますがだいたい3~4日程度で痛みがおさまってきます。しかし、腫れが引くには吸収を待たなくてはならないため、治るまでに数週間ぐらいかかります。
手術療法は、痛みが強く薬物療法では対処できない場合、また、痔核からの出血が多い場合などに行われます。局所麻酔をかけて日帰りで行うことができ、翌日から飲酒と運動以外の日常生活は行っても構いません。また、外痔核だけでなく内痔核もある場合は、痔核根治手術を同時に行う必要があることもあります。
術後に考えられる合併症としては、術創の痛みや出血、痔核の再発などがあります。また、傷が治る過程で細菌が入り込んでしまうと、膿んで「痔瘻(じろう)」という状態になることもあります。痔瘻ができてしまったうと、これをきっかけに他の疾患が引き起こされることもあるので、注意が必要です。
血栓性外痔核は、治療せずに治ることもあります。具体的には、患部の血流を良くするために以下のようなことを心がけてみましょう。
患部は腫れるため、どうしても温めると悪くなってしまいそうなイメージがありますが、実際は逆で血が滞っている状態ですので、血流を良くすることで自然と治ることも多いのです。特に、小さい状態の血栓性外痔核の場合、まずはお風呂にゆっくりつかった後、安静に寝ておくのがおすすめです。また、腫れているからと冷やすのは逆効果ですので、絶対にやめましょう。
ただし、これらの対処を行っても全く変化がない、痛みが強くなる、などの場合は無理をせず、肛門科に相談しましょう。
血栓性外痔核は、一度治っても同じようにお尻(肛門)に負担の強い生活を続けていると、再発してしまいます。そこで、以下のようなことに気をつけながら生活しましょう。
血栓性外痔核を予防する上で最も重要なのは、座りっぱなしやいきみっぱなしなど、下肢に負担をかけ続けている状態を避けることです。例えば、1時間おきに立ち上がる、便秘にならないよう水分を多く摂取したり腸内環境を整えておく、刺激物やアルコールを控えるなどが効果的です。さらに、毎日入浴して体の血の巡りを良くしておくことも、鬱血を防ぐために有効です。
血栓性外痔核は、基本的には鬱血して腫れた状態ですから、入浴などで患部を温めると自然に治ることもあります。しかし、痛みが強い場合や出血が起こっている場合は放置していると悪化する可能性もありますので、早めに肛門科に相談しましょう。
また、血栓性外痔核にならないよう、普段から予防しておくことも必要です。お尻(肛門)に大きな負担がかかりにくいよう、座りっぱなしや刺激物の多い食事を控えるといったことにも気をつけましょう。