薬が原因で胃潰瘍に? ― NSAIDsによる消化性潰瘍について

2019/3/28

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった消化性潰瘍は、一般的にはピロリ菌や消化器疾患の病気が原因で起こることが多いですが、服用している薬が原因で発症することもあるのです。今回は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が原因で起こる症状について解説します。

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胃や十二指腸潰瘍の原因はピロリ菌とは限らない?

胃や腸、十二指腸潰瘍などの消化器官の粘膜が荒れたり、穴が開いた状態になってしまう消化性潰瘍は、主にピロリ菌などの細菌感染で発症することで知られている疾患です。また、ピロリ菌のほか、医薬品の服用・使用が原因で消化性潰瘍が起こることもあります。

特に、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)に分類される薬は、その副作用として胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった消化器潰瘍を引き起こしやすいことが分かっています。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とは
ステロイドを含まない薬。体内に炎症・痛み・発熱を引き起こすプロスタグランジンの生成を抑えることで症状を抑える解熱鎮痛剤。

NSAIDsによる消化性潰瘍を発症しやすい人は?

NSAIDsの服用で消化性潰瘍の副作用を発症しやすいのは、以下のいずれかの条件に当てはまる方です。あてはまる項目が多ければ多いほど、NSAIDsによる消化性潰瘍を発症しやすいといえます。

  • 過去に潰瘍にかかったことがある方
  • ピロリ菌に感染したことがある方
  • 65歳以上の高齢者
  • 大量のNSAIDsを長期間服用し続けている方
  • 心筋梗塞や脳梗塞の治療でアスピリンなどの抗血小板治療を受けている方

NSAIDsによる消化性潰瘍を発症すると出てくる症状は?

NSAIDsの影響で消化性潰瘍になると、以下のような症状が現れてきます。

  • みぞおちの痛み
  • 吐き気、腹部膨満感、食欲の低下
  • 鮮血の吐血や、コーヒーの残りかすのような胃内容物の吐き出し
  • 血液が混じった黒色便(タール便)の排出、下血
  • 失血による、急激な血圧の低下や意識の消失
  • 潰瘍が胃壁を貫いたことによる、上腹部の激痛

上記のうち、上から2つ目までは初期症状ですが、3つ目以降になると体内で出血している危険な状態です。特に、血圧が低下して意識を失いそうになったり、胃に穴が開いて激痛に苦しむ状態は非常に危険ですので、外科手術を含む緊急の治療が必要になります。

吐き気や便の色の変化など、服用中に異変に気づいたら

NSAIDsの服用中にみぞおちの痛みや吐き気、便の色の変化、貧血など普段と違う症状に気付いたら、できるだけ早く医師や薬剤師に相談してください。みぞおちの痛みを放置していると重症化する恐れもあります。また、もし痛みの自覚症状がなくても、便や吐き気、食欲の変化といった他の症状から異変に気が付いたら、すぐに医療機関を受診して対処しましょう。

おわりに: NSAIDsに分類される薬の副作用で、消化性潰瘍が起こることもある

消化性潰瘍はピロリ菌だけでなく、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など、薬の影響から発症することもあります。NSAIDsには痛み止めの作用もあるので、消化性潰瘍になっても痛みに気づきにくい可能性があります。体調にちょっとした異変が現れたら、できるだけ早く医師や薬剤師に相談しましょう。

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