記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/1/24 記事改定日: 2018/5/11
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
B型肝炎の予防接種はどのような目的で行われるのでしょうか。また、副作用(副反応)はあるのでしょうか。
この記事では、B型肝炎予防接種について説明していきます。予防接種の受け方についても説明しているので、この機会にきちんと理解しておきましょう。
B型肝炎は、B型肝炎ウイルスに感染することによって発症します。ウイルスは感染者の血液や体液などに接触することで感染しますが、成人では性行為による感染が最も多く、小児では母子感染によるものが最も多いとされています。
B型肝炎に感染すると、大部分は特に症状もなく自然とウイルスも消滅しますが、感染者の20%近くはウイルスが体内に留まった状態となり、長い時間をかけて慢性肝炎を引き起こし、肝硬変、肝臓がんへ進行することが知られています。
また、まれに感染後に急性肝炎を生じ、劇症肝炎にまで進行することもあります。劇症肝炎を発症した人の約半数は死亡に至るというデータもあるので決して軽視はできません。
特に小児では慢性肝炎に移行する確率が高く、急性肝炎を生じると劇症化しやすいといわれています。
これらの発症を防ぐためにも、B型肝炎ウイルスの感染はしっかりと予防する必要があります。
日本では2016年からB型肝炎予防接種は定期化され、小児の内から感染予防対策が行われるようになりました。成人でも、感染の機会が多いと予想される人は予防接種が推奨されています。
全ての予防接種には何らかの副作用が生じる可能性があり、B型肝炎ワクチンも例外ではありません。
最も注意しなければならない副作用は、激しいアレルギー症状によるアナフィラキシーショックです。
アナフィラキシーショックは接種後数分で発症し、呼吸困難や血圧の低下、意識消失などを引き起こします。これらの症状が現れた場合には、速やかに適切な処置を行わないと死亡に至ることもあります。
軽度な副作用としては発熱や発疹、接種した皮膚の腫れなどが起こることもありますが多くは特に問題となることはなく、数日で治ることがほとんどです。
B型肝炎ワクチンは非常に安全性の高いワクチンです。注射を打った場所に赤みや痛みが起こることはありますが、深刻な副作用が起こることはほとんどなく、不活化ワクチンのため、ワクチン自体が肝炎を引き起こすことはありません。
B型肝炎の感染原因は、感染者の血液や体液に触れることです。また、B型肝炎に感染している母親から生まれた乳児にも感染する可能性があります。
以下に当てはまる人はB型肝炎にかかるリスクがあるため、ワクチンの接種が推奨されます。
B型肝炎の予防接種は、内科や外科などがある一般的な病院で接種することができます。多くの医療機関では予防接種は予約制ですので、事前に問い合わせて予約を取るとよいでしょう。
なお、B型肝炎の予防接種は時間を空けて3回接種する必要があります。スケジュールとしては、1回目接種後4週間経過してから2回目を接種し、さらに1回目接種の5か月以上が経過してから3回目の摂取を行います。
ただし、成人の場合では3回の接種を行っても抗体が獲得できない場合もあり、3回の接種が完了してから約2か月後に抗体の有無を検査し、場合によっては再度3回接種が繰り返されることがあります。
B型肝炎ワクチンの注射は、4~6ヵ月にわたる3回の投与で完了します。B型肝炎の感染リスクが高い医療従事者や肝機能に異常がある人は、予防接種の後も経過観察を行い、抗体ができたかのチェックが必要です。
また、今後も継続して感染の危険性がある人については、5年ごとのワクチンの増量が推奨されています。
妊婦は、妊産婦検診の一環としてB型肝炎の血液検査を定期的に受けることになっています。
B型肝炎に感染している母親から生まれた乳児は、出生から24時間以内にB型肝炎ワクチンを投与する必要があり、その後も生後1ヵ月、2ヵ月、12ヵ月の段階でそれぞれワクチン接種や検査を受ける必要があります。
また、血液検査で特定の感染症が判明した場合は、B型肝炎ワクチンに加えてHIBGの注射も受けなくてはいけないケースもあります。
妊婦のB型肝炎感染は母親に深刻な病気を引き起こし、胎児に慢性的に感染する可能性があるので、感染症を引き起こす可能性が高い女性の場合、B型肝炎ワクチンを投与することが推奨されています。
妊娠中や母乳育児中の女性へのB型肝炎ワクチン接種の危険性については、いまのところ報告されていません。B型肝炎ワクチンは不活化ワクチンであるため、胎児に対する危険性は無視できるほど小さいものです。
B型肝炎ウイルスと接触したもののワクチンが未接種という場合は、B型肝炎ワクチンが効くかもしれないので、すぐに医師の診察を受けてください。
B型肝炎ワクチンと一緒にB型肝炎免疫グロブリン(HIBG)と呼ばれる抗原注射の接種が必要な場合もあります。HIBGは48時間以内に投与されることが望ましいですが、ウイルスと接触した日から1週間以内の投与であれば効果があると考えられています。
「B型肝炎なんて自分には関係ない」と考える人もいると思いますが、知らない間に感染者の体液にふれて感染してしまう場合もあります。非常に安全性の高いワクチンなので、B型肝炎にかかってしまう前にきちんと接種することをおすすめします。詳細が知りたい方は、病院で医師に尋ねてみてください。