寝たきりの人の食事で気をつけるポイントは?

2019/3/19

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

寝たきりになると、日常生活のあらゆる場面で大変な面が出てきます。その中のひとつが「食事」です。この記事では、寝たきりの人が食事をする際のポイントなどをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

寝たきりの人が食事するときは姿勢が大事!

寝たきりの人がベッドで食事をする場合、主に以下のようなポイントがあります。

ベッドの角度を調整する
本人が苦痛を感じない角度にベッドを調整する、といった工夫が大切です。リクライニングの角度は45~80度くらいを目安に、本人の希望や体の状態に応じて決めましょう。
頭の位置を調整する
ベッドの先端に頭がくるように調節し、バスタオルやクッションなどを後頭部にあて、前かがみになるような姿勢を保てるようにしてください。
下半身の位置を調整する
腰はベッドのリクライニング部分に沿い、隙間のないように座ることがポイントです。膝の下にはクッションなどを挟み、軽く曲げられるようにすると、楽に座ることができます。また、足の裏にクッションなどをあてると、足がずり下がらずに姿勢が安定しやすいです。

高齢になると、「入れ歯が合わなくてよく噛めない」など、口の中の悩みが尽きないといわれています。さらに年を重ねると唾液の分泌が減るため、口の中が不衛生になりがちです。繁殖した細菌が誤って気管に入ってしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こす可能性もあります。

また、飲み込む力や噛む力も弱くなります。味覚や消化吸収のはたらきも弱くなるため、食欲不振になりやすくもなります。あまり食事がとれなくなると低栄養状態になり、筋力や筋肉量、骨量などが減少することにつながりかねません。認知機能の低下や体力なども落ち、病気などにかかりやすくなるとも考えられています。食事を楽しむのはもちろん、口の中のトラブルを予防するためにも、定期的に歯科検診を受けてお口のケアを欠かさないようにしましょう

食事の前にしておくとよいことは?

手や口の中を清潔にしておく

風邪などを予防するために、手はきれいに洗いましょう。場合によってはウェットティッシュなどで手を拭いてあげてください。

そして、食事の前に歯磨きやうがいなどをして口の中をきれいにすることも大切です。唾液の分泌が活発になり、食べ物をスムーズに飲み込むことができます。また、味を感じやすくなるため、食事を楽しむことにもつながります。特に嚥下障害がある場合、口の中が汚れたまま誤嚥してしまうと誤嚥性肺炎を引き起こすことにつながるため、予防の観点からも大切です。

食事に集中できる環境を整える

テレビやラジオがついていると気が散ってしまい、食事に集中できないことがあります。音楽をかけ、リラックスできる環境を整えましょう。また、部屋が暗いと手元が見えず食事もしづらいため、適度な明るさにしてください。

排泄を済ませておく

食事中にトイレに行きたくなってしまうと、いったん食事を中断しなければなりません。特に、ポータブルトイレを使用している場合は、部屋に排泄物のにおいが残ってしまうため、食事を再開しても食欲がわかなくなることも考えられます。食事の前には尿意や便意がないかを確認し、ポータブルトイレを使用する場合には使用後に換気をするなど、においが気にならない状態になってから食事ができるようにしましょう。

食欲を刺激する

食事をとるときに「おいしいですね」といった言葉をかけたり、献立を説明したりして、食事に興味をもってもらうようにしましょう。事前に本人の好き嫌いもわかっている場合には、食べてもらう順番を考えることもでき、よりおいしく食べてもらえるような言葉をかけることもできます。

食事介助のポイントは?

食事は日常生活の中で楽しみのひとつでもあります。以下、食事介助の基本的な方法をご紹介しますが、自分自身で食べることができる場合には自力で食べてもらえるよう促しましょう。その方が食事をおいしく感じることができます。

エプロンをかけ、本人の隣に介護者が座る

食べこぼしで衣服が汚れるのを防ぐため、介護用エプロンなどをかけてあげましょう。本人と同じ目線で介助を行えるように、介護者は必ず本人の横に座ってください。立ったまま介助を行うと、本人のあごが上がりやすくなって誤嚥を招く恐れがあります。

事前に水分補給をする、水分を多く含むものから与える

口の中が潤っていると、食べ物を飲み込みやすくなります。食事前にはお茶や水などで水分補給をしてもらいましょう。また、水分の多い食べ物は胃酸の分泌を活発にするといわれています。食事を始めるときは汁物など、水分を多く含む食べ物から与えましょう。高齢者の方にとっても、水分が多い食べ物ののほうが乾燥したものより食べやすいので、食事をとるウォーミングアップにもなります。

食べ物の大きさ・量に気をつける

一度に与える食べ物の大きさや量に注意しましょう。1回分の目安は、ティースプーンに軽く1杯程度です。またスプーンは口の奥まで入れないようにしましょう。あごが下向きの状態にすれば誤嚥を予防できるので、スプーンは下から差し出すように与えてください。

本人のペースを尊重する

焦って食べると、のどの詰まりや誤嚥を招く恐れがあります。口に含んだものをしっかり飲み込んだかを確認してから、次の食べ物を口へ運びましょう。

食べた量を確認する

食事後は、食べた量を確認してから片づけを行ってください。どれくらい食べたかを定期的に確認することは、本人の健康状態を把握するためにも大切です。

口腔ケアを行う

歯磨きをして口の中をきれいにしてから、ゆっくりと休んでもらいましょう。また、食べたものの逆流を予防するために、食後しばらくは横になるのは控えるよう伝えてください。

寝たきりの人でも無理なく食べられるものは?

寝たきりの人が食べやすいものは、なめらかでやわらかいものといわれています。具体的には、とろみのついたおかゆ状のもの、やわらかいミンチ状のものなどが挙げられます。フードプロセッサーや圧力鍋などを使うと、介護者の負担も軽減されるのでおすすめです。

以下に、調理のポイントをご紹介します。

  • とろみのある、ヨーグルト、マヨネーズ、卵などを活用する
  • サラサラした飲み物は、ゼラチンや片栗粉などでとろみをつける
  • じゃがいもやりんごなどの硬い食べ物は、すりおろしてから調理する
  • 食材は一度ゆでてから炒めたり、焼いてから煮込むなど、ひと手間加える
  • 肉や魚など、繊維や筋が目立つものは、切る、または叩く。もしくは「つみれ」などにする
  • むせ込みの原因となる酸味は控えめにし、味付けに工夫をする
  • さつまいもなど繊維質の野菜などは、隠し包丁を入れて繊維を切るように調理する

おわりに:寝たきりの人もおいしく食事ができるよう、姿勢や環境、調理にひと工夫加えよう

寝たきりの人が食事をするときは、きちんと栄養をとれるように、また、誤嚥性肺炎を防ぐために、調理方法や食べるときの姿勢などに気を配ることが大切です。また、おいしく食事を食べてもらえるよう、あらかじめ排泄を済ませておくなど、食事前にも配慮してあげることも欠かせません。快適に食事をとることができるようサポートしてあげましょう。

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